第七十九話 本気ヨット

自分が本気モードでセーリングしていくと、当然ながら本気ヨットがほしくなる。何が本気
かと言いますと、セーリングするように造られたヨットか、別荘用か、居住用か、船旅用
かという事になります。どれかが上でも下でも無い事は当然です。本気でセーリングしよ
うと思うなら、船体はできるだけしっかり造られた方が良い。重心の低いのが良い。帆走
性能が良いのが良い。自分のサイズが良い。自分の気に入ったデザインが良い。何が
良いかと判断するのはそれぞれです。こういうシフトを持つと、セーリングに関係無い、
温水とか冷蔵庫とかはあっても良いし、無くても良い。物によっては無い方が良い場合
もある。私にとっては、ドジャーやビミニトップは要らない。ドジャーはスプレー避けには
とっても重宝するのは解っています。が、前が見難い。

船体はフリーボードが低く、低重心、この事がどんなに有難いか、有難いだけでは無く、
安心感が増し、ドライブ感に影響します。ねじれに強い剛性の高い船体。温水より、
冷蔵庫より、これを重視します。そうすると、風が上がってきても面白いと思える範囲が
広がる。それにコクピット位置が低いと水面に近いのでスピード感が増してくる。スピード
感というのは相対的な物で、車で時速100Kで走っても、たいしてスピード感は無い。しか
し、わずか10kオーバー程度でもヨットではスピード感が出てくる。という事は絶対的な
スピードも大事ですが、感じるスピード感も大事だと思います。

メインセールがスムースに上がる事から始まって、セールコントロール、舵のコントロール
それらをできるだけスムースに滑らかにに操作する。その為に、各部はどうだったら良い
か、1日に2,3時間のスポーツをします。場合によってはダブルヘッダーも可能です。
タッキング時の舵の取り方、シートのリリースタイミング、そして新たなシートの引き込み
うまくいったら、実にスムースに、最低限の動作と力でできるようになる。そういう風に自分
が上達していったら、これこそ面白いくなると思いませんか?タックにしてできれば良いと
いうより、きれいに、スムースの方が格好が良い。誰かが見ているわけではありませんの
で自己満足かもしれませんが、それでも自分が楽しむ為にセーリングしているんですから、
良いんじゃないでしょうか。

世の中には腕の良い人はたくさんいます。でも腕が良いから楽しいとは限らない。表面上
は誰でも楽しめますが、もっと深い部分は本気モードになった人だけが楽しめると思います
そして、この良いところは、2,3時間でもできるので、忙しい人でもできる。初心者もできる。
ベテランもできる。気軽にできるという事です。強靭な体力も精神力も不要です。ただ、黙って
セーリングに専心するだけで良い。特別な装備が居るわけでも無い。という事はヨットやる人
は誰でもできるという事です。でも、殆ど誰もやらない。だから価値がある。この文章を読んで
も多分そうする人は少ないでしょう。簡単なのにやらない。ですから価値はいつまでも続く。
人は簡単な事を本気でやろうとはしません。特別な事に一生懸命になって、特別な人になろう
とします。出来る人は特別な人ですが、特別ですから、普通はできない。でも、足元に、簡単
な誰にでもできて、誰もしない事がある。簡単な事でも本気でやるなら、その深さがわかって
くる。これなら、誰にでもできて、その成果は誰もやらないから特別なものになる。

そうこうしているうちに、ヨットが自分の一部であるかのように操作できる日が来るかもしれま
せん。それが私の夢でもあります。自由自在です。このメリットはセーリングだけではありませ
ん。セーリングに専心する人は、ヨットのあらゆる面が楽しくなるという効果を持っています。
そして、専心すると、本気ヨットがほしくなります。本気ヨットは、さらに本気モードに協力してく
れるでしょう。

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