第八十六話 知る事

どのヨットも良い悪いという単純な分け方では無く、そのヨットがどんなコンセプトで
どの程度の品質であるかを知る事が大事かと思います。知らないで、ただブランド
イメージや広告などによって勝手に思って、違うコンセプトに使われると失敗という
事になります。どんなヨットもただそれが良い悪いの判断は正しく無いわけで、レベ
ルを知って、自分の使い方に合う事が大切です。良い悪いという簡単な判断ですと
全てにおいて高宮艇でなければならないのか、という事になってしまいます。良い
悪いは無く、品質の違い、価格の違いがあるだけです。

このヨットは外洋に行けますか?そりゃあ行けます。でも、ヨットによってはその向き
では無いとしたらそれだけ冒険性が高まる。危険を冒したいなら、どれでも良いです
が、より安全性を求めるなら、それなりの品質が必要になる。逆に、キャビンライフ
重視なら、どれでも良い。

ただ、情報開示の世の中ではありますが、なかなか全てがオープンとは言いがたい。
ヨーロッパのCE規格にしても、AとかBとか分類していますが、同じA(外洋)でも、本当
かなと思うのもあるし、まあ、この分類にも幅があるのかなと思います。外洋にいける
にしても1度の航海で船体にがたが来るとしたら、行けるには行けるが、外洋艇と称し
て良いものか?疑問が残る。つまり、この分類はここまでは規定していないのではと
思うような事もあります。結局は個々のヨットという前に造船所のレベルを吟味する必
要があると思います。各艇はそのレベルで建造されますから、後はサイズとかデザイン
とかを見れば良い事になります。でも、見る事に慣れてきますと、艇のかもし出す雰囲気
といいますか、オーラと言いますか、そういう物の違いを感じ取れます。

広告を見ますと、どのヨットがどんなレベルの品質か、違いなどは解らない。迷われる事
と思います。どれでもトップクラス、最高と書かれています。でも、そんな事はありえない。
前にも書いたかもしれませんが、この客観的見方として、いつも基準にするのが年間の
建造艇数と価格(現地)です。車と違って、鉄板をガッチャン、ガッチャンと一瞬のうちに
成型する事はできません。型に積層して造らなければならない。どうしても人間の手が要り
ます。その他、艤装の設置、様々なところで人間の手間を必要とする。大量に建造して
安くあげるには、それだけ人間の手間を省ける構造でなければできない。従って、少量生
産程手間をかけられる。それだけ品質は良くなる。という事は大量には作れない。価格も
上がる。断っておきますが、良い悪いという単純な分類をしているわけではありません。
違うという事だけです。それに、これらの事、世界中のヨットの事が今やインターネットで
簡単に知る事ができる時代ですから、品質に応じた価格でないと生き残ってはいけない。
生き残っているという事は市場がその価格と品質を認めているという事だと思います。
ですから、いつも年間建造艇数と価格を見て、まずはどの程度であるかを判断します。
後は、そこまで必要かどうかです。

造りはみんな同じだと言う人が居ます。少量だから高いだけで、大量だから安くできるという
人が居ます。品質にたいした違いは無いという人が居ます。でもこれは違います。簡単に言う
なら、DIYのショップで本棚を買うとしましょう。自分で「組み立てる方式です。これも本棚として
はりっぱい役立ちます。でも、職人の手造りの本棚とどう違うでしょう。その違いはヨットも同じ
です。まして走るものですから、相当違います。でも、本棚は本棚としての役目を果たす。
後は求めるレベルの問題です。

欧米で安いヨットから高級まで、そしてその中間も含めていろんなヨットが建造されています。
そして各造船所は各レベルで、各価格をつけて販売される。自分が買おうとするヨットが、どん
なヨットであるかを知って、買うわけですから、みんなが生き残れる。安いのが全てであるなら、
品質だけが全てであるなら、その他は生き残れません。ですから、知る事が大事かと思います。

建築の世界に坪単価という考え方がありますが、ヨットの価格をサイズで割ってみると、フィート
単価が出ます。もちろん、標準装備がどの程度かにもよりますが、比較の参考にはなるかもしれ
ませんね。全てでは無いですが、高いヨット程オプション設定が多いようです。高いヨットを買う人
程こだわりを持っているという前提なのでしょう。セールがオプションなどざらです。ただ、一部で
はセールアウェイと言って、全部揃っているというのもあります。

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