第四話 こだわり

料理にこだわると、これはどこそこ産、あれはどこどこ産が良い、といってよりうまい料理
を造る。一方、味はそこそこでも安い方が良いという考え方もある。両方ありでしょう。
ただ、どちらもそれでなければならないという事は無いわけで、需要が多い方が一般的
と呼ばれるだけです。材料と味にこだわるか、価格にこだわるかの違いです。

ヨットは一般的では無いだけに、役にもたたないものであるだけに、どこでこだわるかが
目安となる。とにかくヨットを何とか始めたいと思う方は価格にこだわる。レーサーはスピ
ードにこだわります。そうしないと勝てません。その他、キャビンの広さにこだわり、造り
にこだわり、デザインにこだわり、こだわりというのはみんなが持っている。方向が違う
だけです。

一般的にこだわってはいけないというのは、後ろ向きのこだわりで、そうでなければなら
ないと限定すると、動ける範囲が狭くなるという場合でしょう。良いこだわりと悪いこだわり
がある。

当社でのこだわりは二つです。ヨットはセーリングが最も面白いという事と、それを気軽に
可能にするのはシングルハンドだという事です。それでこの二つを合わせて、最も気軽に
遊べるのがデイセーリングという事になります。でも、そうでなければならないというわけ
ではありません。最大公約として、最も楽しめる可能性が高い乗り方だと思っています。

ヨットは大人の極めてマニアックなおもちゃです。陸上で生活していれば、こんな快適な事
はありません。交通の便は良いし、レストランに行けばいつでも好きな物を選ぶ事ができ
ます。どこ行ってもエアコン入ってますし、いろんな遊びがある。でも、便利になればなる
程、それでは満足しなくなります。別の世界が見たくなる。それが夢をはぐくむ事になります
でも、多くの方々が夢を持ってヨットの世界に入りながら、同じように陸上の快適さを持ち込
む事に夢を摩り替えていきます。それがかなった時、もう先に進む必要は無くなる。
私は良く、冷蔵庫なんか要らないとか言いますが、本当はあっても良い。冷蔵庫ばかりか、
温水、電子レンジ、エアコン、電動ウィンチ、どんどんつけても構わない。便利な物ばかりで
す。それらがあるからと言って、セーリングができないわけでは無いからです。セーリング
を楽しむ気持ちさえあれば、なんだって良いと思います。でも、だいたい、そういうフル装備
の方が、セーリングしなくなる。複雑な装備はよりメインテナンスを必要とするし、いざ乗ろう
とするとあっちが悪い、こっちが悪い。そういう事が良く起こる。ですから、フル装備にする
と余程気持ちのパワーがそれ以上でないと、嫌になってきます。もし、そうなら、無い方が
良いと言ってます。気楽になるからです。この気楽さにもこだわりたいと思います。フル装備
で気楽になれるなら、それでも良いんです。

気楽さを持って、シングルハンドでデーセーリングで帆走を縦横無尽に楽しむ。これ以上の
ヨットの楽しみ方は無いのではないかとと思います。その気になれば誰でもできる事、初心
者から超ベテランまで、できるという事、それがまた面白いという事です。でも、やる人は少
ない。やるにしてもできれば、遠くに行きたいなと思って乗ってますから、今のセーリングが
充分だとは思えないので、楽しみ方も半減します。それで、こういう乗り方を見直して、真剣
に乗ってみますと、これがまた面白い、足元を見てみると、そこに最も面白い事があったと
発見できると思いますね。

ヨットの何が面白いって、別の世界に入るという事ですよね。でも別の世界に一旦入ったら
活動しないと、別の世界だけではほんのたまで良いという事になります。活動するという事
はまたさらに別の世界を造る事になります。いくらTVゲームが好きでも、毎日毎日同じゲーム
では子供でも飽きてきます。別のソフトがほしくなる。デイセーリングでも、ロングでも同じゲ
ームなら飽きてきます。でも、良く見るとヨットはどこ帆走しても同じゲームでは無い。ですか
ら、真剣にセーリングすると飽きないと思います。

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