第六十七話 文科系の科学

科学とは言ってもたいした事は無く、遊びですからご容赦願います。ヨットはセールで走る。セールに揚力が働くから、風上に上る事ができる。これは誰でも知ってます。それで、揚力は飛行機が飛ぶ原理と同じで、風がセールのカーブの膨らんだ方とその反対側とに分離して、セールのエンドで
再び合致するには、膨らんだ方が距離が長いので、スピードが増し、スピードが増すと圧が下がり
セールの風上と風下側の圧の差ができるので、そこに揚力が発生するとされています。

しかしながら、これは間違いだそうで、風がセールに当たって、セールエンド(リーチ)で再び合致する前提になっているが、合致する根拠は無いそうです。実際、合致しない。ずれが生じるそうです。
ところが、セールが膨らんだ方が風のスピードが速くなるのは確かだそうです。それで、実際の揚力は発生し、飛行機は飛び、ヨットは走る。ですから問題は無いのですが、何故風が速くなるかの厳密な所では解っていないそうです。

揚力が発生する事には間違いない。ならば、そのカーブを大きくすれば、揚力は大きくなるはず。そうすればヨットのスピードは速くなるはず。しかしながら、カーブが大きくなり過ぎると、風がセールに沿ってスムースに流れなくなる。それは風のスピードにも関係がある。風速が速い程、パワーがありますから、揚力は大きくなり、艇速は速くなる。それで、もっとカーブをつけると、風が乱れてくるので、かえって宜しくない。セールカーブのドラフトの深さの限界がある。

おまけに、揚力はヨットを横に押し流す力も強くなるので、それをキールと船体で止めるので大きくヒールする事にもなる。よって、そのバランスを保つ必要が出てくる。よって、風が強くなればセールのドラフトは浅くしていく必要がある。という事は強風時、セールが伸びて、浅くできないと、ヨットは大きくヒールし、その割にはスピードが出ないという事になります。よって、強風ではセールのドラフトを浅くし、ヒール角度が20度ぐらいでしょうか、それをキープしていく。それができなくなったら、
風を逃がす。セールドラフトはセールのリーフをする前に行うリーフと考えても良いと思います。軽風から、風が強くなってきたら、ドラフトを浅くしていき、それでも駄目なら、風を逃がし、それでも駄目ならリーフをする。

逆に、微風では、より大きな揚力を得る為にドラフトは深くする必要がある。風が弱いので揚力が小さい、よって、ドラフトを深くして、より大きな揚力を得る。風速が遅いので、深いドラフトでも風が乱れない。

この揚力のお陰で、ヨットは風上に上れるわけですが、ヨットは風上に上るより、少し後ろからの風を受ける時が最も速い。それは何故でしょうか?多分、セールに沿って風が流れ揚力が発生しますが、後ろからの風の時は、この揚力に加えて、昔ながらの帆掛け舟のように、押す力も加わるからではないかと思います。この両方が最大限になるのが斜め後ろからの風の時で、上りから真横までの風の時は揚力で走り、真横から後ろ側に回ってくると、押す力が加わり、さらに後ろになると揚力は弱まり、真後ろからだと押す力のみとなる。そうすると、真後ろからの風は押す力だけですので、あまり速く無いので、斜め後ろから受けながらジャイブして目的地に行く方が速い。

風向に対するセールの角度についてですが、クローズ一杯でセールを引き込み、風が後ろ側に回る程、セールを出す。ヨットの進行方向と風の角度の1/2の角度が目安と言われます。上りギリギリで走り、風向計を見ますと、ヨットにもよりますが、見かけの風が30度とする。そうすると、セールは引き込んで中央から15度の角度を取るとする。この時、風の角度とセールの角度は、180度+15度−30度=165度という事になる。90度の角度から風を受けて走ると、セールは45度出すと、180度+45度−90度=135度という事になる。

つまり、揚力のみを使って走る、のぼりから真横までの範囲では、真横が最も速いわけですから、風の角度に対して135度セールを開くのが最も効率の良いセール角度ではないだろうか。もし、そうなら、30度の風なら(30+135)165度ですが、これは中央よりも風上側となり、進行方向を考えると、これは進む力にはならないと思えます。60度の角度なら、(60+135)195度になりますが、これも揚力が働く方角が進行方向に対して方角が悪い。或いは、ひょっとして、ドラフト位置をぐっとマスト側に押しやると良いかも?120度ですと、180+60度−120度=120度という事になる。でも、これは後15度開いた方が速いかもしれない。150度なら、180度+75度−150度=105度となるが、これも後、30度開いた方が速いかもしれない。おっと、この角度は既にセールが255度の位置にあるので、開けないですが。多分、これはどこか間違ってるかもしれません。実際、自分のヨットでどうなのか、走って確かめてみてはどうでしょう。こんなのを確認するだけでも、何度も走らないと解りません。これをやると明確にに自分のヨットが解ります。できるだけの事をして、良い走りの感覚を体に記憶させてやると良いと思います。これもレース艇でも無いのにとか言わないで下さい。遊びです。

揚力を最大限発生させるドラフトの深さと位置、それにセールの角度、後ろ側からの風ではもう少し開き気味にした方が良いかもしれません。これは文科系の頭で考えた事ですので、実際確かめてみてください。でも、こんな事考えるのも面白いし、遊びですから、お許しを。つまり、セール角度もドラフトも実際走って、その適正な位置、量を見つけ出すのが良いという事になります。これも遊びです。ひょっとしたら、最も面白い遊びというのは、学ぶ事かもしれません。つまり、解る事かもしれません。解りだすともっと知りたくなりますから、もっと学びたくなります。それは爽やかな風気分に浸るよりもっと深く、面白い。難しい事は考えなくても、文科系程度の科学的アプローチを試みて積み上げていくというのも面白いと思います。

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