第73話 クルージングヨットの傾向

以前にも書きましたが、アメリカとヨーロッパで殆ど同時に同じようなコンセプトのヨットが出ました。
以前紹介致しましたシングルハンドの44フィートデイセーラー、それに加えて、アメリカで40フィート
のデイセーラーが出たのです。前者はモダン、後者はクラシックという違いはありますが、共通する
事はいずれもシングルハンドのデイセーラーに絞っている事です。そして、このサイズですから、全て
のコントロールを油圧、電気システムによって簡単にスイッチひとつでセールの上げ下げからトリミング
までをこなすようにしています。インテリアはいずれもシンプル、セルフタッキングジブ、ファーリングメイン
コンセプトは同じです。

こういうスタイルの乗り方がこれからのヨットではないか、他にも同じように考えている人達がいるんですね。
油圧システムであるかどうかは別にしても、皆さん、本当はもっと気楽に乗りたいのです。この二つのヨット
は、いきなりその最高峰のヨットが出て来たという感じがします。全てがスイッチひとつで操作できて、尚且
つセーリングのエッセンスは見逃さない。こういうヨットがヨーロッパとアメリカで同時に出てきた事は意義
深いと思います。この二つにならって、油圧システムとまではいかないが、同じようなコンセプトのヨット、
シングルハンド、デイセーリングをいかに楽にこなせるかというテーマのヨットがぞくぞくと出てくる事を期待
しています。

現在のクルージングヨットの限界が見えてきたと以前書きましたが、一般のプロダクション艇の造船所も
こういうコンセプトのヨットを造ってくれれば良いですね。そうすると皆さんのセーリング傾向が変わっていく
でしょう。これまではヨットはこれが良いと思わされてきた。しかし、これからは、こういうヨットは無いのか?
と要求する方になります。つまり、帆走が主体になりますから、本当のヨットの性質を見る事になります。
見かけも大事ですが、本質を第一と考えるようになります。そうすると自分が主役になります。これまでは
ヨットが主役だった。本当はオーナーが主役であるべきです。


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