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これまでにハーバー20と25において成功を成し遂げてきたW.D.Shock社は、次のステップに進むべく、ハーバー30への建造計画を進めます。 2009年4月、ハーバー30プロジェクトがスタートしました。 ハイパフォーマンスセーリング+ロングクルージング 全長 30’ 9” 水線長 26’1.5” 幅 9’11” 吃水 6’ 3” 排水量 7,500ポンド バラスト 3,300ポンド バラスト比 44% セールプラン I=39.25’ J=12.12’ P=40.5’ E=14.10’ 排水量/セールエリア比:21.9 排水量/水線長比:189 エンジン:ヤンマー20HPセールドライブ 大きなセールエリアを確保し、高いスタビリティーを得ています。いわゆるハイパフォーマンスクルージング艇です。ジブセールはジブブームを持つ セルフタッキングのファーリングジブとし、メインセールはフルバテンメイン。舵はステアリングホィールを標準とし、シングルハンドセーリングを容易 とする艤装がなされます。キャビン内天井の最高は6フィート(1.8m)とし、従来のデイセーラーよりも、やや高めで、クルージングを意識しています。 2010年1月 モールドを作成する基となるプラグを造ります。写真は本物のヨットの ように見えますが、ヨットの船体を造る為のモールドを作成する為の 、最初の基となるものです。これには、ハッチもウィンチもありません。 デッキには一切の艤装品がありません。そこで、このプラグを本物の ヨットと見たてて、各艤装品を設置して、確認をしていきます。 左のモールド用プラグ、木製です。その表面には、特殊なゲルコート で処理されています。 2010年4月 プラグにクリートやチョックを設置。右側チョクの左側は、アンカー ロープの入れ口です。 中央の丸い、一段高いのは、ジブブームの 設置個所になります。 念の為、これは本物のヨットではありません。本物のヨットを造る為の モールドを作成する為のプラグと呼ばれるものです。 実際にいろんな艤装品を設置し、左の写真はデッキ上のノンスリップ パターンを確認している写真です。ノンスリップをどの位置に配して いけば良いかという事です。 実際にハッチやウィンチを配し、全てを確認していきます。 ステアリングホィールはこんな感じかな。 コクピットのウィンチは、ステアリングを握ったまま操作ができるように、 デザインされています。そこにシート関係が来ます。 実際に座ってみると、こんな感じです。 繰り返しますが、これは本物のヨットではありません。あくまでモールド を造る基となるプラグです。 全体を見ると、こんな感じになります。もう本物のヨットのようです。 こうやって、全ての艤装品の位置を確認し、ノンスリップの位置が決 まったら、デッキにノンスリップパターンを貼り付けます。 ここから、デッキとハルのモールドを作成する事になります。 艤装品を全て撤去して、もう一度磨き上げ、まずはデッキ用のモールド 作成を行います。 本物のヨットをFRPで造る為には、その型が必要になり、その型を 造る為に、本物そっくりのプラグと呼んでいますが、型の基を造り、 そこから型(モールド)を作成していきます。 そのいモールドが今後の全てのヨットに反映されていきますから、慎重 に入念なチャックを行いながら行われ、時間がかかる作業です。 2010年6月 デッキ用のモールドが完成しました。デッキには数多くのカーブや 角度がついた表面があり、その角度が少しでも悪いと、モールドが きれいに持ち上がりません。 プラグは実は木製です。その上に特別なゲルコート処理をしています そのプラグに10〜15層ぐらいのワックスを施し、その上にモールドを 抜く時にスムースに抜けるように特別の離型スプレーを塗布します。 モールドはFRP製です。その裏側には写真のように、モールドが 変形しないように、補強されています。 これでデッキ用のモールドの完成です。 2011年2月10日 さて、次はハルのモールド作成に入ります。 モールドの作成は非常に重要で、その後のヨット建造に大きく影響 します。ですから、わずかな傷ひとつ無いように、最大の注意が必要 になります。 まずはプラグを磨き上げます。その後の工程はデッキの場合と同じ です。ワックス、離形スプレー、その上にゲルコートを塗布し、グラス を張ります。その時に特別な樹脂を使います。それは固まる上にお いて、熱をあまり出さないものです。熱が出ますと、ゲルコートにグ ラスの繊維のパターンが押し付けられ、パターンがゲルコートに浮き 出てしまう事があります。 また、この樹脂のもうひとつのメリットは、固まる時に縮む率が少ない 事です。この事は、同造船所のユニークな建造において、欠かせない 要素です。キャビンは三つのモジュールを作成し、そのモジュールを 船体内側の接着していきます。この方法は、手間はかかっても、より 軽く、強く建造するやり方です。その為にも、船体が固まる時、収縮率 が少ない方が良いわけです。 より硬い船体は、風の変化、波の変化において、船体がねじれたり して、その力を吸収してしまうとスピードに繋がらない。よって、より 軽く、でも強くする事で、快走を生み出します。それが、この内装モー ジュール方式です。詳細は後述します。 プラグを磨き上げて、ワックスを塗布、離形材をスプレーして、ブラックのゲルコートを塗布しています。赤い塗料はウォーターラインです。その後、チョップドファイーバー、クロスと張っていき樹脂を浸透させていきます。モールドの周りは補強されます。これで固めて、乾燥後にモールドを抜いて、モールドの完成です。これから、このデッキとハルのモールドを使って、本物のヨットを造っていきます。 ハーバー30の第一号艇の建造開始です。 モールド内部の写真ですが、ワックスや離形材はモールド作成と同じ です。その上に、船底部分はホワイトのゲルコートを塗布しています。 第一号艇では、水線から上はネイビーの予定ですので、分けて、ゲル コートを塗布しています。 下の写真は、最初のグラスを張る作業です。 デッキ側はこうなります。2トーンデッキにしますので、ホワイト以外の部分を目隠ししています。そしてホワイトゲルコートを塗装。目隠しをはずして、 今度は、ホワイト部分を目隠しして、別のゲルコートを塗装。これで2トーンになります。そして、ハル同様にグラスをはっていきます。 デッキにグラスを張っていきます。そして、右側の写真はバルサを挟んだ後の写真です。バルサコアサンドイッチ構造です。 G−10 左の写真の少しベージュのような色で盛り上がっている部分はG−10と呼ばれるもので エポキシをバインダーにした特殊な物。非常に硬く金属のようです。これは、クリートとか の設置個所の下に積層され、このG−10にボルトのネジを切って、クリートとかを 設置します。ボルトは貫通させる必要が無く、従って、水漏れもありません。 ハルの積層が終わったら、各セクションを入念にチェックしていきます。 デザイナーのスティーブンショックさんと造船所の社長トムショックさん 各内装プラグを置いて、確認していきます。 これらは実際の内装家具では無く、確認作業です。この後、各内装のモジ ュールを作成し、設置していきます。 このように全体内装の確認がなされました。これは第一号艇を作成する為 内装はこの造船所特有のモジュール作成の為に行われるものです。 内装をバウ、サロン、アフトバース、トイレ等に分類して、モジュール化、 写真のように、船内に設置して積層接着していきます。 デッキをモールドから抜きました。 そしてデッキに被せます。 そして全体をモールドから抜きます。 ハーバー30の一号艇の完成です。 これ以降の写真はハーバーヨットんぼページに掲載致します。 このプロジェクトが具体化して、数年を費やしています。やはり、最初の艇には、かなり 時間と労力を要するものですね。 |
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