第十九話 良いヨット

アフリカのマダガスカルでカヌーのレースをテレビでやってました。カヌーの横にアウトリガーを突き出し、四角に近いセールを出してのレースです。もちろんワンデザインレース、これがまた、見ていて非常に面白そうで、これぞ、遊びの原点、そんな感じでした。遊びは面白くなくちゃいけません。
これはこう、あれはこう、いろんな理屈があり、その為にあれがなくちゃこれがなくちゃと思いますが、遊びが遊びでは無くなって、遊びの何たるかが忘れさられてきています。彼らのカヌーは精巧さも無く、セールの効率も我々のヨットに比べれば遥かに劣る。しかしながら、実に面白そう、楽しそうに見えました。

ヨットの持つ性能の各要素を吟味する事は大事な事です。しかし、そればかりに囚われると面白さが減じられるような気もします。もっと大事な事は使えるヨットであるように思います。ヨットを大切にする事も大事ですが、もっともっと使い込めるヨット、その為にはタフである事、そしてその為にメインテナンスをします。ヨットは使ってなんぼですから。

ヨットは使えば、どこか壊れる事もあります。それを修理して、また使う。これを繰り返して、覚える。知れば知る程、セーリングが面白くなってくる。F1という車のレースがありますが、あれなんかは高性能の頂点でしょう。でも、非常にデリケートで、扱いが難しい。こういうのは一般にはむかない。ヨットも同じでタフで、どんどん走れるヨットは頼もしいし、頼もしいからこそ、もっと走れる。プロレーサーでは無いので、われわれがセーリングを楽しむには、頼れるヨット、多少重くても、頑丈なヨット、少々の時化でも走れるヨット、そういうヨットの方が面白い。デリケートなヨットは性能は高いかもしれませんが、扱いが難しくなる。微風で速いったって、微風ですから知れたもんです。それより少々吹いても平気なヨット、タフなヨット、そういうヨットの方が面白いと思いますね。微風で他のヨットより速いと言っても、微風ですからそんなにエキサイティングには走れない。そういうヨットは吹けば今度は難しくなります。そういうヨットより、強風に強いヨット、安心できるヨット、我々にはそういうヨットが合うと思います。

日本人は繊細ですから、細かい所が気になる。それは解りますが、トータルで考えた場合、舗装道路を走る車とは違いますから、全体でタフなヨットが良い。どんどん乗り込みますと、どんなヨットが良いか考え方も変わってくる。無風、微風、軽風、そんな状況しか乗らないなら、ヨットは何でも良いかもしれませんが、実際、こういう状況だけでは面白さはあまり無い。でも、これ以上吹いてくると、緊張感も増してきて、恐怖感も出てくる事もあります。でも、同時に面白さが出てくる。この面白さはヨットがタフで頼れるものなら、恐怖感は減じられていきますから、一層面白さに拍車がかかろうというものです。信頼できるヨット、それは良いヨットでしょう。

良いヨットとは、どんなヨットライフをイメージするかによって違ってくるかもしれませんが、少なくともセーリングが面白いヨットは良いヨットだと思います。

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