第四十二話 趣味

昔、昔、趣味が全く無いという方々は多かったです。それは時代がそんな時代では無かった。仕事が優先された時代です。その方々のお陰で、今の日本があります。でも、その後の世代では少し余裕も出てきます。それで、趣味を少しづつ持ち出した。ゴルフ、囲碁、将棋、絵画、音楽、映画、ボーリング、盆栽、陶芸、野球、テニス、車、まだまだたくさんあるでしょう。そして時代の変遷とともにもっともっと多様化してきています。

考えて見れば、ヨットはその中のひとつとみなす事ができます。たくさんの趣味の中のひとつです。一人の方が、映画も好きだし、テニスもするし、水泳したり、車でドライブしたり、趣味をふたつもみっつも持つ事は珍しくありません。その中のひとつにヨットを加えるとしたら、ヨットには総てを求める必要はありません。それがデイセーリングです。

午後過ぎまでセーリングを楽しんできた。それから、映画に行っても、車でドライブして、どこかこじゃれたカフェで過ごしても良いわけです。デイセーリング、しかもシングルハンドというのは、そういうスタイルをも求めています。エキサイティングなセーリングを短い時間に堪能したら、次は別な所にも行けます。そういう使い方が、シングル/デイセーリングには合うだろうと思います。総てをヨットの為だけに時間を割くのでは無く、今まであった趣味も同時に並行して楽しんでいく。そういうスタイル、気軽なスタイルです。忙しい日本人、暇の無い日本人、飛び飛びしか休みの取れない日本人、キャビンが上手に使えない日本人、外洋に行く暇の無い日本人、多趣味の日本人、そういう日本人にはシングル/デイセーラーがぴったりです。2,3時間のセーリング、ちょうどプロ野球の一試合を観戦するぐらいの時間です。それをエキサイティングにセーリングしてくるというのは、気軽な気持ちで、スポーツしに行く感覚です。そんな時、冷蔵庫や温水や、ギャレーなんかどうでも良くなります。コクピットにソフトなアイスボックスをおいて、コンビニで買った飲み物を入れて、たったそれだけでさっと出て行く。ギャレーなんて、コーヒーいれるぐらいにしか使わない。この気軽さを持てば、いつでもさっと出て、セーリングを縦横無尽に走り回って、さっと帰ってくる。そして、次の所へ行っちゃいます。こんなスタイルは如何でしょうか? もちろん、ヨットは自分の気に入った美しいヨットでなければいけません。クラシックでもモダンでも良い、かっこいいヨットで、かっこ良くセーリングをする。これが私の理想のスタイルです。

エンジンで遠くに行くなんて考えません。第一、遠くに行けば必ず1日ぐらいは時化ます。時化た中を何時間もエンジンで行くなんてまっぴらです。太平洋を横断するような冒険心もありません。私の冒険心は近場を自由自在にセーリングする事です。その程度です。でも、これが面白いんです。
他にもしたい事がありますので、丁度良いわけです。

こういうスタイルは誰でもできます。初心者でも、ベテランでもできます。時間の無い人、クルーが居ない人でもできます。それで居て、エキサイティングなのです。でも、している人は少ない。
外洋だけがヨットじゃない。どこかに行くだけがヨットじゃない。目の前にこんな楽しみ方があります。是非、試していただきたいです。自由自在セーリングを堪能していただきたいです。

宣伝になりますが、そういうスタイルに合うヨットとして、ノルディックフォークやアレリオンをやってます。時間が無いから、デイセーリングを楽しむという事もあるでしょう。また、他にも趣味があって、いろんな事したいからデイセーリングという事もあります。デイセーリングこそが、面白くなくてはいけないんです。

全てをヨットに注ぎ込むという考え方もあるでしょう。外洋に行かれる方はそうなるかもしれません。それもあって良いと思います。でも、デイセーラーのように、いくつかの趣味のひとつとしても良いんじゃないかと思います。外洋に行くには、実に多くの知識が必要になる。技術も要る。そして度胸も必要です。その反面、デイセーリングは気軽です。スポーツ感覚です。最も手軽であるならば、最も増えて良いはずです。それでいて、エキサイティングにもなるんです。

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