第四十五話 セーリングを意識する

クルージングだからと言って、セーリングをないがしろにすると、ヨットの面白さは半減してしまいます。クルージングであっても、セーリングをすると面白い。それを意識して頂きたいと思います。よく、セーリングの方はそこそこで良いと言われる方が多いのですが、それでもレースに参加されると、かなり熱くなられます。結局はセーリングが面白いと感じておられるのだと思いますが、レース以外の場合、途端にあまり気にしなくなるという傾向があります。

普段のセーリングにおいて、エンジンで走る以外は、セーリングをもっと気にかけて、今できる中で最も良く帆走してみようと思う事は、セーリングを楽しむうえでは重要な事です。より良いセーリングを目指すから、その反応を楽しめるのであって、そういう意識が無いと、ただ、漫然と走っていたのでは、あまり帆走における面白味が沸いてこない。これはヨットの性能がどうこうという以前の問題で、乗り手の意識の問題かと思います。意識する事がまずは必要で、それが無ければ、どんなに性能が良いヨットであっても、面白いという感覚は沸いてこない。

意識すれば、性能に不満が出たりもする事もあるでしょう。もっと上り角度が、もっと軽ければと思うかもしれません。でも、反面、良い走りも堪能できるわけです。それで、自分のヨットで、できるだけ良い帆走を目指す。すると、シート類が古く、硬くなって操作しにくいとか、位置がどうとか、改良すべき点も出てくる。そういう意識になりますと、船底が汚れているとかも気になってくる。いろんな箇所が気になりだして、それでできる所は改良していく。そうすると、確実にヨットはスムースになって行きますし、同時にうまくもなっていく。それが面白いんだと思います。ただ、走ってるだけでは、そのうち飽きてくる。面白いのは、ヨットも腕も、進化という変化を感じている時だと思います。ならば、そういう努力をしていくのが良いという事になります。

ヨットは改良すべきところには限界がある。その上を望むなら買い替えしかなくなりますが、自分の腕が上達するに、限界は無いので、それをどんどん楽しむ事が永遠にできる。言葉で言うのは簡単ですが、うまくなるには、それなりのセーリングを回数積み上げていかなければなりません。ですから、時間もかかる。終わりの無いセーリングです。

面白いのは、うまいからでは無く、上達する過程があるから面白い。という事は誰でも、意識さえしていけばいつまでも楽しむ事ができる。それがヨットの良さだろうと思います。初心者が一人でセーリングしてこれるようになると、それだけで面白いし、ベテランが微妙な変化を感じ取る過程も面白い。つまり、全ての人が、意識さえすれば、ヨットの帆走を面白い物に変化させる事ができます。レースなら誰でも意識するのですが、普段のセーリングではないがしろになる事があります。微風なら微風なりに、強風なら強風なりに、今日はどんな風に走るか、テーマを設けても良い。そういう事が自分でセーリングを演出する事になり、そういう積み重ねがヨットをトータルで遊ぶにおいて、面白いか、退屈かに分かれていくんだろうと思います。

全ては自分次第だという事になります。これは自己責任という事です。ヨットがつまらないのは全て自分の責任ですし、ヨットが面白いのは全て自分の責任です。乗れば、良い事ばかりではありません。でも、全てを含めて、面白いと思えるようになると、世界は一変します。ヨットのキャビンばかり意識してしまうと、味わう魅力は半減してしまうのではないかと思います。逆にセーリングを意識しますと、コクピットで味わうコーヒーさえも、一味も二味も変わってくる。そう思います。

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