第四十五話 新艇と中古艇

日本に新艇が入るという事は、それだけ数が増える事になりますから、ヨット界の拡大として、業者としてはひとつでも多く増やしたいと思います。それもできるなら、同じパターンばかりでは無く、いろんなヨットが入ってほしいものです。海外にあるたくさんの造船所はいろんな独自のコンセプトを持っています。ですから、そのいろんなコンセプトの中から自分の求めるヨットを見つけるチャンスがあります。ですから、マリーナに行きますと、いろんなタイプのヨットを見る事ができます。それはオーナーにとって良い事でしょう。

一方、日本では市場の小ささから言いまして、多くの造船所が建造を続ける市場がありませんので、少数になります。という事はコンセプトも限られてきます。そこで、各業者が世界の造船所に代わって、そのコンセプトを代表すれば良いわけです。それで私共はセーリングにコンセプトを置き、特にその中でもデイセーリングを堪能するというコンセプトを持っています。さらに、これを実行するにあたっては特にシングルハンドを強調しています。また、ダブルハンドやそれ以上であっても、セーリングを堪能しよう、クルージング派であっても、セーリングを堪能すれば面白い。それにはどんなヨットが良いか、これが私共のコンセプトです。

他の業者ではまた違うコンセプトを持っているでしょう。いろんなコンセプトの中から、自分の個性豊かな感性に呼応するヨットを見つけて、いろんなヨットが日本のマリーナを賑わすようになると、ヨットも次の時代に入ってきたなと思います。それがこれから始まると思います。

さて、中古ですが、そろそろ30才になるヨットがちらほら出てきました。30年経っても、まだまだ乗れる。破棄するにはもったいない。古いデザインだからと言っても、なかなか味のあるデザインもありますし、今には無い魅力もあります。レーサーなら兎も角、クルージング艇としては、へたすると今のヨットより良いかもしれません。ただ、明らかな事はキャビンは今のヨットの方が広いです。

さて、こういう30年ヨットをどうするかですが、蘇らせる方法としてレストアという言葉が浮かび上がってきます。ただ、このレストアというイメージが、ある誤解を招くのではないかと思います。レストアというイメージは、新艇と同じとまでは行かないまでも、それに近いイメージをお持ちだと思います。もちろん、そうする事も可能ですが、それには、かなりの金額がかかってしまいます。へたすると新艇を買った方がましかもしれません。という事はそのヨットに相当なる愛着が無いとできない事です。海外では、そういう専門の造船所があります。それだけ浸透していますが、日本ではまだその段階ではありません。

それで、日本では、部分レストアという言い方の方が良いかもしれません。できるだけ使えるものは使って、手直しする部分を限定していく事によってコストを下げる。それでも、どこまでやるかによっては、かなりの金額になります。ですから、できるだけ自分でどこをどうしたいかのイメージを持つ必要があると思います。そして、作業をする方とのコミュニケーションが大事だろうと思います。
車なら、今更30年もたったような車はノスタルジー的かもしれませんが、ヨットの場合は、現役としてどんどん使えます。また性能面もスピードとしては落ちますが、乗り心地も良いし、スタビリティーも高いし、クルージングとしては良いですから、それを蘇らせて乗るという手もあります。昨今では30フィート以下のヨットの新艇は少なくなりましたから、そういう古いヨットを蘇らせるという事は良い事でしょう。但し、廉価という事は期待できないですから、それなりの覚悟は必要ですが、ただ、そのヨットを今全く同じ物を新艇で作るとなると相当高価になる。そう考えたら、レストアも高くは無いという事になりましょうか。古いヨットは良く造りこんであります。

レストアという事では無いにしろ、10年に1回ぐらいは、ヨット全体を見直して、整備をされたらどうかと思います。これまでは故障したら修理するという具合でしたが、10年ぐらいをめどに、全体を見直して、整備をする。壊れる前に整備する。隅から隅まで点検する。そういう経費はかかりますが、トータルとしてはかえって節約になるかもしれません。日本の中古艇は船齢に左右されますが、これからは整備状況によっても影響があるようにしなければなりません。それに整備していれば安心ですし、自分のヨットを良く知る事にもなります。それに気持ちも良くなるので、乗る機会も増えるようになるでしょう。

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