第六話 デイセーラーの隠れたコンセプト

デイセーラーコンセプトのヨットを重要視していますが、それにはいくつかの理由があります。ヨットの使い方には外洋、レース、キャビン、そしてセーリングがあります。最初の三つはこれまでの乗り方でした。でも、ここでデイセーラーというコンセプトが出てきました。この本当のコンセプトはデイセーラーという言葉から受ける印象とはちょっと違います。デイセーラーは遠くに行く必要ないからキャビンは小さくて良いととる事もできますが、そうでは無く、セーリング自体をもっと堪能しようというコンセプトがあります。キャビンライフよりもセーリングライフを重視しようというコンセプト、その為に重心はできるだけ低い方が良い。バラストが大きいだけでは無く、もっと低く、そこでフリーボードを低くした。船体自体の重心も下げました。結果キャビンが小さくなったわけです。本当はこのヨットのコンセプトはセーリングする為のヨットなんです。ただ、セーリングヨットというのは全体のヨットの総称ですから、キャビンを小さくしてますので、これでは遠くに行く方も少ないでしょうから、デイセーラーと称しました。セーリングを純粋に堪能するにはそれで良かった。デイセーリングを造りたかったわけでは無く、気軽に、シングルでもセーリングするヨットを造りたかったわけです。

つまり、従来のヨットと比べて、セーリングするという点において、今までとは違った考え方があります。それがヨットを気軽に堪能できる大きな要素だと思っています。セーリングはレーサーの専売特許ではありません。だからと言って、レーサーのようにただ速いのが良いわけでもありません。
シングルで取り回しがし易い、気楽に出せる。帆走がし易い。帆走が面白い、極めて低いフリーボードは水面に近く、一層の面白さを与えてくれるばかりか、重心の低さはより面白い帆走を与えてくれます。セーリングヨットというのは、まさしくこういうヨットを指すのではないかと思います。ヨットにおいてセーリングが面白いというのは、当たり前のようで、実は当たり前では無かった。実際はみんなセーリング以外の所で遊んでいた。

欧米のデイセーリングと称するヨットは、これから大きな位置をしめるようになると思います。何故なら、セーリングが面白いからです。これまでに無かった感覚です。船体のフリーボードは極めて低い。それはキャビンが不要だからでは無く、重心がそれだけ低いという事を意味します。それがどれだけセーリングするにおいて面白いセーリングをもたらすか、デイセーラーだからキャビンは小さくて良いとしたのでは無く、セーリングを面白くする為に小さくした。結果、それをデイセーラーと呼ぶようになっただけです。本当はこれはセーリングヨットと称すべきでした。でも、この言葉はヨット全体を総称する言葉として使われますから、デイセーラーと呼ぶ事になった。

デイセーラーは実はデイでもオーバーナイトでも良いんです。デイセーラーは面白いセーリングをしたい人へのセーリングヨットです。デイセーラーだけだったら、キャビンをあんなに低くする必要も無いわけです。セーリングを楽しもうと思ったから、その為にはこうしたら良いという結果です。

考えてみましたらヨットはそれぞれの方向に着実に進化してます。キャビンヨットはますますキャビンがでかくなり、その代わり、セーリング主体の方には別のデイセーラー(セーリングヨット)が出てきました。確実に分かれてきています。キャビンヨットでもセーリングはできる。デイセーラーでも宴会はできる。でも、それぞれ得意分野というのがあります。こうやって分かれてきました。

ノルディックフォークはあの低い船体で、尚且つ、バラストは50%以上です。アレリオンにしても、他のヨットにしても、船体自体の重心が非常に低い、それに加えて、バラストは40%前後あります。この事がどんセーリングをもたらしてくれるか。重心は低い方が安定度が増す。そのことは明らかです。デイセーリングだから必要なのではありません。セーリングを面白くする為に必要なのです。

ですから、デイセーラーというのはこのヨットの本質を表していません。それは二次的な事です。このヨットの本質はセーリング、レーサーでは無いセーリング、面白いセーリングを意味します。何か違う言葉をあてがいたいぐらいです。これからはセーリングそのものを楽しむ人が確実に増えるでしょう。それも気楽に、誰でも、目の前の海域でできるんですから、当然だと思います。

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