第十一話 バランス遊び

セーリング機能を実行しますと、それは全体のバランスを求める行為になります。風を受けるセールとそれを支える船体、そしてその間を取り持つのが操船という事になります。この両者のバランスの仲を取り持つ作業という事になります。

船体は一定で変化しません。ですから、どんな性能を持っているか、どんな性格かは、選択する時に決まります。船体の重心位置、水線長、幅、構造、船型、そういうものが一定ですから、これを軸に変化できる部分を操作します。風や波が一定ならもっと簡単になりますが、幸い一定ではありませんので、変化に対応して操作をする事になり、不安定は自分自身の心の中も不安定を感じます。逆に安定しすぎると、変化が乏しくなり、面白味がなくなります。ですから最適なバランスを模索する事になります。

風対ヨットの走りが50:50なら、これはもう頂点の極めて微妙なバランスの上にあり、最高のフィーリングかもしれません。でも、これは非常に難しいものなのでしょう。でも、逆に50:10とかでは
安定した走りでしょうか、安定しすぎて退屈になるかもしれません。それで、50:20に50:30にと引き上げていく。その過程の中で、偶然にも50:50かどうかは解りませんが、実にバランスの取れた感じで、最高のフィーリングになる事があります。これはおまけかもしれませんが、セーリングの御褒美だと思っています。

このバランスを取る為の操作として、セールコントロールがあります。前にも言いましたが、ヨットは舵の操作以外、デッキにあるロープは全てセールコントロールの為にあります。つまり、それらを使って遊んでくださいという意味だと思います。それがヨットの最も面白いところですよという意味だと思っています。それをしないなら、ロープは多くが不要です。使わなくても良い事になります。ですからキャンピング機能を使う時は使わなくて良い事になります。

キャンピング機能はセーリング機能より下に見ているわけではありません。あくまで違う使い方だと思っています。ですから、一方を使って、一方を使わないのでは無く、使い分けて下さい。そして、セーリング機能はヨットならではの機能ですから、キャンピング機能中心の方でも、ながい年月を乗り続けていく為には、セーリング機能をもたまには遊んで頂きたいと思います。

ヨットの操船はバランス遊び、どうやってバランスを取るか、そして少しでもバランスが良くなるとそれに応じて気分が良くなる。不安定から安定に向かう。それを感じるバランス遊びかと思います。たったそれだけかと思う方もおられるかもしれませんが、これがどうして、どうして手ごわいのです。簡単ではありません。なかなか50:50にはならないのです。多分、偶然にしかならないかもしれません。でも、良いんです。50:20より50:30になったら気分は良くなる。50:50は偶然の神様からの贈り物で良いんです。それまでに充分遊ばせてくれます。

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