第五十二話 所有から使用へ

インターネット時代ですから、何をするにしても、その使い方とかはすぐに解ります。ヨットにしても、各装備の役目、使い方などは簡単に学ぶ事ができます。本屋に行けば、そういうノウハウ本がたくさんありますから、嬉しい時代です。

そこで問題は実際にどう使うかになってきます。それを使ったら何の役に立つか、どんな感じか、面白いのか、辛いのか、これらはどんな本にもインターネットを調べても解らない。それがバーチャルでは無い現実の世界。我々は現実に生きていますので、現実に何をし、何を感じるかが重要です。何もしないで批評するのは論外。そんなのは放っといて、1度でも経験した方はリアルな体験となる。リアルな世界ですから、バーチャルよりは価値が高い。それが人生の価値でもある。

私のお誘いはセーリングという見えない世界へのお誘いです。そこら辺回って何が面白い?それより、どこかに旅をした方が良いという方も大勢おられます。それはそれで結構なのです。旅という経験もおおいに有りなのです。いかなる経験もリアルであれば価値はある。そのリアルな体験が面白ければ、またやろうという気になる。でも、ここでセーリングという古くて、新しいジャンルを、これまであまり重視してこなかったジャンルをやってみてはいかがでしょうかとお誘いしています。効用は何と言っても手軽である事、忙しい人でもできる事、そしてすぐに陸上では感じる事のできない世界に入れる事です。

物が充分に普及しない時代は、所有する事に意味があったかもしれません。しかし、今日、物はあふれていますから、いかに使うかが重要です。同じ物を所有しても、そこに差がついてきます。ヨットについては、まだまだ普及していませんが、ですからまだ所有に意味があるのかもしれません。所有する事と所有しない事の差は大きい。ですから、所有しない人達の間に居ますと、所有している事だけで意味がある。しかし、日本のヨット歴も数十年を過ぎ、マリーナに行けばみんなオーナーですから、この時代を過ぎ、ヨットもいかに使っているかの差が出てきます。つまり、所有しているだけでは、意味はそう大きく無くなって来ている。そこで、いかに使うがが差となって現われる。

いかに使うかを問う時、それはその成熟度を表していると思います。どれだけ浸透しているかです。ヨットがただ所有される時代はまだまだ、いかに使われているかが、その成熟度です。これは人によってまちまちですが、その差はどんどん広がっている。使われないで、ただ所有されるだけで、マリーナに保管されているヨット、一方、どんなスタイルにせよ使われているヨット、その差は広がってきています。時が経つにつれ、時代は所有からいかに使うかを問うようになる。

しかしながら、いろんな制約により、旅には限界があります。レースにもクルーが必要です。キャビンをそうしょっちゅう使う事も無い。とすると、無限の遊びはセーリングにあるという事です。セーリングはヨット本来の機能であり、その機能を堪能する事、近場のデイセーリングだろうが、ちょっと遠出だろうが、セーリングそのものを味わう事は、レーサーだろうが、クルージングだろうが、基本的な全てのヨットに備わった機能、これなくしてヨットとは言えない機能です。

自然の風を利用して走るという、まさしく今の時代に合ったエコを体現し、他では味わえない爽快さ、それを実行に移す知的な刺激、今まさに、いかに使うかが重要かと思います。そこにあるだけではもう満足できない。所有の時代は、そこにあれば良い。スタイルは関係ない。しかし、これからは、いかなるヨットを所有しようが、いかに使うかが重要です。それが自分のスタイルです。それはどんなスタイルでも構わない。ただ、いかに使ってその物をいかしているかは、大きなテーマです。

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