第八十一話 デイセーラーの種類

アレリオン28で始ったこの種類も、年数が経過する従って変化してきています。アレリオン28も、その当初からすると変化してきていますが、このジャンルが浸透するにつれ、いろんな造船所が、同じコンセプトを持ちながら、少しづつ変化しています。それはスポーツカーにもいろいろあるのと同じです。

例えば、イタリアのブレンタ38ですが、舵誌にも取り上げられたので、ご存知の方も多いと思いますが、このヨットの前身はステラ44と言いました。オーナーがアメリカで建造されるデイセーラーを知ってか知らずかは解りませんが、シングルハンドのデイセーラー、それもより快速を求め、ブレンタ氏(デザイナー)にデザインを頼んだのが最初です。44フィートというサイズでしたので、いろんな操作をステアリングポジションからボタン操作ひとつでできるようにした。オーナーはイージーハンドリングでありながら、レーサーのスピードを要求した。レーティングなんて関係ありませんから。
それで、ブレンタ氏はカーボンを船体に使い、メガヨットのセール操作を使い、カーボンマストは当然ながら、カーボンのセールまで使いました。まあ、言わば、フェラーリのようなヨットになったわけです。その評価は高く、そこでプロダクション化が始ります。サイズを落として38フィートにしたのは、より一般化を願ったのかもしれません。それに続いて30フィートを作り、今は60フィートも建造しています。これもデイセーラーコンセプトです。

その他、アメリカにE33という、これもスピード重視のデイセーラーが造られています。33フィートですから、電動を駆使してという事では無いのですが、逆に一切ウィンチ無しでも操作ができるという工夫がしてります。後は、もう少し中庸になりますが、ブルックマンヨットから42フィート、セレブリティーから36フィート、WDショックから25フィート、Jボートは33フィート、セーバーが37フィート、モーリスの36と42、そして、フレンドシップ40とか、ワリーヨットからもナノ36、バルチック社も今建造中のがあります。まだ他にもあります。このように、いろいろ出てます。これらは、全てデイセーラーというコンセプトを持ちながら、セーリングをどこまで追及していくかにバリエーションがあります。そして、みんなに共通するのが、楽にセーリングを追及できるという事で、大型になっていけばいくほど、電動とかのパワーアシストになっています。アレリオンも33と38は電動ウィンチになっています。

結局、デイセーラーコンセプトの軸はセーリングを楽に遊ぶ事にあり、そのセーリングをどれだけ追求していくかによって、少しづつ違いがあります。追求はするけれども、楽に操作ができるというのが基本です。もし、スピードだけを求めるとしたら、レーティングが無関係なだけに、そこらへんのレーサーよりも速いのができるかもしれませんね。これらは多分、他のどんなヨットよりも、楽に操作ができ、快走を楽しめると思います。まさにスポーツカーです。

つまり、デイセーラーという名前をつけはしたものの、本当はそういう事では無く、クルージングの旅を求めるのでは無く、主体はセーリングを遊ぶ事にあります。クルーも必要とせず、快走ができ、楽であり、気軽である。スポーツヨットと言いますと、何かレーサー的イメージが沸くかもしれませんので、敢えてデイセーラーとしたのではないかと思います。という事で、こういうコンセプトのヨットを例え60フィートあろうが、デイセーラーというジャンルに入れてしまいました。キャビンよりセーリング重視という意味で、実際60フィートともなると、キャビンだって相当広い。でもデイセーラーコンセプトなわけです。

という事は、ひとつの事実が見えてきます。レーサーならレーティングに縛られる。いくら一番でフィニッシュしたとしても、レーティングの修正で勝てない事もある。以前から、ファーストフィニッシュが最も気持ちが良いだろうと思っていたのですが、速いヨットにはレーティングという荷物が課せられます。それで欧米あたりはワンデザインが盛んです。ファーストフィニッシュが優勝ですから、実際走りながら、今どのぐらいのポジションに居るかが明白です。その方が面白いに決まっています。
でも、こういうレースには同じヨットがたくさん参加しなければならない。日本ではJ24ぐらいでしょうか。

その点、全くレーティングなど気にせず、性能を追求する事ができるヨット、ワンデザインも気にせずに、帆走をいかに楽しむかを考えたヨット、それがデイセーラーです。でも、速いだけじゃ、クルーが必要だったり、複雑な操作になるといけませんから、シングルでも容易にする事を基本にしています。レースで無くても、思った快走ができるというのは、最高のフィーリングです。

これから、この分野はもっともっと開発されてくると思います。バリエーションが増える。でも、基本はシングルを容易にし、初心者でも簡単に操作ができ、ベテランにおいてはその深さを追求できる。高い帆走性能を持ちながら、それでいてひとりで自由自在、ゆったりも良いし、シングルでありながら、そこらのレーサーを軽く抜き去るようなヨットなんかも出てくると思います。それって快感ではないですか?かたや10人も乗って操作しているヨットを、シングルで軽く抜いていくなんて。そういう時代にきっとなる。向こうはレーティングだの何だのと言うでしょうが、そんなの関係ない。

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