第三十一話 仲間
ヨットが面白くて、しょっちゅう乗る人でも、そのうち何か、マンネリ感みたいな感覚を覚えてくる。そうしますと、人によってはどこかに行きたくなるし、誰かを誘いたくなるし、ヨットを買い替えたくなるかもしれません。或いは、だんだん乗らなくなるかもしれない。この関門を乗り越えると、また別の世界が見えてくるのかもしれません。マンネリなんてどこにでもある。何にでもある。 マンネリ感を打破する最も良い方法は何か?もっとうまくなろうとする気持ちとか、何か?しかし、よくよく考えてみますと、やはり仲間ではないかと思います。マリーナに来たら、周辺の方々と話しをする。みなさんヨット乗りですから、お互いの話が解る。例え、シングルで乗る人にしても、マリーナでは仲間が集う。社会的背景はいろいろありますが、そんな事は無関係で、ヨットというひとつのジャンルにおいて、社会ができます。そこで互いに刺激もあります。そうやって、自分のマンネリ感を乗り越える事ができるかもしれません。マリーナに行かないと仲間には合えませんから、マリーナに行く事が大事ですね。 仲間は何も一緒に乗る人達だけではありませんね。マリーナはいろんな乗り方をする人達が居て、教えたり、教えてもらったり、そういう社会が段々と出来てくる。それでマリーナは社交の場となる。でも、海に出れば、また自分の世界です。自分のしたい事をする事ができる。ほんのたまにしかマリーナに顔を出さないのなら、なかなか参加できないかもしれません。ですから、できるだけ顔を出す事だけでも良いかと思います。 あるマリーナでは、係留されているヨットがみんなきれいに磨かれていました。新しいヨットは当然としても、古いヨットでもピカピカだったので、ちょっと驚きの目で見た記憶があります。これなどはお互いの刺激があるのでしょう。仲間は何もみんなで、何艇も連ねて一緒にどこかに行くという事が必要なわけじゃない。マリーナ内で、いろんな話を聞いたり、情報交換の場でもあります。そういう意味で、マリーナはただ単なるヨット保管場所というだけでは無く、社交の場である事になります。マリーナ側にはそういう事を意識して頂ければと思いますが、まあ、これは自然と湧き上がってくる事かもしれません。こうなると、シングル派でも、マリーナに帰ってくれば仲間がたくさん居る事になります。 そういう社会ができているのが、欧米のマリーナではないかと思います。マリーナで遊ぶ。これもヨットライフのひとつ。たくさんの人達が、マリーナをうろうろしてます。海に出なくても、そこそこ楽しむ事ができる。日本にはなかなか無い光景です。 日本でヨットをもっと活気づかせる方法は、ひょっとしたらこれかもしれません。マリーナライフです。レースしようが、旅だろうが、何だろうが、マリーナに人が集まり、そこに社会を築く。ヨットで海に出ようが、出まいが、そのマリーナでそこそこ楽しむ事ができる。そして、気が向いたらヨットを出す事もできる。ひょっとしたら、根底はここにあるかもしれません。 風が無い時、風が強すぎる時、出航はしないかもしれませんが、それをメインテナンスにあてる事もできれば、のんびりする事もできる。その時、マリーナが社交の場であれば、そこで楽しいひと時を過ごせる。とりあえずマリーナに行けば、そこそこ楽しい時が過ごせる。日常の社会とはまた違う、純粋に遊びの世界での社会です。 それをマリーナ側に何とかしてもらおうと思うと、それは期待できないようです。各人が、とりあえず、時間があったらマリーナに行く。人がたくさん集まると、そこには何かが生まれる。そうやって自分達で作っていくしか無いのかもしれません。ですから、マリーナに行きましょう。とりあえず行く。そういう人が一人、二人と増えていく事を期待します。 たくさんの人達が集まる、楽しいマリーナ、これがありますと、自分のセーリングにマンネリ感を感じる時でも、仲間が刺激を与えてくれます。楽しいマリーナライフを作る事が、セーリングにしても、何にしても、根底に楽しさを与えてくれるのではないでしょうか?マリーナに来るだけでも楽しいのですから、その上セーリングしますと、根底のレベルが上がってますから、なかなか面白いセーリングを追及できるのではないかと思います。 ですから、兎に角マリーナに行く。みんなでマリーナに行く。しょっちゅう行く。ヨット出さなくても行く。 コクピットでみんなでお弁当食べるだけでも良いから行く。そういう人達がある一定数にまで達しますと、どんどん増えてくる。こうなりますと楽しくなり、もっと人が集まる。欧米との最も大きな違いはこれではないかと思います。行くだけなら何も気にしなくても良い。夜は出さないから行かないのでは無く、出さないでも行く。酒は飲めないので、コーヒー飲みに行く。それでも良い。最初は誰も居ないかもしれませんが、それでも、わずかな時間を過ごす為に行く。そうすると、やがて、それにならう人が出てくる。それも悪く無いと。 仕事終わって、夕方にマリーナに行って、コクピットでゆったりと入れたてのコーヒーを一杯飲んでかえる。馬鹿馬鹿しいと感じるかもしれませんが、そういう時をたまに持つのも悪く無いかもしれません。マリーナライフというのは、案外ヨットライフにとっても重要かもしれません。だからと言って、大きなキャビンが良いと言ってるのではありません。キャビンに入るのは閉じこもってしまうので、やはりコクピットとその回りです。兎に角、マリーナに行きましょう。それが、全てのヨット乗りに必要な事です。旅派もセーリング派も宴会派もレース派も、みんなマリーナに行きましょう。用事が無くても行きましょう。コーヒー飲みに行きましょう。そこからじわじわ社会ができる。今の日本はこの社会無しで、それぞれが単独でヨットを何とかしようと思います。これはなかなか難しい。そこにマリーナライフがあると、きっと面白くなると思います。ヨットを出すか出さないかは次の事、兎に角マリーナに行く。そうしたら、気楽でしょう? |