第四話 割り切り

何かを始める初期段階においては、この割り切るという事が難しい。あれも、これもほしくなるというのが一般的です。しかし、徐々に使っていくうちに、どれが必要でどれが必要で無い。いろんな使い方のこの部分が最も面白い、などが解ってきます。そうしますと、そこの部分をもっと、という事になり、やがて割り切る事が簡単になる。むしろ、自分の使い方に割り切りたくなる。そこに到達するには、ある程度の時間が必要になります。

ヨットの良さはどこにあるのか?これは明かにセーリングの中にあろうかと思います。ヨットをセーリングとして使わなくても、それは一向に構わない。自由です。しかし、セーリングに使う事によって、セーリングでしか味わう事のできない味わいを得る事ができます。

エンジンをオフにした途端に、その世界が始まる。静かな中に、一切の動力を用いずに走る感触はセーリング以外では味わう事のできない世界です。ですから、素直に、ヨットやるならセーリングをいかに楽しむか、その感触を味わうかを求めた方が、きっと面白いに違いないと単純に考えます。

ヨットを集いや宴会などに使う時、それはヨットである必要性は必ずしも無い。エキゾチックな雰囲気で演出されるパーティー等は、また違った雰囲気が場を盛り上げる事になります。しかし、それでも、ヨットである必要性は無い。例え、セーリングをしても、集いがメインになりますと、やはりセーリングの感触よりも、おしゃべりや食事が主となり、セーリングの感触はあるものの、そう大きな比重を占める事は無い。

ヨットを旅に使う。沿岸の旅は、エンジンで行くのが大方の相場です。ならば、これも必ずしもヨットである必要性は無い。旅が主体であるなら、他の、もっと効率の良い旅の仕方がある。

これら三つを前部、時に応じて使い分ける事はできる。多くの場合、そういう使い分けをされていると思います。これはこれで良いとも思います。でも、もし、もうひとつ何かがほしいと感じられているなら、それはこれら三つの使い方のうち、最も味わいたい方法を優先する事ではないかと思います。或いは、そこに限定しても良いかもしれません。そうすると、その求めた部分においては、もっと中身の濃い味わいを得る事ができる。その他の方法については、減じられる部分も多いにあるとは思いますが、割り切ってプラスになる部分と、減じられてマイナスになる部分とを天秤にかけてみる。

極端な例になるとは思いますが、セーリングにはデイセーラー、旅と宴会にはヨットマンズボート、という割り切り方をお奨めしています。デイセーラーでも宴会や旅もできます。しかし、最高のパフォーマンスはセーリングにあります。ヨットマンズボートはもはやセーリングはありませんので、躊躇される方も多いに違いない。しかし、宴会と沿岸の旅を満喫するには、この方が便利だし、効率的でもあります。快適でもある。

そんな割り切りができた時、最高のマリンライフが訪れる。求めるという事は、求めない物を捨てる事にもなる。捨てる事によって、求める事のレベルはどんどん上がります。均等に何でも味わうという方法もありますし、こう割り切って、ある一点に最高を求める方法もある。どちらを選ぶかは自由ですが、求めれば、求めるほど、どこかに集中していくのではないかと思います。

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