第四十四話 どこまでやる?
メインを上げて、ジブを開けば、後はメインシートとジブシートだけ扱ってもセーリングはできる。風下に自動的に流れるセール、それに結んだロープ、引いたり、出したりで、ちゃんとヨットは走ってくれます。実に簡単な操作です。取り合えず、この操作と舵さえコントロールすれば、セーリングができるわけですから、誰でも、ちょっとした練習でできるようになる。それがヨットの良いところです。 しかし、ヨットを知らない人は、こんなに簡単だとは思っていない。他にもたくさんのロープが、あっちこっちにあります。それらを全部操作するのだろうと思っているのでしょう。実は、そんな事は無い。 エンジンでの出入港さえ練習してできるようになれば、誰でも簡単にセーリングができる。出入港にしても、二人いればもっと簡単にできる。そのうえセーリングはこうも簡単なのですから、もっともっと参入者が増えても良いはずなのですが、みなさん難しそうに見えるらしい。 さて、それはおいといて、シートの取り扱いにある程度慣れてきた時、この先をどうするかによって、乗り方は違ってきます。現代はGPSの時代ですから、ナビゲーションも簡単になりました。行き先とルートを調べていけば、昔に比べれば簡単に旅に出る事ができます。それでも、知らない場所、特に漁港なんかに入らないといけない場合は、誰か知っている人と1回でも同行してもらえれば安心、GPSに航跡を記憶できますから、次からはその通りに行けばOKとなる。実に便利な世の中です。旅も昔に比べれば実に簡単になりました。 緊急連絡方法としては無線機、これも携帯電話にとってかわられ、ロングの旅にはオートパイロットを使う事も珍しくなくなった。おまけに、GPSには魚探機能を併せ持つ物も多く、これで水深まで解る。後は、徐々に経験を積んでいく。 一方、セーリングはと言いますと、レースには興味が無いという事で、あまり突っ込んでやる人は少ないのですが、旅も良いけど、セーリングも良い。何もレースに参加するのがセーリングでは無い。セーリング遊びを、もっと深く遊んでみてはいかがでしょうか?つまり、メインとシート以外のロープも使って、セールの形状をコントロールしながら走る。レースでは無く、テクニック的な遊びと言えるかもしれません。それに、そういう事を知っていた方が、シートだけのコントロールよりも、楽に走る事ができる。 バックステーアジャスター、これはクルージング艇には設置していないのもありますが、他にブームバング、アウトホール、メインシートトラベラー、ジブトラック、これらは大抵のヨットに設置してあります。これらを使わなくてもセーリングはできる。でも、使った方が面白くなる。旅をする時は旅として、その他のセーリングを遊ぶ時は、シートだけでは物足りなくなる。 これらの機能は既に書きましたので、ここでは書きませんが、これらを使う事によって、セールがただ外に出たり、内に引き込んだりするだけで無く、風を取り込む量をもコントロールできる。という事は、風に対する角度と風の取り込み量を調整しながら走る。考えてみれば風で走るヨットとしては、当然納得できる事と思います。セールは堅い板では無く、柔らかい布ですから。形はいろいろ変わる。 セールは風に対する角度と、その時吹いている風の強さに対して、弱ければ、できるだけ多く取り入れたいし、強ければ少し取り込み量を減らしたい。この取り込み量はセールの形によって決まる事になります。従って、風に対する角度だけでは充分とは言えないわけで、風に対してセール形状をどうするか。この為にシート以外のロープを使う。 角度は左右にシートを出す量、形状はドラフトの深さとひねり具合。ドラフトの量はバックステーアジャスターとアウトホール、ひねりはブームの上下の高さ。ジブは残念ながらブームが無いので、リードブロックの調整。こうしたら、セール形状はどう変わるか、その変わる形状は風を逃がすのか、取り込むのか?形を整えて、風の強さが変わらない限り、風の角度が変わるに合わせて、同じ形状のまま角度だけ変えたい。そうすると、シートだけではこれができない事が解ります。つまり、ある艤装は無駄にあるわけではありませんので、それで遊びましょうという遊び道具が装備されています。それをすると、もっと効率よくセーリングが出来て、効率が良いと快走のチャンスも多くなるし、それこそしびれるような感覚を得る事もある。 どこまでやるの?どこまでやっても良いわけですが、旅にしても、セーリングにしても、どちらも、より深く突っ込んでいくと、いろんな新しい発見や、感動がある。そうやっていろいろ夢中になって遊んでいると、いつの間にかいろんな事に詳しくなった自分を発見する事ができます。その成長を確認できるのも楽しい。 できれば、一歩前へ前進、また一歩前へ、長い時間をかけて、一歩一歩前進していけば、数年もたてばかなり前へ進みます。どうせなら、どうせやるなら、自分が好きではじめたヨットですから、その分野で詳しくなって、うまくなって、快を得たい、感動を得たい、違うフィーリングを得たい。レースに参加しなくても、セーリングを遊ぶ方法はいくらでもある。勝ち負けのセーリングもあれば、フィーリングを得る為のセーリングもある。 |