第五十八話 セーリング
| ヨットですから、セーリングをするというのは当たり前ですが、その当たり前のセーリングをいかに楽しいもの、面白いものにおするかがポイントになると思います。初心者の頃ですと、ただセールを上げて、セーリングするだけでもわくわくするものです。しかしながら、時とともに慣れてきますと、それまでと同じでは面白味に欠けてくるようになる。そこで、友人との集いや旅に目が行く。決して、それらを否定はしませんし、おおいに結構です。それらも楽しむべきだと思います。しかしながら、一方で、ヨット本来のセーリングが疎んじられるようになりますと、ちょっと寂しい気が致します。 ヨットはセーリングが本業だとするなら、そのセーリングが面白いものであるなら、これに越した事は無いと思います。それで、もっとセーリングについて見直す必要があるのではと思います。ただセーリングが出来れば良いという事から、もっと、いかにセーリングをするかという事です。その好例がレースという事になりますが、レースには別の要素をも持っています。セーリングをいかに引き出すかという事をレースは考えますが、その他に、競争という事になりますから、セーリングを楽しむだけでは済まない。もちろん、これはこれで面白さがあります。 ここで言うセーリングは競争では無いセーリングです。純粋にセーリングを楽しもうという事です。それには知識が必要ですし、経験も必要になります。そしてどちらも、徐々に積み重ねていくものですから、それらに応じたセーリングをする事になります。ジェノアもメインも一旦展開すれば、そのままでも帆走ができる。その状態を充分味わったら、知識を増やして、セールトリミングを考える。ジェノアのリードブロックの位置、メインのシートやトラベラー、バングの関係、そういう事を少しづつ知識として仕入れ、実践で試していく。そして、その時のセーリングの変化を楽しむ。セーリングを楽しむとはそういう事ではないかと思います。その中に、波があったり、風の変化があり、バラエティーに富むセーリングがあります。さらに、走る角度を考えたりで、さらに増幅されていきます。 残念ながら、クルージング艇と称するヨットの中には、そういう細かいトリミングをしても反応が鈍い時もあります。それらは、セーリングよりも旅を中心にコンセプトが置かれるので、ちょっとそういう反応を見ながら、繊細な部分にまでは感じ得ないかもしれませんが、それでも、得た知識でもって、セーリングを考えるならば、その変化を楽しむ事はできると思います。 セーリングはいつの間にかレースの専売特許のようになってしまいました。しかし、もう一度考え直して、セーリングを一般化したいと思います。誰もが、気楽にセーリングそのものを楽しむのが当たり前のようになって、オーナー同士がセーリング談義に花を咲かせる。そういう時が来てほしいと思います。レースは速いのが必須ですが、セーリングではそうとも限らない。シングルハンドという乗り方、ダブルハンド、乗り心地、スタビリティー、波に対するもの、ハルの堅さ、艤装、取り回しのし易さ、微風、強風、いろんな状況で、いろんなヨットがあり、いろんな乗り方がある。セーリング談義には全てが含まれる。 デイセーリングはそんな要素を持っています。誰でも、ちょっとした時間にセーリングなら楽しむ事ができる。全ての人が、最も容易にできる面白いセーリング、それがデイセーリングだと思います。それなら、多少忙しい方でも楽しむ事ができる。ヨットにとって最も基本的であり、かつエキサイティングな乗り方だと思います。もっとデイセーリングに注目しても良いのではないかと思う次第です。 そういう方がひとり、ふたりと増えてきますと、そこの仲間ができてきて、ひとつのトレンドを創りますね。彼らが楽しめば、楽しむほどに仲間が増え、デイセーリングは当たり前になる。そうしますと、セーリング談義があっちこっちで行われ、それぞれが自分の体験を話す。すると、だんだんとセーリングの性能が議論され、結局デイセーラーが良いとなって、当社のデイセーラーが売れる。こういう仕組みですね？デイセーラーは今のところ、他の業者は取り扱いしていませんから、当社の独占ですね。でも、流行ってくると、他の業者も始めるでしょう。そうすると、事はそう簡単には行きませんが、まあそれでも、デイセーリングが流行ると、ヨットに対する見方は確実に変わる。多分、稼動率もどんどん上がるでしょう。何しろ、目の前の海域ですぐにできる事ですから。しかも、それが面白いなら、それにこした事は無い。 かくて、デイセーリングは旅と同じように、ひとつのジャンルとして定着します。それが願いです。デイセーリングからウィークエンド程度のクルージングがひとつ、そして従来の旅とで、ふたつのジャンルが確立される。その乗り方、ヨットの選び方、これらはちゃんと分かれていく。きっと面白くなると思います。それゃあそうでしょう、目的に合った乗り方、ヨット選びができくるわけですから、面白くならないはずがない。おっと、もうひとつ。近場をのんびり走る、エンジンでも、セーリングでも、仲間との集いとして楽しむやり方があります。これはどっちのヨットでもできる事ですね。 |