第六十一話 男のロマン

男のロマンはいろいろありますが、例えて言うなら、男のこだわりと言える。他人が見た合理性などは問題じゃない、お金じゃない、理屈じゃない。時にはくだらなかったり、他人には理解できない事もある。社会に何の役にも立たない事もある。しかし、そんな理屈を超えたこだわりこそが、男のロマンに違いない。男はそんな無駄が大好きなのであります。心を潤し、奮い立たせ、悦にいる。馬鹿馬鹿しい事でも、男にとっては大事なおもちゃなのであります。そう、男はおもちゃで遊ぶのが好きなのです。

そのこだわりを追求すると、わくわくします。もっとこういう方が使い勝手が良いのに、と他人に言わせればそうかもしれないが、そんな合理性を追求しているわけじゃない。使い勝手よりも、このわくわくする感じが重要なのであります。こだわると、その他が犠牲になる事があります。しかし、だからと言って妥協すると、せっかくのわくわく感が削がれ、確かに使い勝手は良いのかもしれませんが、どうも今一という事になりかねません。

これなら家族全員でキャビンに泊まれるとか、広いキャビンとか、奥さんが気に入ったとか、確かに重要な事かもしれませんが、これから10年、20年とオーナーとして君臨していく為には、こだわりのわくわく感が必要かと思います。それは姿であるかもしれないし、性能であるかもしれないし、自分がしたい事にこだわり、それを満たすヨットかもしれません。理屈じゃ無いんですから、何でも良いわけでは無いのです。

ヨットは無駄なものです。はなっから無駄なもの。ならば、徹底的にこだわったとしても良いではないかと思う次第です。どうせ無駄なものであり、どう考えても役に立つようにはならない。そういう意味では、男のロマンそのものであります。中途半端に何かの役に立とうものなら、どうしてもそういう面も考えてしまう。しかし、ヨットはそんな考えは不要ではないかと思う次第です。それにどんなヨットだって完璧では無いし、不完全ならば、自分の中での完璧を目指すのが良かろうと思います。

それにしたって、ヨットは寛容な乗り物ですから、どんなヨットでも家族や仲間を乗せて走る事もできますし、クルージングだってできる。それなら、何といっても お気に入り でなくてはなりません。
それなら一生付き合える。可愛がりもするし、大事にする。思わず自慢したくなる。

女性がブランドにこだわり、気持ちが高揚するのと同じです。バッグなら何でも良いわけじゃない。それを持って気持ちがわくわくしてくるから良いのです。何を持ち、何をするかは、本当は二の次で、本当に大事な事は、それで自分の気持ちがわくわくするという事だろうと思います。物や行為より、気持ちが大事かと思います。

ですから、できる限りこだわるのも悪い事では無い。思いっきりこだわって、わくわくして、ロマンを追求する。これは男のエネルギーの補給であります。男はロマンを食って生きている。ロマン無くてはヨットには乗れません。

先日、ちょっと強い風の中でアレリオンでセーリングしてきました。夕方からのほんの1,2時間でしたが、良く走ってくれました。後からついてきたヨットがありましたが、みるみるうちに引き離し、速かった。レースでも無いのに、だからどうしたと言われればそれまでですが、そのわくわくした感じが良い。楽しい、嬉しい、わくわく、感動、そんな感情こそが宝です。

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