第六十六話 気にするかしないか

先日聞いたちょっと面白い話ですが、ハル塗装においてオールグリップ塗装というのが徐々に日本でも流行ってきました。それは多分、海外の造船所においてオールグリップ塗装をするようになってきたからだと思います。通常はゲルコートなのですが、ゲルコートは紫外線に弱い。色が白なら目立たないのですが、最近では紺色とかダークグリーンとかを選択される事があります。こういう濃い色の場合、ゲルコートでは紫外線によって退色が早い。その点、オールグリップの方が紫外線に強いので、造船所もこれを採用するようになってきたのではないかと思います。それで、オールグリップ塗装の講習が開かれた。

オールグリップとういのは色が限定されています。もちろんたくさんあるわけですが、細かくあるわけではありません。それで、ハルの修理をした場合の事です。講習ではその修理箇所に四角くマスキングテープを貼って、その内側を同じ塗料で塗装するというものです。ところが、いくらオールグリップとは言っても経年変化によって退色しているわけで、そこに同じ塗料を塗装しても、四角く色の違いが出るわけです。そこで色が違うと言いますと、その外人講師は、同じだと言う。否、違う、同じだ、これの繰り返しです。日本人には違う。でもかれには同じ。

多分、この講師にとって、この微妙な色違いはたいした事では無いと見る。だから同じだと見る。しかし、日本人は気になります。ですから色は違うと見る。ちょっと面白い発見かと思います。日本人が問題だという箇所と外人が思う箇所は異なる。これは外人が大雑把という見方もできますが、場合によっては、例えば、別の問題、見た目では無く、性能に関する問題の場合、日本人は問題視しないで、外人は問題にするという事もあります。見る目が違うようです。

ついでながら、オールグリップについて、いろいろ調べたり、聞いたりしてきましたが、明確に答えられる人はまだ少ない。否、まだ会った事がありません。しかし、先日の話、講習会に参加した人の話では、確かにオールグリップは表面が堅い。しかし、塗装後、細かい目のペーパーで研ぐ作業はしてはいけないとされているので、表面はあまりきれいでは無い。きれいなのですが、例えば、良く見ると波があったりする。それに引き換え、例えばウレタン塗装をして、福岡では研ぎをしますので、表面はピカピカのツルツルになります。仕上がりは断然こちらの方がきれいです。でも、硬度という点ではオールグリップの方が硬い。でも、その後の補修面を考えるとさてどっちが良いのか?ウレタンももちろん紫外線には強い。

オールグリップはアメリカからマリン用として使われています。しかし、本質を知らずに妄信するのはどうかと思います。表面がハルのように平らな広い面で見ますと、仕上げの違いは良くわかる。日本人のように繊細な者にとって、仕上げの美しさは重要です。必ずしも、オールグリップの方が良いとは限らないと思います。

ヨットは欧米の文化ですから、優れている。でも、塗装とか、他の陸上分野でも使われる技術は日本も優れています。ですから、どちらにしても、妄信はいけません。正当な評価が必要です。ですから、修理をする場合でも、ヨットに無関係の方、陸上の仕事をされている技術を持っている方にお願いする事もあります。

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