第九十五話 高機能

最近出合った謀大手のコンピューターメーカーの方、現在の担当は携帯電話の開発だそうですが、その方の話によりますと、最近の開発はユーザーが必要とするかどうかというより、競争の為の開発という感が強いそうです。つまり、そこまでユーザーは求めていない。でも、差別化をしなければならないし、勝たねばならない。そして、そういう高機能というのも、ユーザーは使うかもしれない、便利かもしれないと勝手に想像してくれる。でも、実際は殆ど使わない。これが実情だそうです。

こういう世界はどこにでもあるもので、使うか使わないかというより、購入者が勝手に想像してくれて、あれば便利そうと思わせる。これがもっと進むと、多分、必要な機能だけを選んで付けるというカスタム的な物が出るでしょう。パソコンなんかは、既にそうなっていますね。そうなってきますと、何でもかんでもついているなんてのは、余計覚えるのが大変だし、使うのも大変だしという事になる。

ヨットも同様で、昔はシンプルで何もついてなかった。オプションでした。でも、今はジブファーラーが標準になり、冷蔵庫が標準になり、温水もついてくる。逆に、シンプルで何も無いヨット、でも船体、基本性能が高く、それに必要な物だけ設置するという方が良いのではないかとさえ思います。ところが、こうなりますとちょっと面倒な事になりますね。同じモデルなのに、これは冷蔵庫付き、次は無し、これは温水付き、これは無し、等々、ひとつひとつ違いますと、特に量産の場合は面倒かもしれません。量産の場合はできるだけ統一した方が作り易いと思います。

それで、現在でも、量産では無い、まあ年間100艇以下ぐらいの造船所では、たくさんのオプション設定をしている造船所があります。日本では、何も無くてオプションばかりとなりますと、嫌う方もおられますが、これも付いてないの?という感じですが、自分の必要とする物だけを設置できるという面では本当は良いのかもしれません。セール無しというのもあります。それなら、自分の気に入ったメーカーの気に入ったセールをつける事ができる。ファーラーもそうです。何も造船所から買わねばならないわけでは無い。まあ、冷蔵庫や温水等は造船所で設置した方が良いでしょうが。

これらは、自分で選ぶという自由があると同時に、自分で選ばなければならないという面倒くささもあります。そこで、結構、ある程度のオプションを標準化して販売する事が多いです。実は当社扱いのヨット、結構オプションが多いものばかりです。セールが無い、コンパスさえ無いのもあります。
以前は、エンジンさえオプションというのもありました。これでは日本で販売しにくいので、最低限のは標準化したりします。

まあ、どっちが良いかは解りませんが、でも、いろんな事が解ってきますと、あれは要る、これは不要、不要な物があって使わないより、使わないなら最初から無い方が良い。そういう風になっていくと思います。多分、一部でしょうが。でも、それが解っているからこそ、もっと面白くなると思いますね。多分、この世界にも格差が出てきて、標準で全て揃うというのと、自分で揃えるのと差が出てくるのではないか?そんな気がしないでもありません。いくら高機能でも、使わないなら必要ない。しかし、無いと何となく劣っているように思えてしまう心理、さて、どっちが面白いでしょうか?

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