第十三話 日本人のレジャー

一般的な人気は温泉、食事、そしてショッピング、そういう話を聞いた事があります。そう言われればそうかなと思います。私自身にも心当たりがありますね。温泉でも行って、のんびりしたいとか思う事があります。風呂の後は、一杯飲んで・・・・。

そう考えると、ヨットの使い方もそういう流れで考える事があります。例えば、ヨットでクルージング、そこに温泉があって、ご馳走食べて、そして回りの散策をしながらショッピング。手段がヨットになります。全員がそうとは言いませんが、多くの方々の基本的使い方として浮かんでくるような気がします。これが日本人のレジャーだとしたら、その他の使い方は何か? という事になりますが、あえて定義するなら、やっぱりスポーツと言う事になるのではないでしょうか?

おっと、もうひとつは旅の途中として寄る場合もあります。そこに何かがあるからという理由でも無く、旅の途中です。旅はレジャーかもしれませんが、前記したレジャーとは異質です。一種の冒険性を伴う事が多い。知らない地に行く。それが冒険性をかもし出す。

これらふたつがクルージングとしての大方の使い方になると思います。そして、これら以外はと言いますと、スポーツ性がある乗り方になると思います。スポーツはその走り、乗り方にあり、どうやって乗るかが重要になる。

どこかに行くわけでもなく、日帰りとして、みんなでお弁当持ってというピクニック的な乗り方も、レジャー的使い方になる。その同じ航程であっても、いかにセーリングするかになりますと、スポーツになる。どっちが良いわけでもありませんが、レジャーは楽しい、スポーツは面白い、そういうわけ方はできるような気がします。

レジャーとして出て、天候など都合の良い事ばかりでは無く、都合の悪い事もありますが、そういう時は楽しさが減じられます。しかし、スポーツとして出れば、面白いかもしれません。つまりやる事はあまり大きく違わないのですが、受け止め方は全く違ってくる。レジャーに緊張感は不要ですが、スポーツにはこれが求められる。

という事で、同じ遊びに見えるものにも、いろいろな違いがあり、レジャー、旅、スポーツ、これらの使い分けは意識してやる必要があると思います。その方が良いと思います。レジャーは楽しく、そこに冒険性や緊張感は必要無い。ゆったり、のんびり、楽しさが必要です。時化た中では、レジャーもへったくれも無い。台無しになりかねません。

旅として出たなら、最初から、いろんな状況がある事は覚悟していますから、時化てきて、その対応はしますが、それを悔やむ事は無い。スポーツにしても、突然の雨でも、悔やむ事は無い。日本のヨットの乗り方はレジャー的な使い方が最も多いと思います。しかし、しょっちゅう温泉に浸かって、ご馳走食べたいとは思わないので、たまで良い。それで、たまにレジャーに出かける人が、いつかは旅に移行したりする事になります。

スポーツはレースというジャンルに固定観念が働くせいか、レースに興味が無い人は、あまりスポーツとして考える事が無い。でも、レースしないスポーツがあっても良いわけで、それが純粋にセーリングをする事かと思います。

レースはたとえ自分が気持ちの良いセーリングをしていたとしても不十分で、勝つ事が目的ですから、その為に方向転換したり、いろんな戦術上、いろんな事をする。今最高の走りで気分が良いからと言って、あらぬ方向へ突っ走ってはいかんわけです。クルーも必要だし、本気でトップを取ろうとすると、並大抵の事では無い。でも、だからこそ好きな方にとっては面白い事になる。

スポーツとしてのセーリングは、その競争を排除した、いかにセーリングして、いろんな気分を味わうかというセーリングです。競争の無いスポーツです。温泉も無い、ご馳走も無い、ショッピングも無い、ただセーリングの気分と自分の向上を楽しむスポーツです。

レジャーももちろん良いに決まってます。でも、そこから違う何かに移行しようと思う時、是非、スポーツセーリングの事も考えて頂ければと思います。このメリットは、レースのように相手を必要としない。気軽に自分の海域でできる。短時間でもできる。セーリングならではのフィーリングを味わえる。上手にもなる。目で見える温泉や、レースでの賞や、旅での足跡は何もありません。しかし、自分だけにしか解らないかもしれませんが、確実に感じられるものがある。目で確認できないので、他人には解らないでしょうが、それでもやってみる価値が充分にあると思います。時に、目で見える物以上の何かを感じる事もあると思います。

何にも無いけど、気分が良い。それって、結構良いと思うのですが?スポーツセーリングをするぞ、と決めても、別に他の事をしないわけではないので、時に応じて、レースする人も居るでしょう、レジャーしたりもするでしょう。ただ、スポーツも意識して、やるとその面白さにはまるかもしれません。是非、そうなってほしいですが。要は、そういうスポーツもひとつのジャンルとして、多くの方々の意識に上らせたいわけです。他のレジャー、旅、レースと同じレベルにしたいわけです。何故なら、面白い、別な面白さがあるからです。これが一般化すれば、後はやりたい人が自由にやれば良いわけです。そうなるまでは、叫んでいこうと思います。レジャーと併用だってできますね。

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