第四十一話 計器

スピードを気にしないクルージング艇といえども、セーリング自体を楽しもうとなりますと、気になるのがスピードでしょう。別に他艇より速くと思う必要は無いと思いますが、ヨットを走らせていて、スピード計の数値があがると気持ちが、何か面白くなる。スピードが出るという事は、より抵抗が少なくなる、よりスムースになる、そういう意味にもなりますから、セール操作をしていても、その目安にする事ができます。シートを引いたらスピードが上がった、或いは下がった、正解が一目でわかるので、上達も早くなると思います。人の感覚は鋭いのですが、相対的であてにならない事もあります。

これに風向風速計を設置しておきますと、真の風、みかけの風が解りますので、スピード計と合わせて、セーリングにはおおいに役に立つと思います。真の風に対して、みかけの風がどれぐらい違っているか、それに、マストトップの風見を見上げなくても良いようになるので、首が疲れない。

これらの計器類はレーサーには必携でしたが、クルージング艇にはあまり使われておりませんでした。しかし、セーリングを遊ぶには、あったほうがもちろん遊びが広がると思います。ただ、注意すべきは、スピード計には大きな穴を船底に開けますので、センサーの抜き差しには注意が必要です。昔ですが、スピード計のセンサーを入れた時に、きちんと締めていなかったせいで、波が高い時に船底が叩かれ、そのひょうしにセンサーがポンと抜け、海水がどんどん入った事がある艇がありました。誰もそれが抜けると思ってもいなかったようで、浸水箇所を探すのに少し手間がかかったようです。無事でしたが。こういう事があると、怖くなって、設置をためらう事になりますが、きちんとねじ込んでおけばこういう事はありません。

スピードを上げるのが命とは言いませんし、その為に無理してハッスルする必要も無い。しかし、セーリングを遊ぶには、何か目安があった方が励みにもなりますし、いろんな意味で指標にもなるので、お勧めではあります。面白味が違ってくると思います。

スピードだけならGPSを使うという手もありますが、こちらは対地、移動距離からスピードを計算して出します。潮の流れというのがありますので、それに関係無く、実際の移動によるものですが、スピード計は対水ですので、潮の流れが影響します。真の風と見かけの風は、風向風速計とスピード計の連動により計算されますので、できればGPSより、こっちの方が良いかなとは思いますが。
両方あるともっと良いですが。

GPSは進行方向も示します。実際に船が動いている方向です。船首が向いている方角とは違います。潮に流されて斜めに移動していると、船首の方向と実際の走っている方向は違う事になります。つまり、ヨットのコンパスが指す方向と走っている方向が違う。その差分だけヨットは流されている事になります。

というわけで、風向風速計とスピード計、これにデプス計も設置して、おまけに携帯でも良いのでGPSがあると鬼に金棒かなと思います。これも面白さの演出であります。セーリングを楽しむなら、冷蔵庫より、温水より、計器が面白い。

最近では、たまにクルージング艇でもこういう計器を設置している艇を見かける事があります。ラット仕様でステアリングのすぐ前のピデスタルガードというステンレスのパイプに計器をずらりと並べて設置する事が多いようです。でも、オートパイロットは兎も角、風向風速計とかスピード計というのはキャビン入り口の横とか、上とか、みんなが乗った時にみんなが見える位置の方が楽しめると思いますし、実際の操作時でも見やすいと思いますね。前を見ながら、視線さえちょいと変えれば計器が見える。操船時は手元の方が見にくいと思うのですが。遠くて見えない方は別ですが。

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