第八十四話 頑丈さと安定性

どんな使い方であろうが、セーリングだろうが、旅であろうが、船体が強固であり、高い安定性というのは実に有難い要素であります。時化た時には出無いと言いましても、途中から時化てくる事もあるわけで、そういう時はヨットに大きく頼る事になります。波を受ける度に、船体がねじれてギーギー音をたてるのは嫌ですし、気持ち悪い。バラバラになる事は無いにしても、どうも落ち着きません。それが、波に叩かれようが、揉まれようが、しっかりした船体は頼もしいし、安心感が違います。特に長旅には、この安心感があるかないかでは雲泥の差です。

それに安定性です。バラスト比が高いだけでは無く、船体自体の設計が低い重心を持っていますと、強風には全く動作が違ってきます。これも安心感に繋がりますし、セーリングにとってはより面白い事になっていきます。

しかしながら、この二つを実現しようとなりますと、簡単ではありません。否、性能がどうでも良いなら簡単でしょうが、それでは駄目ですから、重量があまり重くなく、かつ強い船体を造る必要がありますし、おまけに重いバラストを設置する。トータルで考えなければなりません。ここに造船所の全てがあるような気がします。デザインはデザイナーが描きます。どんな風に造るか、工法とか素材とかは造船所の仕事です。

最近では、バラスト重量の記載が無いヨットがたくさん出てきました。調べてみますと、30%以下のバラスト比も少なくありません。おまけに、水線から上は大きなボリュームとなってきています。想像するに、あまり安定性が高いとは思えない。それに、船体強度を示す数値的なデータは無いので何とも断言はできませんが、それでも、バルクヘッドの設置の仕方、ストリンガーの設置の仕方等を見れば、あまり期待はできないような?それでも、通常のクルージングには使える。実際、使っています。多分、感が違うのでしょうね。それと古くなっていくに従っての耐久性も違うと思います。しかしながら、価格的に安く供給しているので、そのメリットはある。

感を求めますと、キリが無いかもしれません。感は相対的なものでもありますし。それに求めれば、求めるほどに価格も高くなります。どこかで妥協せねばなりません。この感を求める姿勢は、贅沢な求め方になるのかもしれません。

でも、良いヨットに乗りますと、確かに違います。この感が違います。気分も良くなる。ひとつの方法としては、サイズダウンして、良いヨットを求めるという方法もあります。さて、どっちが良いか?
結局、ヨットの違いは、この感の違い。サイズが違えば、感じ方も違う。頑丈さが違えば、安定性が違えば、性能が違えば、この感が違ってきます。みんな使えるヨットです。ただ、この感じ方が違う。車も同じですね。でも、車と違うのは、ヨットはあくまで遊び、遊びに感はとっても重要かと思います。ですから、自分の感性を大事にするのが良いかと思います。それはセーリングに限らず、クルージングでも同じです。いろんな装備がある無しも重要でしょうが、無ければ設置する事は可能です。しかし、この感を変えようと思うと、ヨットそのものを変えなければなりませんから。ヨットは感性で乗る。セーリングの感性、クルージングの感性、それをどこまで満足させられるかになると思いますね。

その感性の中でも、この船体の頑丈さと安定性は、特に重要な要素になるのではないかと思います。もちろん、他にも要素はたくさんあります。見た目の美しさも大事ですし、船型も、性能もありますが、このふたつは結構大きく感性を左右するのではないかと思います。ただ、見えない要素ですから、これが難しいのではありますが。でも、見慣れてきますと、結構見て解るものです。
見るからに重そうだ、軽そうだ、頑丈そうだとか言うのが解ってくる。どうも比重でも違うような、そんな感じがしますね。

次へ       目次へ