第四話 キャビン遊び

以前、アメリカでの事ですが、彼らはビールの小瓶1本で、延々と話ができる事に少々驚いたものです。会話を楽しんでいるのでしょう。ところが、日本ではそうは行きません。ビールが何本も要ります。それはそれで良いのですが、基本的にキャビンライフはあまり得意では無いように思えます。人が集まると、たくさんの料理や飲み物が必需になります。そうしないと間が保てないのかもしれません。ですから、人が集まるとカラオケなんかが役に立つ。何かしないでは間が持たない。

それはヨットのキャビンでも同じで、単純に会話を楽しむ事がなかなか難しい。ですから、キャビンで遊ぶという事が難しくなります。カラオケやテレビなんかが間を持たせる。まあ、ヨットにカラオケを積んでいる人は少ないですが。

マリーナの桟橋に係留したまま、キャビンで過ごす人は欧米ではたくさん見かけます。また、ちょっと出て、どこかにアンカーを打って、そこで同じようにキャビンライフを楽しんでいる。そこにいきますと、日本ではなかなかそういう事をしている人は少ないようです。それで、1日を過ごせるか?

キャビン遊びを楽しむコツは、キャビンライフ以外を遊ぶところにある。何かをして、最後にキャビンで寛ぐとかです。そうする事によって、キャビンを活かす事ができる。キャビンばかりでは、間が持たない。という事は、欧米からやってきた、大きなキャビンは本当にそこまで必要か?とも考える事ができます。

キャビン以外と言いますと、もちろんセーリングです。ちょいとセーリングを楽しんできて、そしてキャビンを楽しむ。コクピットでも良い。セーリングという動とキャビンという静とのギャップが変化を生み、楽しみやすくなる。欧米人はヨットに住む事さえできる。毎週末をヨットのキャビンで過ごす事ができる。キャビンライフのみでも、楽しめる人種のようです。でも、日本人はちょっと違います。それだけでは、なかなか充実感が湧かない。遊んだ気がしない。

遠くへ何日もクルージングにでかけるなら、キャビンはほしい。クルージングが動ですから。着いた先々で、キャビンは活きる。でも、近場ならキャビンはそれ程重要では無いのではないかと思います。キャビンをでかくすると、セーリング能力は落ちる。動かすにも、ちょっと労力と気力が要る。キャビンをあまり重要視しない事で、セーリング性能と気楽さを手に入れる。スタイルによっては、ここは考える余地がおおいにあると思います。

遠出以外は、2時間ぐらいのセーリングを思う存分楽しんで、それからキャビンやコクピットで寛ぐ。それには、セーリング性能と気楽さを手に入れたいと思います。キャビンに住むわけでも無いし、そこで寛ぐにも、2時間ぐらい?ならば、大きなキャビンを手に入れて、逆に失うものより、多少キャビンを犠牲にしてでも、手に入れるものの方が大きいような気がします。ですから、本当はデイセーラーは日本人にピッタリなのではないかと思う次第です。でも、今は欧米のでかいキャビンに影響を受けていますから、その価値観は徐々にしか変わらないだろうと思いますが、単純に見ても、大きなキャビンは使いきれていないヨットが多いので、明白だろうと思います。これがデイセーラーになってきますと、きっと稼動率はもっと高くなるのではないか?使いこなしょ易い、日本人に合うコンセプトだと、私は思っているのですが?デイセーラーは日本でこそ流行る?むしろ、日本から世界に発したいコンセプトであったと思うのですが。きっと、日本の成熟度が高ければ、そうなる可能性は充分にあったような?

セーリングの後の、ちょっとした寛ぎには、たいしたものは無くても楽しむ事ができると思います。コーヒー一杯でもです。それはセーリング無しでのコーヒーとは全く違う。ですから、気楽に何度もできます。毎回、毎回、ご馳走を並べるのは容易ではありませんから、滅多にしなくなるのは当然であります。日本人には、デイセーリングを楽しむか、遠くへのクルージングか?遠くへのクルージングは一種のあこがれでもありますが、その前に、デイセーリングを思いっきり楽しんでみませんか?ここにも、面白さ、楽しさが充満しています。何しろ、気楽にしょっちゅうやれる。それは何よりではないでしょうか?決して、遠くへの旅より劣るとは思えません。むしろ、気楽さは有難い。

欧米人は人種の違い、宗教の違いなど、価値観がかなり異なる場合があり、違うのが当たり前という考え方もあります。そうしますと、会話でもって理解する。しかし、日本人は価値観が近い。大きな違いは無いわけで、そうしますと会話の重要度が違うのかもしれません。沈黙は金という言葉がありますが、欧米では会話しないでは居られない。そういうコミュニケーショが重要なのだろうと思います。そうしますと、当然ながらスタイルは違うわけです。キャビンの使い方も違う。

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