第五十二話 レースについて

ヨットレースというのはお金がかかります。それが本格的なレースという事になりますと、尚更の事。それが、どういうわけか、個人オーナーの運営によって行われています。考えてみれば、とてもすごい事であります。

レースはハンディキャップが計測されますが、だからと言って、全て平等かと言いますと、そうは行きません。もし、平等なら、クルージング艇とレーサーが走って、クルージング艇が勝つ可能性もあるわけですが、実際には有り得ない。そして、常に新しいレーサーが生み出されていき、新しい方が勝つというのが相場です。

そうなりますと、オーナーが導入した最新ヨットで勝てるのは数年以内かもしれません。そして勝ち続けるには買い替えなければならないかもしれません。それはそれで良いのでしょうが、レースですから、常に進化を求められます。でも、その運営を個人に頼っているところに問題があります。資金の問題になります。例えば、車のように、自動車会社が参戦するF1レースとかありますが、莫大な資金が必要になりますが、本来、ヨットレースも同じかもしれません。

数年で勝てなくなるヨット、これが問題になって、レース後でもクルージング艇として使えるようにする。という考え方もありました。しかしながら、そういうヨットをクルージング艇として買う人は少ないのが現状ではないかと思います。それで、せいぜい、ローカルのレースに使われていく。

個人で行うレースでは、ローカルレース程度がせいぜいではないか、そうでないと、莫大な費用を支払えるかどうかが勝負の分かれ目になってしまいます。もちろん、それだけではありませんが。
莫大な費用をかけて造られたヨット、それが第一線から離れた時、二束三文になってしまう。これを実行できる人は多くは無いでしょう。

こういう事情は欧米も同じであります。そこで、欧米ではこれらに対抗してか、みんな同じヨットを使うワンデザインのレースが増えてきています。昔のIORのレーサーも、それなら生き残れるし、オーナーへの負担も軽減される。という事は、より多くの方々が楽しむ事ができるという事になります。
お祭りレースは誰でも遊べますが、ちょっと本格的になった時、それでも、ワンデザインならもっと楽しめる。

ところが、問題は、欧米には同じモデルのヨットがたくさんあっても、日本には少ないという事です。
近くに2,3艇あっても、それだけでは寂しい。でも、マーケットの規模上、なかなか難しい。これらが、日本でのヨットレースの難しいところかもしれません。

レースに出ますと、勝てれば万歳ですが、負けますと、セールが悪いだの、ヨットがもっと性能が良い奴をとついつい考えてしまいます。そのイラつきが、助長していきます。もっともっととなるわけです。そのもっとに個人で応えられるのは、そう多くはありません。

そういう面では、ローカルレース、お祭りレースはまだ良い。ルールも厳密ではありませんが、まだ穏やかであります。でも、一番良いのはワンデザイン。それで、たくさん集めるのは難しいけれども、2〜3艇でも、やろうと思えばやれます。月に1回とか、オーナー同士で決めて、自主レースを試みるのもアクセントのひとつ。終わったら、みんなでパ〜っと宴会しても良い。月一の楽しみになるかもしれません。

まあ、ひとにはいろんな考え方がありますので、決め付けはいけませんが、個人的には、この程度で充分なのです。ワンデザインなら、負けてくやしかったら、腕を磨けば、次の可能性はあります。
誰にでも可能性はある。可能性が制限されますと、あまり面白いとは感じられなくなります。

そこで、お奨めは、日常のデイセーリング、と、こうなるわけです。そして、理想は月一のワンデザインレースとの組み合わせであります。確かに、2,3艇では寂しいですが、5〜6艇ぐらい集まりますと、これはぐっと盛り上がる。アレリオン28を最低5艇、近所に入れて、月一のレースをする。そうできると、楽しいだろうなと思います。理想です。アメリカのサンフランシスコにアレリオン28のクラブがあります。現在、メンバーは22艇。これだけ揃って走ると面白いでしょね。他にもあちこち、続々とこういうクラブがでてきています。羨ましい。

そういう事ができますと、日常のセーリングにおいても、気合が入る。のんびりも良いし、気合をいれて走るのも良い。アクセントになります。相乗効果がでてくると思いますね。欧米では数も多いので、F1的な本格レースの他、いろんな工夫が見られます。日本はマーケットが小さいうえに、バラバラになりがち。でも、面白さの工夫としては、こういうワンデザインというのは、良いと思います。
ワンデザインなら、クルージング艇でも、何でもレースができる。

でも、一方で、こういうレースは腕の差が明白になります。そこを嫌う人もおられる。難しいですね〜、人というのは。でも、ヨットレースに勝ったから、負けたからと言って、たいした事では無いんですから、お遊びですから、気楽に、気楽に。レースでは無く、運動会みたいなもんです。

では、いつかは、アレリオンクラブの設立を夢みて、皆さんにハッピーセーリングを!

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