第七十一話 何故動かない?

日本でのヨット遊びは、極論かもしれませんが、セーリングするしか無いのではないでしょうか?マリーナに居ても楽しくは無いし、動かしている人達を見ますと、やはりみなさんデイセーリングが殆どです。或いは、旅を主体に、日頃はメインテナンスをして、一旦出ると、長期間帰ってこない人達。少ないですが。これら二種類以外の多くは、じっとしている。マリーナに来ない方も実に多い事に驚かされます。ヨットとは一体何でしょうか?ほんの一部の方々だけの特権のようです。

一万人に一人がヨットを所有し、その中で、2割ぐらいでしょうか、比較的よく乗られるのは。すると、実際に有意義に遊んである方は、5万人にひとりぐらいの割合になります。小さな市の人口にひとりぐらいのもんです。これだけ海がありながら。

まあ、それでも良い。ヨット遊びは特権です。広い海を少人数が広々と遊ぶ事ができる。シーズンの最盛期の日曜の上天気の時でも、悠々と遊ぶ事ができます。混雑してきたら、こうは行きません。悪い事ばかりじゃないですね。テニスでも、野球でもグラウンドを借りようと思えば、確保するのが大変です。海は予約も要らないし、費用も要らない。

そこで、遊びの面白さを得た人だけが、おおいに遊べる。こんな良い事はありません。そういう方にとっては。販売業者としては、乗って頂いた方が良いのですが、でも乗らないから壊れないし、壊れないならクレームも来ないし、悪い事ばかりじゃない。でも、やっぱり乗ってほしいですね。

年々、我々は年を取り、体力も衰える。普段から乗りなれないと、乗るのが億劫になってしまう。普段から動かす習慣が無いと、なかなか動かせない。気持ちがそのレベルについていきません。これはエネルギーの衰えです。何も、気持ちまで衰えさせる事は無いのに。実際、年に数回乗るなんて事は、かなり難しい。普段から動かしていないと、できません。或いは、人頼りになる。

そこで、今年は、平均月一を目指して、そして習慣化するようにできればと思います。すると、動かすエネルギーが湧いてくる。月一ができれば、月1.5ぐらいはすぐにできる。習慣化すれば、ハードルは下がり、動かす事に躊躇が無くなる。そうしたらもう、こっちのものです。あるレベルにまで習慣化しないと、ヨットは乗れなくなるのではないかと思います。

そこで、習慣的に乗れるスタイルというのを考えます。相棒が居るなら、一緒に考えても良い。居無いならシングルを考える。習慣的に乗れる状態を想定して、兎に角デイセーリングをします。3時間前後。月に何回乗れるかも考える。そういう設定をしてみて、まずはやってみる。最初はちょっとエネルギーが要るかもしれませんが、2回目、3回目になりますと、なんてことは無くなる。そして、面白いセーリングを考えます。これまでも散々書いてきましたが、面白いセーリングにする事が重要です。

この効果は、セーリングが習慣化しますと、いろんな面において波及効果が出てきます。自分のヨットを手入れしたくなるし、工夫もしたくなる。ゲストもたまには呼びたくなる。そうしますと、いろんな面で楽しくも、面白くもなる。

いきなりシングルは難しいかもしれません。それなら、最初の数回だけでも、誰かを誘って、習慣化を狙って、一緒に乗る。相手が気に入れば、ずっと一緒に乗っても良いし、そのうち相手が来れない事もありますから、そういう時の為にシングルをも考える。

習慣化するデイセーリングの中で、重要な事は、いかに面白いセーリングを演出できるかにかかっていると思います。どこかに上陸して飯食うのも良いが、それが主体では面白さが不足しますから、面白いセーリングとは何か?を考えて、是非、面白さを、最初は意識的に始める。そこに面白さを見出すと、後は、自動的に前進していきますね。ところが、多くの場合、ここに至らない。至らないので、特別なイベントを考える。イベントは習慣化はしない。だから、普段は乗らない。普段乗らないと、そのうちイベントさえも無くなってしまいます。

是非、気軽なデイセーリングを始めていただきたいと思います。自分のヨットは純クルージング艇であっても、セーリングはできますから、風を見て、セールを見て、スポーツしていただきたい。多少、最初は無理してでも、意識してスポーツして頂きたい。そこにこそセーリングの面白さがあります。それを習慣化しさえすれば、ヨットは抜群に面白さを創造します。もっと効率よく走るにはどうしたら?と疑問を持ち出したら、もうOK.それをひとりでやろうとするのは、かなりのエネルギーが必要かもしれません。腕ではありません。気持ちのエネルギーです。でも、最初は二人で始めて、エネルギーを生み出し、徐々にそういうレベルに持っていければ、ライフワークとなる。

別に遠くに行かなくても良いじゃないですか。近くで、何度も、気軽に乗れるエネルギーがあって、それを何度もやり続けると、違う何かが生まれてくる。それはカッコイイ何かに違い無い。ヨットに乗れる、ヨットに詳しい、ヨットが趣味、そんな人はそう多くは無い。そう多くない事ができる自分はカッコイイのです。世間から見ても、ヨットのできる人はカッコイイのです。持ってるだけじゃあ、自信持ってそうは言えません。その自信が魅力の一部にもなろうというもんです。ただの年寄りになってはいけませんね。カッコイイ爺さんになりましょう。ヨットを、セーリングを語れる爺さんになりましょう。それはエネルギーです。カッコ良いエネルギーであります。セーリングは孤独です。でも、その孤独を乗り越えないと、カッコ良くはならない。カッコ良い事は生きるエネルギーでもあります。

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