第十一話 経験を買う

お金を使うのは、便利や快適を手に入れるという事もありますが、ヨットなんかですと、そのヨットでできる経験を買うという事になろうかと思います。下の写真は、最新のモデル、ブレンタ氏のB42です。Yachting World 誌によれば、B38があって、何故B42?たった4フィートの差に、1、000万
以上の価格差があります。そんな必要あるの?てな具合ですが、でもこのヨット、美しいですね。

  価格を見たら、こんなヨットは買えません。
  ほんの一部の大金持ちのおもちゃか?てな
  感じですが、まあ、確かに、その通りなので
  すが、これから繰り出されるセーリングの感
  じとは、どんなでしょうか?

  ヨットを買うというのは、そのヨット本体を買う
  わけですが、それだけでは無く、このヨットの
  美しさ、セールフィーリング、経験の全てを手
  に入れる事になります。

  人生に重要な事は、この経験ではないでしょ
  うか?フィーリングと言っても良いと思いま
  す。いくらお金を積んでもできない経験もあ
  る。考えようによっては、お金で買える経験
  なら、それが素晴らしい経験なら、安い?
  もんです。
  いえいえ、決して安くはありませんが、経験
  できるのと、経験しないで終わるのとは、大
  きな違いです。それをどう捉えるかは、人そ
  れぞれになりますが。

  物はいつかは無くなるもの。いつかは朽ち
  果ててしまいます。人間も同様です。いくらお   金持ちでも、それは同様です。いつかは全てを手放なさなければなりません。どんなに苦労して得た物であっても、いつかは、さようならです。でも、経験はちょっと違うような気がします。確かに、死ねば同じかもしれませんが、生きてきた間に、どれだけの経験をしてきたか、その経験の豊富さ、素晴らしさは、何物にも代えがたいのかもしれません。物は手放して、誰かに渡っていきますが、経験は自分だけの、自分独自のもの、生きた証みたいなもの、他人には解らないかもしれませんが、80年という歴史の証明みたいなものです。

ですから、こんな高価なヨットであっても、その経験をできる人は幸福であります。そこにお金の素晴らしさがある。誰でもできる事ではありませんね。ですから、できる人は、その余裕がある方は
お金を経験に代えて、味わう事によって、より多くの経験を味わう事ができます。

高価なヨットに限らず、ヨットをやれる、セーリングを味わえるという事は、それだけで幸福なのではないでしょうか?世界の殆どの方々はそういう経験はできません。80年の期間に、どれだけの経験をしてきたか?とっても大事な事ではないでしょうか?所有するだけでも、それは経験になります。でも、それだけではもったいない。ヨットがもったい無いのではありません。自分の人生がもったいない。せっかくの経験のチャンスを目の前にしながら、その経験をしないのがもったいないです。

乗れば、いろいろあります。辛さもあるでしょうが、何も経験しないよりは、ずっとましなのでは無いでしょうか?あれがほしい、あのヨットで、こんな経験をしたい。それがどんな経験であれ、きっと最後には、良かったと思う。後悔するのは、経験していない時ではないかと思います。したい経験、できる経験なら、何でもやっておく。お金を経験を買う為に使う。便利と快適以外の経験という観点で
考えても良いのではないでしょうか?できない経験は仕方ありませんね。できない事を考えても仕方無い。でも、できる経験なら、やっておいた方が良いような気がします。一生の間に、どんな経験ができるか?それが人生なのかもしれません。

考えてみれば、飯を食うのも人生だし、電車に乗る時だって人生です。毎日、毎日、瞬間、瞬間が人生の一部、と思えば疎かにはできませんが、経験に上下は無いのでしょうが、でも、やはりセーリングなんていう経験は、今のこの時代でも、非常に特殊でありますね。そんな経験を持つというのは、やはり幸福でしょう。そう思えば、スプレーを浴びるのも、夜の寒いセーリングでも、それがあるから、快走の心地良さも、幸福なのかもしれません。経験を買うと考えてみてはいかがでしょうか?ヨットを買って、退屈感を買う?快走を買う?いろいろ味わえます。

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