第四十二話 美しさ

21世紀、最大のテーマは美しさ。?まあ、そういう事にしておきましょう。美しい女性は大好きだし、イケメン俳優もキャーキャーです。そんな表面的な事を含めて、もっと深い意味での美しさを求める。

絵画の世界。現代美術と称して、抽象画が流行ったり。実は全く理解できませんが、これとて、一時の流行なのではないか?という気がします。自分だけがその美しさを理解できないのかもしれませんが?音楽の世界に同じような抽象的な音楽、ジャズならフリーというのがあります。過去の規定を打ち破るような方式での、新しい表現方法なのですが、どちらにも共通したものがあると思います。しかし、これは一時的な現象ではないか?美しさがあるのか?解りませんが。美しさが無ければ、それは一時的でしかないような気がします。

やはり、多くの方々が理解できて、感動できる美しさというものが求められるのではないか?美しいデザイン、色使い、日本料理なんかは、味だけに留まらず、見た目の美しさも演出します。しかし料理はうまくなくてはならない。どんなに見た目が美しくても、まずいものはいけません。それでうまいというのも美しさのひとつです。美味とも言います。

ヨットは、見た目の美しさは非常に大切です。当然必要な美であります。では、料理のうまいにあたる美しさとは何か?頑丈であればそれで良いわけじゃない、速ければそれで良いわけじゃない。大きければ良いわけじゃない。そこが問題なのです。美しさが解らないから、頑丈にさえすれば良いとか、スピードさえ求めれば良いとか、こういう時はこう、ああいう時はこうという対応をしてしまう。

美しい海に、美しいヨットが走る。それだけで感動ものですが、そのヨットに乗っている人にとっての美しさは、言葉を変えればかっこ良さとも言えるかもしれません。ティラーが問題じゃない、ラットが問題じゃない、大きさが問題じゃない。乗って、セーリングしてどれだけ気持ち良くなるか?その自分のヨットを信頼できるか?美しさとは、信頼できて、自由自在に乗れる事。無駄な動きは必要なく、最小限の動きで、滑らかに走る。そして、そこから、何とも言えないグッドフィーリングが得られる事。

何でもいっぱい装備されているのが美しいわけでは無い。もちろん、必要な装備はあります。しかし、必要最低限でいいし、それらを十分に知り、使いこなし、波と風とヨットと自分が調和する事。
言うのは簡単ですが。そこに至ろうとする事。様になる事。しっくり感がある事。馴染んでいる事、人馬一体ならぬ、人とヨットが一体になる事。自然である事。気持ちが良い事。滑らかな事。無理が無い事。それらはみんな美しい。

セーリングを遊ぶというのは、そういう事を目指して、近づいていく事かもしれません。そこに美しさを感じたら、セーリングする事そのもので喜びを感じる事ができる。大袈裟に言えば、セーリングにおける美の追求なのであります。おいしいものを食べたいという美食家と同じであります。そこには、味わったものだけに解る美がある。感じたものだけに解る美があります。

ヨットが、どこかに行く目的であったり、レースに勝つ為のものであったり、それだけなら、美は必要無いかもしれません。でも、ヨットがセーリングを主目的とするなら、そこには美が求められる。それはセーリングから得られる、セーリングでしか味わえない、美であります。

美は各人各様でもあります。ですから、自分個人の美を求める。自分が思うかっこいいセーリングであります。そしてそこから、何とも言えない感覚が得られたら、そこが完璧な世界ではないでしょうか?しかし、この完璧さは、いつもは続かない。だからこそ、価値がある。自分の美を求めた人に、たまに訪れる完璧な美を感じれば、もはや他には何も必要無いと思われます。

という事で、今回はちょっと芸術的に迫ってみました。でも、実際、ほんのたまにですが、何とも言えないような、表現しようの無い気持ち良さが訪れる事があります。そんな時は実に有難さを感じますね。是非、多くの人に、セーリングの美を味わってもらいたい。そう思います。何ノットのスピードが出たという事も大事です。しかし、その先にはもっと違う何かがある。それを美と言ってみました。これは多分、誰よりも速くとレースしている時、或いは、のんびり旅をしている時、そういう時は意識がセーリング自体にはありませんので、この美は、セーリング自体にあるのかと思います。

美しさこそが、我々の最終目標です。セーリングの目的です。それはしょっちゅう乗って、スピードを目指したり、腕の向上を目指したり、いろんな事に専念して遊んでいるうちに、ふいとやってくる。
それは美しいフィーリングなのです。実は、うまい下手はあまり関係無いような気がします。専念して遊んでいるのが重要なきっかけになるような気がしますね。

それには、デイセーラーが最も適していると思う次第です。いつもながらの結論であります。でも、それがデイセーラーを主にしている当社のコンセプトでもあります。

次へ       目次へ