第四十六話 キャビン考

キャビンが快適であればある程、セーリング性能が落ちる。それは仕方が無い。でも、キャビンを快適に楽しめるなら、それも悪くは無い。しかし、キャビンは欧米人が考え出した欧米人スタイル。
ビーチで、プールサイドで、来る日も来る日も読書している連中とは、土台人種が異なる。あんな事は日本人にはなかなかできない。多分、時間感覚が異なるのかもしれません。

キャビンの中のあらゆる空間がうまく利用されています。狭い空間ですから、無駄の無いように、あらゆる隙間は物入れだったりします。生活をそこでする為に、効率良いデザインがなされる。
そこに滞在したり、長期間の旅だったり。

キャビンで何します?たまの宴会は楽しいですが、他は?日本人にはキャビンは使えない。それが、いつもマリーナが閑散としている理由のひとつではないか?家を出て、外に向かう方はひとところにじっとはしておれない。活動的なんですから。それが家を出て、ヨットのキャビンでじっとなんかしておれません。例え、エアコンが効いて快適だとしても。快適なら、家の方が良い。マリーナにリゾート気分は無いし、温水が出る、冷蔵庫がある、テレビもビデオも音楽もある。でも、みんな家にある物ばかり。家に無くて、ヨットにはある物?キャビンの中には、そんな物は何も無い。

あるとしたら、周りの環境。その環境が魅力あるなら話は別ですが、そうでも無い。キャビンに1日飽きずにおれるでしょうか?何のイベントも無く。来る日も来る日も読書ができるでしょうか?日本人にとって、キャビンはやっぱりイベント的なのであります。キャビンが広いとか狭いとか、良く話題にもなりますが、所詮たいして使わないのに、そんなのが重要なのか?たまのイベントの為に、キャビンをでかくしたら、その分失うものもある。

キャビンは同じ以上のものが家にもある。違うのはヨットの中だという事。その事実がどれだけ大きな意味を持つのか?家が狭くて、快適では無いのなら、急いでヨットに行きたくなります。そっちの方が快適なら。でも、そんな事は無いわけです。

キャビンは寝泊りする為にある。そこで過ごす事にある。それは自分のヨット単独で成り立つ事では無く、他のヨット、置いてあるマリーナの状況、それらを全て含んで一体として考えられる。楽しいマリーナがあってこそ、自分のヨットが活きる。寂しいマリーナで、自分だけで、しょっちゅうキャビンには居られない。

より快適を期する為に、あらゆる装備を設置し、エアコンを積む。それはそれで良いとしても、やっぱりキャビンは使えない。キャビンは二番目なのです。一番目に持ってきたら、そのヨットは使えない。で、一番は何か?クルージングかセーリング。という事になると思います。一番を十分に楽しんだ時、はじめて、キャビンが活きる。でも、クルージングはまたたまにしか行けない。で、日常的にはセーリングをする。いつも通りの結論です。セーリングを堪能して帰ってきた時、その時はじめてキャビンで寛ぐ事ができる。その為にキャビンを重視したら、1番目の面白さが損なわれる。それでは本末転倒。一番目を重視し、二番目はその次。順番を間違えたらいけません。

ところが、欧米人というのは、キャビンを一番に持ってきても楽しめる人種なんですね。ですから、あんなにキャビンがでかくなる。日本人とは違うのです。

結論は、キャビンは二番目という事です。 でも、大半のヨットは欧米から来ています。大きなキャビンが既にある。という事は、我々日本人は、それでも、キャビンよりもセーリングを重視して、セーリングをいかにそのヨットで遊ぶかを一番に考えた方が良い。そういう目で見た方が良いのではないでしょうか?同じヨットでも、見方を変える。一番はセーリング、二番はキャビンという風に。すると、使わないキャビンに惑わされることが無くなるかも?少なくとも、キャビンがこっちの方が広いから、という理由で決定する事は無くなるかも?

キャビンから出て、どんな風に楽しもうか?どんなセーリングをしようか、その時の操作性はどなうなのか?そういう事で決めた方が、後々は遊べる。そうなると、キャビンでも遊べる。

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