第六十七話 社会との繋がり

現役で仕事している間は、社会と深く繋がっています。しかし、現役を引退した途端に、社会との繋がりが希薄になる。関わりがあるのは、家族と、隣近所ぐらいでしょうか?そこが問題になります。
誰でも、社会に何らかの事で繋がっていたいと思います。それが今までは仕事でした。仕事をする事で、仲間も居たし、話題もあった。苦しいなかにも生きがいもあった。誰でも、社会との繋がり無しでは生きられない。

例え、単独で世界一周するにしても、もし、日本に帰ってきて、誰も興味を示さないとしたらどうでしょうか?自分だけの満足感で世界なんて回れるのでしょうか?ひとりで、ひそかに出て、ひそかに帰ってくる。行った先々で、いろんな人に出会い、帰ってきてからも、いろんな人と話をする。それが社会との繋がりでしょうから、人は社会との繋がり無しでは、無意味に思えてくる。

旅はそんな社会との繋がりを感じられる良い手段かと思います。何も、温泉につかり、ご馳走食べるのが旅では無い。行った先々での出来事や人との関わりがあるからこそ、旅は人を社会に結びつける。多くの老人が旅行を楽しむのは、そういう意味もあろうかと思います。人はどこかで、何らかの形で、社会に繋がりたいと思っている。でも、あまり深入りすると、今度は煩わしいと思ったりもします。実に我侭なんでしょうが、そういうもんです。

ですから、ヨットにひとりで乗るより、誰かを誘いたくなります。みんなでワイワイやりたくなる。でも、そうしょっちゅう誰かが来る事も無いので、ヨットは動かなくなる。そこが最も大きな問題点かもしれません。社会との繋がりをどこで持つか?
 
シングルハンドでセーリングをする。シングルである限り接点がありません。そこが問題です。ヨット以外で接点があれば問題は無いのですが、引退後であれば、そうも行かない。それで、旅をすれば行った先々で接点が見出せる。これもひとつの方法でしょう。

でも、旅をしないで、セーリングを単独で楽しむという方法は、かなりセーリングを極めてやろうとか、そういう目的意識が強くないと続ける事ができないのかもしれません。でも、マリーナに帰ってくれば、そこには他のオーナー達が居ますから、そこが接点になります。セーリングすればする程、話の種は尽きません。

昔は、丘に上がって、ヨットの事、セーリング、艤装、いろんな話がなされていました。それが接点になっていたと思います。最近はどうでしょうか?あまり無いような気がしないでも無い。マリーナは社会との接点ですから、オーナー同士、仲間同士が、集う場が必要なのでしょう。そういう意味では、マリーナに寛げる場所がほしいですね。例えば、男が集まるバー、流行のスターバックスでも良い。セーリングが終わって、ばたばた片付けて帰るのでは無く、片付ける前に、そこらで寛ぐ。すると、回りの他のオーナー達も来て、いろんな話をする。かつては、いろんな職業に携わってこられた人達ばかり、ヨットだけでは無く、いろんな話もできます。場合によっては、今度一緒に乗りましょうという事もある。すると、購入せずして、違うヨットのセーリングが味わえる。マリーナはそういう演出までしてもらいたいですね。クラブハウスがあれば良いってもんじゃない。

オーナーが支払う年間の管理料から少し出資して、そういう場を作る。オーナー会員はもちろん、一般より安くなければならない。できるなら一般が入れないような特権にする。そこに来るのは、オーナーか若しくはオーナーが連れてきたひとだけ。もちろん、サインひとつで現金のやりとりは無し。マリーナでのこういう店は経営が難しい。それは人が少ないから。ならば、経営はマリーナ経営で、資金はオーナーからの管理料を少し回す。儲かるのが目的では無く、オーナー達の気軽な集いの場所。社会の接点です。あらゆる話合いはそこでやる。豪華である必要は無いし、オープンカフェのような感じで、どうでしょう?現実的かどうかは解りませんが?キャビンで自分でコーヒー入れてより、キャビンから出て、こういうところで飲んだ方が、片付ける必要も無いし、おしゃべりを楽しめるかもしれないし・・・・・。

できれば、マリーナに無関係の一般客もたくさん集まるカフェが良いですね。彼らもヨットを見ながら、お茶して、若いカップルなんかが、ヨットに乗ってみたいと思ってくれると良いです。ひょっとしたら、そこにオーナーとの出会いがあって、じゃあ、一度乗せてあげようか?という事にならないとも限りません。

オーナー同士の接点があり、一般との接点もある。そういうオープンなマリーナ。言うほど簡単では無いとは思いますが、何か工夫がほしいと思います。その接点は豪華さでは無く、社会との繋がりとしての接点がほしいと思います。マリーナも社会との接点がほしい。オーナーが、セーリング終わったから帰るというのでは無く、そこに居たいと思ってくれるような。オーナーはヨット好きなのでしょうが、同時に、マリーナ好きにもしてほしいと思います。仮に外に出なくても、マリーナに行きたくなるような。それは接点だと思います。そこに行けば、接点がある。

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