第八十三話 普通
| ヨット自体、普通とは言えないかもしれませんが、特別な何かに仕立て上げる事をできるだけ避けたいと思います。すごい事をする人は居るものです。でも、ヨットをすごい物に仕立て上げて、何かしなければならないものだと思わせるのは良く無い。普通で良い。普通で楽しめるのが良いと思っています。 ヨットを何か特別なイベント的に祭りあげる事無く、日常の遊びとして、そこらを走り回るだけでも十分面白いし、それで良いんだ。という具合です。事実、そこらで気軽にセーリングして面白い。ヨットでレースしないならクルージング。クルージングなら、どこか遠くへ行かなければならないような、そんな事は不要で、行きたい人が行けば良いわけで、近くをセーリングして回る。それが一般的な使い方となれば良いと思っています。 そうしますと、もっと気軽に乗る事ができる。旅を計画しますと、まさしく計画です。これはこれで楽しいのでしょうが、日常には計画なんかは不要で、ぶらりと来て、さらっとセーリングして遊んでくるぐらいの気軽さがほしい。旅を計画するのはイベントであり、イベントは毎週には多分ならない。無計画なセーリング、気が向いたからさっと出て、そこらをセーリングしてくる。出たら、風が強すぎたからすぐに帰ってきたとか、マリーナに行ったら、雨が降ってきたから中止して、違う事をするとか、もっとイベントでは無い、気軽なお付き合いを、と思うしだいです。 もちろん、たまには、どこかちょっと遠くへ行く計画もして良いわけで、それを大いに楽しむわけですが、日常ではデイセーリングなのであります。そしてデイセーリングの時は、セーリング自体を楽しみ、ただ走っているだけでは無く、ちょっと質を高めて、クルージングの時は、みんなを誘って、賑やかに。 そういう事で、セーリングをもっと身近において、もっと遊んで頂きたいと思います。セーリングはクルージングとは質の違う乗り方ですから、一種のスポーツ的感覚になると思います。そうならなければセーリングは楽しめないかもしれません。 家族と友人とシングルでも、デイセーリングを楽しんで頂きたい。その時は軽くスポーツする感覚で、みんなでセーリングをする。それはみんなが各ポジションでの操作を楽しみ、舵を交替したりして、いろいろ楽しめる。知らない人には教えてあげて、セーリングそのものを楽しむのがポイントかと思います。そうすればきっとみんな面白くなる。ゲストであっても、初めてであっても、黙って、コクピットに座って、楽しいなと思うのは最初の３０分ぐらいでしょう。その後は、オーナーのトークが面白いとか、ご馳走がうまいとか、イルカでも出てこないと本当はもたない。でも、舵を持てば、様相は変わる。シートをオーナーの指示で引いたり出したり、その理由も教えてあげれば、もっと面白い。ヒールしたって良い。穏やかだけが楽しいわけじゃない。 そういう事を日常の遊びとして、普通としたいわけです。遠くに行かないでも、こういう別の種類の遊びがある。クルージングとセーリングは違う遊びです。クルージングはイベント的になりやすいし、近場のセーリングなら、普通にエキサイティングを感じられると思うのですが。もっと身近に、普通に、面白さを。 |