第八十五話 壁

ある程度ヨットに乗れるようになって、そこからもう一歩踏み出そうとしますと、そこには一種の壁のようなものが現れる。クルージングを計画するも、それは今までには無かった事、それはヨットの取り扱いとは別の種類の事になります。また、セーリングをもっと深くという場合でも同じで、そこからは少し複雑さが見えてきます。

しかしながら、本当に面白さを味わうには、この壁を越えた所にあるように思います。クルージングにしろ、セーリングにしろ、この壁を越えないと、本当の味わいは無いのかもしれません。挑戦しますと、それなりの緊張感を強いられたり、問題を解き明かしたり、勇気が必要だったりしますが、何事も、それ無しでは越えられないし、越えれば、それに相応する世界が広がる。いつも、そうやって、挑戦と面白さの繰り返し、挑戦無しには面白さも無いのかもしれません。

しかし、それに慣れてきますと、挑戦する事にわくわくした感覚を覚えるようになる。でも、その度合いによっては、また緊張を強いられ、それを再び超える事で、面白さが再びやってくる。こういう事の繰り返しのようです。これらは、遠くを旅する事にも、セーリングを深く掘り下げていく事にもある。ただ、種類が違うだけかと思います。

ある本によりますと、個人の行動は自由ですから、予測不能、しかし、全体を見ますと、ちゃんと予測する事ができるとか?各個人は自由ですから、次に何をするかは分らないわけですが、それが全体の流れとしては、ちゃんと予測できる。という事は、マクロ的には、ある全体の流れがあるという事になります。個人は自由にやっているつもりでも、全体から見れば、ちゃんと流れに沿っているという事になります。

世の中には先端を行く人が居るもので、その流れの道筋をつける人かもしれません。その他の方々は、その先端を行く人を見ながら、自分の行動を決める。それが大勢になれば、全体がそちらに向かう。今、ヨット界をみますと、旅をおおいに楽しんでいる人達がおられます。少数派です。そして今、デイセーリングを楽しむ人達が出てこられた。これも少数です。大勢は動かない。旅を楽しんでいる人達も、デイセーリングを楽しんでいる人達も、先端を行く人達かと思います。そして、その他大勢は、これからどこに向かうのか?

どちらに向かうにしても、壁を乗り越えなければなりません。その為に、周囲を見渡せば、GPSが開発され、オートパイロットが開発され、いろんな計器、機器が造られてきました。つまり、昔に比べれば、非常にやり易くなってきました。環境は整ってきました。後は我々次第という事になります。いつもそうですが、全ては我々の決心次第になりますね。環境が整うのは、その決心がつけやすくはなりますが、でも、決心さえすれば、何とかなるもんです。重要な事は我々の手の中にある。

そういう意味で,我々がどう決心するのかによって、この先、楽しめるのか、楽しめないのかが決まる。環境のせいでも無い。決心次第。決めてしまえば、どうにかなるものではないかと思います。物事がそこに向かって動き出す。決心しないから、何も動かない。ですから、決めてください、これからのヨット運営をどうするのか?分らない、迷う、環境が整わないと言ってるうちは、面白さも出てこないだろうと思います。ここにも壁がありました。

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