第十一話 デイセーラーというヨット
| 当社はデイセーラーには特に力を入れております。中でもジブブームを持つセルフタッキングジブと大き目のメインセールというコンビネーションは特に、シングルハンドオーナーにとっても、あらゆる角度を気楽にセーリングができるという事で、オールマイティーという感じです。 さて、デイセーラーについて何度も書いてきましたが、あらためて考察してみますと、デイセーラーという言葉が合うかどうかは別ですが、結局、昨今のキャビン拡大競争に加わらず、逆にデイセーラーという言葉を使う事によって、キャビンを抑え込む。この事を市場が受け入れた事によって、キャビンはそんなに重要視しなくても、帆走重視をする事ができました。その帆走においても、レーサーとは違い、シングル、ショートハンドでの容易な操作と乗り後地を兼ね備えております。 つまり、デザイナーにとって、キャビンの呪縛から解き放たれ、セーリング中心のデザインをする事ができるようになったという事は大きな意味があると思います。 大きなサイズであれば、キャビンは必然的に大きくなります。しかし、小さなヨットでも、人間の背の高さが変わるわけではありませんので、それで大きなキャビンにしますと、必然的に重心は高くなります。走るものは重心が低い方が良いに決っています。そこで、このキャビン拡大の呪縛から解放された時、必然的にセーリング性能が良くなる事は明らかです。快適キャビンから快適セーリングへと変わる事によって、セーリングという性能が変わるのは当然であります。 船底形状にしても、キャビンの大きさを考えないで良いのなら、デザイナーの思う通りの設計ができます。波に対して柔らかいとか、舵効きとか、スタビリティーとか、また、レーサーでも無いのでレーティング等も気にする必要が無いという事にもなります。プロのデザイナーは、みんなどういうのが良いか解っている事でしょう。でも、それがキャビンを重視すると、そこも十分考えなければなりませんから、場合によっては、キャビン優先主義というのも少なくありません。 アレリオンというヨット、ハーバーというヨット、これらに実際乗って感じる事は、セーリングが実に面白いという事です。ライフラインが無い。全く必要性を感じさせません。それより、桟橋からの乗り降りが楽な方が有難いと感じます。 重心の低さは頼もしさ、安定感を感じさせますから、強風でも平気でセーリングを楽しめる。この事はとっても重要な事ではないかと思います。それにシングルでも簡単にあらゆる方向の風を楽しむ事ができる。セーリングが面白いというのは何よりと感じます。 アレリオンに端を発したデイセーラーというコンセプト。これらは他の一般ヨットとは全く違う。別格かと思います。たくさんのクルーを従えて走るレーサーも、そのスピードにおいて面白さがあると思いますが、誰もが簡単に操船できて、しかも熟達すれば、それなりの高度なセーリングをも可能にするヨット、これらは、セーリングを中心にデザインすれば良いという観点から生まれ、それも我々が普通にやるセーリングを面白くしてくれます。 ただ、キャビンが狭いという事に関して、割り切る事ができるかどうか？そこが最も難しい点かもしれません。欧米では、既にそういう方々がたくさん出てこられました。日本はまだまだこれからだと思いますが、やがては、このデイセーラーのセーリングが広く受け入れられるようになると確信しています。何しろ、セーリングが面白いのなら、これに越した事は無い。これらのヨットは別格だと思っています。 実際に乗ってみなくては、このセーリングは解らないと思いますが、ある程度は想像できるかと思います。キャンピングカーとスポーツカーの違いのようなものでしょうか。デイセーラーは確かに遠くへ旅をする目的では作られていない。でも、日々の楽しさ、面白さがあります。 シティーセーリング、デートセーリング、シングルハンドセーリング、スポーツセーリング、どれもが当てはまる言葉です。スポーツヨットは他にもあります。しかし、これほど安定し、操作がし易く、しかもバランスが良くて、初心者にもベテランにも面白くセーリングができるヨットは無いと思います。 後は、キャビンへの割り切りです。これも時間の問題かと思っています。多くの方々が、これまでどんな使い方をしてきたかが、徐々に解ってきたからです。 セーリングは面白い。これが何よりではないでしょうか？日々の楽しさ、面白さ、デイセーラーはそういうヨットです。ヨットが速く走るというのは、実に爽快であります。でも、ただ速いだけでは無く、抜群の安定感もある。それは安心感に繋がります。そんなヨットが面白くないはずは無い。 そのセーリングが旅を目的とする時、キャビンは重要かもしれませんが、日々の楽しさ、面白さを求める時、セーリングは最高の手段になります。その時、どんなセーリングができるのか？益々デイセーラーが好きになりました。 |