第四十八話 観察

良く観察する事はとっても大事な事かと思います。全てはここから始まるのではないかと思います。今の状態を観察する。動きを観察する。自分の感じているフィーリングさえも観察する。それら観察した事実によって、どこをどうするかを遊ぶ事になります。正しく観察できると、次の行動も正しく動ける。

実はこの観察こそが最も難しいのかもしれません。舵の位置、セールの形状、船体の動き、自分の感じ、これらの観察が基準となり、そのままで良いか、調整した方が良いかの判断がなされます。これらはみんな遊びであり、より良いフィーリングを得る為に、その判断の基準となる。

鋭い観察力は、微妙な違いでさえも解るし、感じられる。突き詰めて行けば、その微妙さをどこまで進めるかにかかっている。どこまで行かなければならないわけでは無く、どこまで遊ぶかになるのでしょう。上手い人は、この観察力に優れている。違いが解るからこそ、次のステップが解る。

良く観察して、その調整をする。それによって、より良いセーリングを求め、その変化を再び観察します。観察して、その違いが解らないとしたら、面白さも解らなくなる。違いが解る。どこまで解るかが自分のレベルという事になります。そのレベルを引き上げていく事、今まで解らなかった事が、解るようになる事、それがまた新たな面白さに進む事になる。

こうやっていきますと、観察した事実のみならず、自分の感じ方にもレベルアップがなされる事になり、より微妙な変化を感じ取れるようになる。同じように走っていても、他の人とは違う感じを得る事ができるようにもなるかと思います。それがセーリングの面白さかもしれません。

レースで勝った負けたの面白さもありますが、普段のセーリングにおいて、観察する事によって、その観察力を高める事によって、自分のセーリングを、フィーリングを遊ぶ事もできるかと思います。

良いフィーリングは、必ずしも快走とか、速いとか、そういう事実にだけ基づくものでも無いようです。ただ、普通に走っているだけで、何か良い気分というのがあります。それも、普段どうやってセーリングしているかに寄るのではないかと思います。

自由自在と言いますが、誰でも、そこそこ慣れてくれば自由自在になれる。上手いから自由自在というわけでも無い。自由自在になって、そこから再び観察する事によって、その自由自在がもっと奥深くなる。

結局は、どんな遊びをしたいかになるのでしょうね。観察力は観察する事によって養われる。観察を続けていく事で、少しづつより深い観察ができるようになるかと思います。その観察が深まれば、深まる程、同時に自分の感じる力も養われる。

セーリングというのは、レースで無い限り、何かの結果を出すものでも無く、物造りのように作品を残すものでもありません。それは多分、自分の観察力の進化、自分の感性の進化、これらを楽しむもので、それをサポートするのが、頭脳という事になるのではないか。フィーリングを遊び、頭脳ゲームを遊ぶという自分の進化を遊ぶ。

以前は解らなかった事が解るようになる。以前は解らなかった事を感じられるようになる。フィーリングの世界は曖昧ではありますが、しかし、レースにしろ、物造りにしろ、最後に求めるはフィーリングであります。セーリングはダイレクトにそこに繋がる。そういう遊びなんだろうと思います。ですから、セーリングにおいて、フィーリングはとっても大事な事。フィーリングを大切にしましょう。

ですから、走るだけでは無く、気に入ったヨットで、艤装も自分が良しという艤装で、気軽に出れて、観察し、思考し、そして全ての過程でフィーリングを味わう事、時に、最高のフィーリングが訪れることもある。セーリングはフィーリング遊びなんだなと思います。

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