第七十一話　マイブーム

もう長い事タバコを吸ってきました。昨今の禁煙ブームにも拘わらず。その間、１年半ぐらいやめていた事もあるのですが。また始まった。でも、最近、あるオーナーから１本の葉巻を頂きました。これが何とうまい。そこで、早速タバコ屋に行って、数本を買い求め、吸っているうちに、これまで吸ってきたタバコがまずいと感じるようになってきました。それで、今はすっかり葉巻にはまっています。

根っからの凝り性の性格で、禁煙どころか、今度は葉巻？それも、いろんなブランドも試し、これが良いのあれが良いの。そんな事をしているのがまた楽しい。凝るというのは、楽しさを求める事、大いに凝った方が良い。これが最近のマイブームであります。知るともっと楽しくなる。それで、今は１日３本の葉巻。朝、昼、晩の３回であります。聞きますと、本来葉巻は、いつでも、どこでもスパスパ吸うというより、ゆったりした時間を１本の葉巻で楽しむものらしい。基本的に紙巻タバコとは異質なようです。１日のうちに、ある時間を葉巻を吸う事にあてて、そのゆったりした時間を楽しむものらしい。１日の終わりに、晩酌をする。それに似ているような気がします。

決して葉巻をお奨めはしませんが、楽しい事に凝るのはお奨めします。どんどん追求して、どんどん知りますと、楽しくなります。ヨットだって、ただ乗るだけじゃなく、どんどん凝って、自分の楽しさを追及していくと、もっと楽しくなる。何も、何か特別な者になろうという魂胆は無く、ただ、面白いから、楽しいから、もっと深く入っていきたい。そうすれば、もっともっと面白くなる。

セーリングは多くのクルージング派に拒否されてきた。敢えて、拒否と言います。深く入るのは難しそうですし、何もレースするわけじゃない。そういうわけで、多くの方々が、あまりセーリングについて深く入ろうとはしない。セーリングが面白く無いなら仕方ありませんが、そうでは無いと思います。
ヨット始めたきっかけは何だったのか？きっとセーリングに夢を描いていたのではないかと思います。旅をする姿を思い描くも、きっとエンジンでは無く、セーリングしている姿を夢見ていたのではないでしょうか？ですから、旅はエンジンでも良い。しかし、デイクルージングする時はセーリングに凝ってみてはいかがでしょうか？

うまく操作できないにしても、まずは理屈を考えてみる。そして、各艤装の役割を考えてみる。よくよく考えると、各艤装がどんな役割を受け持っているのかが分かってくる。それをうまい事操作するのは簡単ではありませんが、理屈が分かれば、上達の道ができる。それが面白さの始まり。そして、各艤装は単独ではありえず、互いに影響しあう。これがまた複雑さを作るわけですが、それがわかる頃は上達していますから、その複雑さが面白さに変わる。

セールの形を考えたら、何をどうすべきなのかが分かってきますから、面白いのですが、どの程度調整すれば良いかが課題になります。そういうパズルをひとつづつ紐解く事によって上達という恩恵が受けられる。そうなると、ＧＯＯＤ　ＦＥＥＬＩＮＧに繋がっていきます。そういう感じはやった者にしかもたらされない感覚、うまい物食べた時の満足感のようなもの。どうせやるなら、うまい物食べたい。セーリングするなら、ＧＯＯＤ　ＦＥＥＬＩＮＧを得たい。

それには、自分の面白さに凝っていく必要があります。凝れば、求め、求めれば得られる。その感覚は何よりのご馳走ではないでしょうか？気に入ったデイセーラーで、葉巻をくわえて、セーリングに浸る。これが私の今のしてみたい事。

セーリングにマイブームを持ってみてはいかがでしょう？好きなヨットで、好きな格好で、好きなやり方で、好きな人と、好きな時に、至福の時がきっと訪れる。

私に葉巻をくれたオーナーは、今ではパイプにも凝っておられる。デイセーリングにも凝っておられる。元気一杯の還暦の方で、デイセーラーで月一のレースにも出られる。順位もどんどん上がって、つい先日は２位。トップも近い。パワフルな方。曰く、”何でも凝らなきゃ面白く無い”楽しい事はどんどん求める必要がある。そこそこなら、楽しさもそこそこ。それで良いんでしょうか？ヨットは遊び、ヨットは趣味、そこそこ遊ぶより、遊ぶ時はおおいに楽しむ。その方が、仕事もできる。

皆さんのマイブームは何でしょうか？いつでも、年とっていようが、マイブームを持ち続けたいですね。例え、他人から見たらつまらん事でも良い。飽きやすいという人も居ますが、それでも良いじゃないですか。その期間はおおいに楽しめます。マイブームが無いのは寂しい事です。たかが葉巻ですが、良い気分なのです。良い気分、これこそが我々みんなが求める事でしょう。是非、マイブームをお奨めします。できればセーリングに！

セーリングには頭も使う。感性も使う。知的ゲームであり、感性ゲームでもあります。それに体も適度に使うわけですから、これは人間の能力、全てを使う事になります。集中力を要し、大胆から繊細まで、望むセーリングが可能となります。これが面白さの源泉ではないでしょうか？全てにバランス良く配分されています。ヨットはバランス遊びなのです。風と波と船体とセールのバランスを取り、同時に頭脳と感性と体のバランスを取る。それらが調和した時、快感が生まれる。しびれるような感覚になる事もある。是非、味わって頂きたいものです。

次へ　　　　　　　目次へ