第八十四話 性質
| 便利さを享受するのも良いですが、ヨットが遊びである以上、便利よりもその性質を問う方が、面白いのではないかと思います。何故なら、ヨットはその動きそのものが遊びだと思うからです。便利は確かに良いし、必要だと思います。しかし、度が過ぎては本末転倒のような気がします。ヨットが乗って遊ぶのでは無く、それを手段にして、他の目的を達成する為であるなら、便利な方が良いのですが、ヨットその物が手段であり、目的であるなら、その質を遊ぶという事を忘れない方が良いのではと思います。 だからと言って、高級が良いという意味ではありません。求める性質は何か？速さか？重厚な走りか？安全性か？機敏さか？求める質はいろいろあろうかと思います。大洋を渡るのであれば、機敏さよりも、安全とか頼もしさとか、セーリングを遊ぶのであれば、スピードとかレスポンスとか、遊び方によって求められる質も違ってきます。 ヨットはいろんな使い方がありますが、基本的な使い方を設定して、その時の性質はどうであれば良いのか？シングルなのか、クルーが居るのか？近場なのか、遠くまで行くのか？いろんな使い方があり、その時々に応じて、いろいろ変化もします。しかし、基本は何か？そこを十分楽しめるようにしておく必要があると思います。 セーリングを遊ぶ事を基本にしますと、それもシングルをも考慮しますと、デイセーラーはうってつけだと思います。でも、このデイセーラーでオーバーナイトのクルージングも可能だし、ファミリーセーリングも可能だし、レースも可能だし、ピクニックも可能です。でも、最も、デイセーラーの本領を発揮できる状況があります。シングルにおいてセーリングを堪能したい時、恐らく、他のどのヨットよりも堪能して頂けるのではないかと思います。 しかし、楽しみとはそれぞれであり、例えば、大型艇なのに、それを敢えて、シングルで乗りこなすところに面白さを感じられる方もおられるでしょうし、小さなヨットであればこそ、面白いと感じる人もおられる。面白さは人それぞれです。ただ、最大公約数として、デイセーラーは最もシングルで乗り易く、操作性も良く、それでいて反応の良いセーリングを楽しめるものと思います。 自分の求めるヨットの使い方をよくよく考えて、その状況でのヨットの性質はどんなものが良いか？ これからヨットを始める場合、これらの事が解りません。ならば、取り合えず、手に入るヨットで、気に入ったヨットをどんどん乗ってみる事が最も自分を知る近道という事になります。こんなはずでは無かったという事もあるでしょうが、最初のヨットを使いこなす事によって、その先のヨットも見えてこようというものです。いくら頭で考えても解るものではありません。 いろんな使い方がある中で、当社としては、最も力を入れてきたのが、セーリングであります。それも、できればシングルで楽しめるセーリングです。シングルハンドでセーリングを楽しめるようにしておけば、どんな状況でも乗れる万能の乗り方かと思います。家族が来ても、奥さんと二人でも、友人がが来ようが、デートセーリングだろうが、はたまた、誰も来ない時でさえ、どうにでもなる。 それを最も可能にしたのが、デイセーラーです。スピード、レスポンス、スタビリティー、等々、セーリングにおける操作性の良さ、面白さがあります。これでなければならないわけではありませんが、最もそういう面においては優れていると思います。 そして、デイセーラーをお奨めするもうひとつの理由は、誰でも、近場ですから、いつでも、気軽に楽しめるという状況をもたらす事です。遠くを目指すのもヨットですが、近場でもセーリングを存分に遊べるのであれば、その活躍の機会は多くなります。 セーリングに集中して、セーリングを本気で遊んでみますと、意外に、その面白さに気付かれると思います。同じ海域なのに、スリル満点のセーリングもあれば、のんびりもある。舵取りの妙を楽しんだり、セールトリミングを楽しんだり、いろんな方法が、いろんな状況で遊べます。これなどは、敢えて、遠くを目指す必要も無い。これまで、クルージングの方々になおざりにされてきた感のあるセーリングを、見直してみましょう。ヨットの基本であるセーリングを再考してみましょう。セーリングが面白いと感じる事ができたなら、こんな良い事はありません。最も気軽にできる、しかも、いろんなフィーリングさえも遊べる、最高の使い方のひとつかと思います。 さあ、今年もデイセーリング、出発です。軽いティラーには、微妙な感覚さえ伝わり、感じる事ができます。すると、船体の微妙な動きさえ感じてくる。高いスタビリティーは、強風でも頼もしさを感じ、よりセーリングを堪能できる。是非、味わってみて頂きたいものです。絶妙なバランスがあります。 もちろん、これより速いヨットもあります。これよりスタビリティーの高いヨットもある。しかし、セーリングを堪能しようとする時、この絶妙なバランスが、面白さを演出してくれます。 当社では外洋ヨットもやっております。この外洋においては、また違う性質が求められます。何日も走る時と数時間走る時とは同じで良いはずが無い。積載貨物も多くなります。それでも、やはりスタビリティーが高い方が良いし、頑丈も必要ですが、セーリング性能も高い方が良いと考えます。楽に速くです。 |