第八十七話 必需品

デイセーリングには高い帆走能力と高いスタビリティーそしてレスポンスの良さ、その操作にあたっては容易である事が望まれます。他に何が要るでしょうか?

清水は考えてみれば、そう使わない。せいぜい、手を洗う事があるかな?否、殆ど無い。飲み水として、タンクの水を飲む事は無い。皿やコップを洗ったり?それも殆ど無い。缶のまま飲み、ペットボトルのまま飲み、紙コップならそのまま破棄。そう考えれば、清水は不要になる。

清水が不要なら、清水の電動プレッシャーポンプも不要。もしあっても、フットポンプの方が簡易で良い。不要でもありますが。

冷蔵庫はどうか?冷たい飲み物は夏には有難い。しかし、冷蔵庫を稼動させるバッテリーを守る為にエンジンをかけっぱなし?これもセーリングには無粋であります。それに、24時間冷やしているなら別ですが、マリーナに来てからスイッチONしても、冷える頃には、帰宅の時間。それなら、小さなアイスボックス、それもソフトタイプなんかをコクピットに置いて、コンビニで飲み物買うついでに氷を買って、アイスボックスを利用した方が、効果的であります。

ガスコンロはどうか?これは暖かいコーヒーを入れるにはほしいアイテムです。でも、2バーナーや3バーナーのガスコンロがどれだけ要るでしょうか?まして、オーブンとなると全く使わない。ならば、ポータブルのコンロがいろいろ有りますし、安い。使う時だけ出せば良い。しかも、どこにでも置けます。

温水?シャワーを浴びる人用。デイセーリングには無くても良い。アンカー打って、海水浴した時なんかは使うかも?でも、水じゃ駄目ですか?

キャビン内にある、いろんな装備が、デイセーリングではあまり必要としない。実にシンプルであります。何も無ければ壊れる心配も無いし、メインテナンスもその分不要になる。何にも無いのは、案外すっきりして、気が楽という事もあります。でも、音楽はほしい。個人的には。

そのシンプルなヨットも、デッキの上は充実させたい。バックステーアジャスター、バング、トラベラー、カニンガム、そして、それらの配置は、操作性に拘わります。操作を楽しむのがヨットですから、それをいかに楽にできるか?そういう事は充実させたいと思います。

風向風速計、スピード、デプス、オートパイロット、いろんな考え方もありますが、あれば、楽さと、楽しさを盛り上げる役目をする。但し、何かを設置すれば、その分メインテナンスは必要になる。
面白さの置き所かと思います。

これだけあれば、後は楽しむだけです。キャビン内はシンプル、デッキ上は充実。いかにもセーリングを楽しむ事を目的としたヨットになります。気持ちもその方向にシフトされる。後は、音楽さえあれば、完璧であります。

コクピットで舵を握ったまま、殆どのセール操作ができる。そういうヨットなら言う事無し。今した操作の反応が、即座に舵に伝わってくる。それが面白さ。スピードだけが命では無く、微妙な変化さえ、伝わる。それを感じれるようになれば、それが面白さ。微風でも、ふっと風が上がって、その瞬間に加速感を感じたら、それが面白さ。本当の面白さは装備にあるわけでは無く、変化とその変化を感じる事ができる自分にある。

となると、必需品とは、自分と自分のフィーリング、それに対する意識と、集中力、それらさえあれば、楽しむ事はできるのかもしれません。でも、それだけでは寂しいので、狭くても落ち着けるキャビンと音楽、それにヨットの美しさもほしいなと思います。遊びものですから。良い気分にさせてくれる物ならほしい。足を引っ張る物は無い方が良い。ひとつ何かをつければ、そのメリットがあり、同時にそのメインテナンスという負担もかかる。どっちがウェイトが高いのか?

自分を良い気分にしてくれるものは何か?遊びは気分を大事にします。どんな気分を得る為に、どんな物が必要で、どんな事をすれば良いのか?そして、良い気分と言っても、どんな気分を得たいのか?自分の面白さはどこにあるののか?いつも、自分の気分を観察する事で解るような気がします。今更、何らかの記録を打ち立てたいわけじゃない。ただ、求める気分を味わいたい。面白さを。愉快を。面白さはどこにでもあるが、自分の面白さはどこにある?

物が溢れる時代に居ますから、自動的と言って良いほど、物で満たす事を考えます。しかし、本当に楽しむ為に、ありとあらゆる物を採用する必要は無い。本当に何が必要であるかが解るというのは、何が面白く、楽しいのかが解っている事かもしれません。自分の楽しさが解れば、必要最低限では無く、、ちょうど良い、多すぎず、少なすぎず、というのが解る。物が先では無く、自分の楽しさが先。

それぞれの目的に応じて、必要な物とそうで無い物を分ける。それだけでも、スッキリするのではないかと思います。たくさんある満足感、何も無いスッキリ感、物があればある程、人は鈍感になり易いのではないか?セーリングにおいて、鈍感では楽しめない。

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