第39話 ヨット最大の魅力

いろんな使い方、遊び方がある中で、その最大の魅力は何だと思われるでしょうか。何故、ヨット
に乗るのか?何故、何十年も続けられるのか?

人は常に遠くを見ています。暇ができたら島を巡り、見知らぬ土地を探索する。日本各地を巡り、
土地、土地での人々との交流を楽しむ。或いは、家族や仲間とピクニック気分で楽しむ。別荘の
ように泊まり、船内生活を楽しむ。どれも楽しそうです。でも、最大の魅力と言いましたら、セーリ
ングにあるのではないでしょうか。遠くても、近くても、セーリングそのものこそが最も心躍らせる
瞬間を与えてくれるものだと思います。もちろん、セーリングする度にそういう感覚を味わえるわけ
では無いと思いますが、たまに、そういう瞬間があるものです。

ヨットが最高のコンディションにあり、そのヨットに合った自然条件が重なり、実に滑らかな帆走を
見せる時があります。こういう時は無心になります。まるで、険しい山道を登り、山頂について周り
を見渡した時のような実にさわやかな気分になります。こういう時は何か望む物を手に入れた時の
満足感でも無いし、まして、豪華とか、エキサイティングとか、そういうものでも無い。面白いとか、
楽しいとかいうものでも無い。ただ、少し緊張感があり、平和な気分、無心なのです。決して、激し
い気分では無く、落ち着いた何とも言えない平和な気分です。

自然の中が条件ですから、自然にお任せするしかない。風や波はどうしようもない条件ですね。だ
から良いのです。これが、なんとか人がコントロールできるものなら、条件が整わなかったらストレス
が溜まります。どうしてくれるんだと言いたくなります。でも、自然に文句は言えませんし、あきらめ
るしか無いし、あきらめられるのです。でも、逆に、整う時は感謝したくなります。これさえ味わえば
後はおまけのような物です。また、味わいたくなる。

遠くでも、近くでも関係無い、大きくても小さくても、重くても軽くても、そのヨットの最高のコンディショ
ンを整えて、偶然出会う”整った時” これこそが最大の魅力だと思います。これは言葉では言えま
せんので、実際、何度もトライして自分で経験してみてください。誰でも味わえる最高の時、これを
知ってる人はやめられません。島めぐりも良い、別荘も良い、宴会も良い、でもこういう乗り方を意識
してみませんか。遠くへ行かない時、デイセーリングの時、シングルハンドの時、こういうセーリング
を意識してみませんか? ヨット最大の魅力を味わうには、その気になれば誰でも味わえる、誰でも
です。ただ、いつ味わえるかは解りません。でもその時の為にヨットはGOODコンディションでなけれ
なりません。まどろっこしいですね。相手は自然ですから仕方ありません。謙虚に待ちましょう。その
内OKが出ますよ。

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