第74話 パターン

先日、あるオーナーからこんな話を聞きました。ここに居る多くの人達はヨットをもっと楽しみたいと
思っている。でも、自分達でよう行かんのよ。あそこに行きたい、ここに行きたい、でも不安なんで
すよ。具体的にどういう風にしたら良いのか解らない、自信が無い。そういうガイドをしてくれたら、
皆さん、集まると思うよ。また、あるオーナーはそんな事には構わず、行きたい所に何の躊躇も無く、
どんどん行ける。もちろんベテランでも何でも無い。

前にも書きましたが、30フィートを一人では乗れない人が居て、一方50フィートを一人で動かす人が
居る。この違いは何なのでしょうか。

人にはそれぞれ独自の考え方のパターンがあり、行動のパターンがあるようです。ある人は大きい
と感じるものが、別の人にとっては小さいと感じる。これは理屈でも何でも無く、その人の感じ方の
パターン、性格でしょう。物理的な問題では無い。それ自体が大きいとか小さいとかいうのでは無く
相対的なのです。

それで克服しなければならないのは、自分の考え方、感じ方のパターンを打ち破ることです。今のま
まで良いと思うなら、それで良い。でも行きたいけど不安であるとか、一人でのりたいけど不安である
とか、そういうものをお持ちなら、まずは物理的な難題を克服する前に、やりたい事をきちんと明確に
して、しようと決意する事から始めなくてはなりません。

よし、いついつ、どこに行くぞと決めたら、もうできたも同然です。そこに行く為の情報を集めます。
目的地への海図を調べ、方角、距離を調べ、港湾案内図で目的地の漁港の地形を調べ、入港の
仕方をチェックして、行ったことのある人に話を聞いて、また、その漁港に電話しても良い。とにかく
ありとあらゆる情報を入手します。そうすれば、今度は物理的な難儀がかなり軽減されます。充分に
シュミレーションを頭の中でやって、そしてちょっと勇気を振り絞って行く。行ってみれば案外難しい
事はなかったと知る。

とにかく、何かをしたいと思ったら、次に今までのパターンでは不安が沸き起こってきた。それを一歩
進んで、やると決めることです。そして、その為の情報をできるだけ集める、或いは、それを物理的に
成功させるにはどうしたら良いかを考える。不安はつきものです。でも、これを乗り越えられれば、喜
びも大きいはずです。それで、次からは何でも無いという風に感じられるようになる。これで確実に
ステップアップしました。何かをしたいと強く思うことは、今はできないからです。できると解っている
事を強く思う事は無い。できるのですから、ただ、するのです。したいと思う事はできないという事を
裏側に持っている。それで不安がそこにくっついてくる。いつも同じパターンなのです。今までは、した
いと思うだけで、それ以上踏み出せなかった。でも、これからはすると決めるのです。物理的な問題
は無視して、すると決める。そして、その準備を納得するまでやる。こういうパターンに切り替えていけ
ば、必ずできる。誰でも、同じようなパターンを持っています。内容は違っていても、必ず不安を持って
いる。その不安より決意を意識的に強めるように務めれば、できるようになる。

ですから、ヨットを持っているオーナーの方々で、マリーナに係留しっぱなしの人達は、自分のヨットで
何をしたいかを明確に考えて、決意して下さい。最も、楽しみたい乗り方をすると決意して下さい。
もし、これが無いのなら、ヨットは手放した方が良い。ヨットが可哀想です。

仕事が忙しい方は、1週間に1度は2,3時間でも乗ると決意して下さい。クルーが居ないからと思う
人はシングルハンドで乗るぞと決意して下さい。どこかの島に行ってみたいと思っている人は行くぞ
と決意して下さい。ヨットを縦横無尽に乗れるようにマスターするぞと決意して下さい。そこから、次の
ステップが始まります。たかだか遊びに決意など大袈裟な、と思うかもしれませんが、仕事も遊びも
同じです。自分の感じるパターンから抜け出すには決意しなければなりません。その向こう側には、
きっと大きな喜びがあるはずです。

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