第80話 各艇のコンセプト パート2

さて、次の艇は私個人的に最も気に入っているアレリオン28です。このヨットのコンセプト
を見ます。

このヨットのオリジナルデザインは1912年ですから、90年も前なんですね。これを現代風
にアレンジしなおしたデザインなのです。水線長は22.8フィート、排水量は4,400ポンド
です。これで水線長/排水量比を計算しますと、165という値です。この値は比較的軽い
ヨットになります。セール面積は352平方フィートです。それで、排水量に対するセール面積
比を計算してみますと、20.9という数値がえられます。(第79話参照)という事はこのヨット
はかなりのハイパフォーマンス艇であるという事がわかります。クラシックなデザインなので
すが、船底形状をアレンジして、フィンキールにし、サンドイッチ構造で船体を軽くしています。
幅は2.48mですから、前ページのノルディックフォークと同じ長さ/幅比をもっています。
ただ、このヨットはオリジナルはロングキールだったのですがフィンキールに変更されています
ので、ノルディックフォーク程船底は鋭角では無く、やや走りを強調した船底になっています。
船体デザインは重心が低く、バラスト比は45%ですから、これは一般的なヨットより大きい。

典型的なデイセーラーという事になります。近場を気軽にセーリングを楽しむ艇で、性能も高く
速いヨットだと言う事がわかります。それにキャビンも狭く、ゆったりくつろぐというタイプでは無く
週末や夕方のちょっとあいた時間、そういう時に気軽に出して、その走りを楽しむ艇です。さらに
シングルハンドという艤装をこらしています。高い復元性は強風でのセールエリアをキープでき
まさしくセーリングを楽しむ為のヨットだといえるでしょう。

シングルハンドを主体に、いつでも気軽にだして、ハイパフォーマンスを気楽に堪能したい。船体
構造、工法、使用素材からして、剛性は高いので、船体のねじれなどには強い。強度的には外洋
性があるものの、荷物を多く積載するスペースはありませんし、排水量も軽い方なので、これも
たくさんの荷物を積載するコンセプトでは無い。重心の低さ、復元性はシングルハンドにはとても
役に立つ。ショートクルージング、ハイパフォーマンス、シングルハンド。こういうコンセプトが見えて
きます。ロングクルージング向きでは無い。

頑丈な船体は一般的には重い、それを軽くする為には素材、工法に工夫をしなければなりません。
で、それで価格的にはやや高くなる。でも、耐久性に優れている。ロングは結構、それよりシングル
で、夏の夕方の1,2時間、週末など、さあーと走って、スポーツ的に走りを堪能したい、クラシック
スタイルの高級スポーツカーという感じですね。

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