第８３話 締めくくり
| 物事を単純に数値だけの比較では全てを理解するには至りません。しかしながら、大まかな 性格という物は把握できるのではないでしょうか。その性格が造船所のコンセプトです。どの 船が良く、どの船が悪いという問題では無い事を強調しておきたいと思います。造船所の コンセプト、価格戦略も含めて、そのヨットを理解し、自分が求めているヨットかどうかを見出す 事が重要です。 ただ、もうひとつ重要なファクターがある事も事実です。それは一切の理屈はおいといて、自分 が気に入ったかどうかです。好きか、嫌いかです。データとしては申し分の無いヨットであって も気に入らないヨットは大切にはされない。好きになったら、あばたもえくぼ、欠点さえも気にな らなくなる。だから好きである事は最も大切なファクターです。これが自分のコンセプトの第一番 目に来る項目です。 乗る側のコンセプトで、お奨めしたいのが、何度も言っております、シングル又はせいぜいダブル ハンドで、気軽に、いつでも出せるという気になるヨットである事です。それで、日常は近場を気軽 にセーリングを楽しむ。そして、たまに、遠出をする。遠くと言っても、沿岸沿いなら小さくても問題 ありません。気軽である事はどんどん乗れる。どんどん乗れるとヨットを自由に操れる。そうなると 近場のショートでも遠方のロングでも、実に楽しめると思います。世界一周したいと思ってはいけ ません。日本一周したいと思ってはいけません。九州一周でもいけません。まずは、目の前の海 で、セーリングを思う存分楽しみたいと思ってください。海を知り、潮を知り、波を知り、風を知る。 天候を知り、ヨットを知り、自分を知る。それだけでも充分なのですから。これだけでも奥は深いの ですから。 大きなヨットの方が楽だといいます。でも、大きなヨットとはどんな大きさなのでしょうか。どんなに大 きくても、海には所詮かないません。大きな楽なヨットというより、気楽になれるヨットを優先した方が 良い。大きなヨットに乗った人は不幸です。小さなヨットに乗ると、大きい方が楽だったと思います。 でも、大きなヨットを一人で乗れない、だからヨットから足が遠のく。大きなヨットを一人でも動かした いと思う人は良いですね。大きなヨットでもその人にとっては気軽なものとなります。つまり、その人 にとって大きくは無い。相対的であります。 何かを将来達成したいという希望はわくわくした気持ちが沸いてきます。これは良いことかもしれ ませんが、その為の練習と思えば苦しくもある。希望は希望でおいといて、達成するかもしれない し、しないかもしれない。でも、今は目の前でセーリングを楽しんでいる。楽しいからどんどん乗り、 上達も早い。その延長線上に夢があり、その夢が達成されれば楽しくて、されなければ楽しくない なんて事は無い。どちらでも楽しいのです。楽しいの延長線上に夢があれば、きっとかなうものだ と思うのです。それも楽しく叶う。 既に日本一周して、そこに重点を置いている人は不幸ですよ。もはやその辺では楽しめない。でも、 日本一周した事を何とも思ってない人は良いですね。どこでも楽しめる。ある方は丁度そういう人で した。２７フィートで日本一周して、その後、２５フィートに買い換えて、近場を実に楽しんである。日本 一周するなんて、本当はすごい事だと思うのです。がしかし、この方はたいして何とも思っていない。 だから今でも、デイセーリングで楽しめる。この人にとって、日本一周はデイセーリングの延長、積み 重ねに過ぎないのです。知らない土地に行って、その場を楽しんできた。そういう人です。何かを達成 したと思うと、次に何かを達成しなければ楽しめなくなる。何も達成しない。ただ、楽しく、楽しく、自分 が楽しいと思うこと、今できる事をすればいい。 |