第86話 一点にこだわる

何か一点にこだわるというのはういかがでしょうか。個人的に購入するなら、やはり美しさ
ですね。美しいというのはオールマイティーだと思うのです。一部を異常に強調したような
ヨットは、例えばキャビンを大きくする為にフリーボードが異常に高いとか、そういうのは美し
く無い。美しいヨットはバランスがとれているし、奇抜でも無く、オーソドックスなのですが、
上品で、存在感がある。

美しいと感じる観点は人によって異なります。それで良い。自分が美しいと思ったヨットが
あったら、今度はそれについてもっと詳しく調べてみます。船形はどうか、クルージング向きか
レース向きか、セール面積はどうか、復元性はどうか、シングルで乗れるか、等々を考えます。
どうせ自分のコンセプトがまだ良く解らないなら、そのヨットのコンセプト、自分の気に入ったヨット
のコンセプトに合わせてみてはいかがでしょうか。

人間の想像上のコンセプトなんてあてにはなりません。それなら気に入ったヨットを、どやって乗る
か、このヨットのコンセプトを充分に引き出してやるという、自分の方からヨットに近づくという手も
あると思うのです。自分のコンセプトが明確なら良い、でもわからないなら、ヨットに自分が近づいて
行く。こういう方法もありだと思うのです。

シングルハンドにこだわって見るのも良い。一人で全て操船するにはどんなヨットが良いのか、という
観点からヨットを見る。これについては過去にさんざん書いてきました。どんな場合でもシングルハンド
は究極な乗り方です。

外洋にこだわる。暇がたくさんある人で、毎日しょっちゅうは乗らないけれども、出せば数週間から場合
によっては数ヶ月は帰らない。しかも、沿岸沿いでは無く、本当に外洋に行く。こういう乗り方もあります
こういう方は外洋という一点に集中してみる。やはり、ロングキールなどは楽でしょね、それにカッター
リグなんかにするといい。

性能にこだわる。居住性にこだわる。クラシックにこだわる。何でも良いのですが、ここぞという一点に
集中してこだわる手もあるでしょう。でも、全てはバランスですから、何かに秀でれば何かがへこむ。

個人的には美しさとシングルハンド、そして帆走性能にこだわります。三つもこだわるのは矛盾する
ようですが、これらは三つともお互いに反発する要素では無いから良いのです。その代わり、居住性
は犠牲にします。狭くても良い。居住性を良くする為に美しさを犠牲にしたくは無いのです。ヨットを別荘
とは思わないし、シンプルで狭くても1日か2日ぐらいなら何とも無い。帆走性能というのはただ速いという
だけでは無い。のぼり角度が良いとかいうのも大切です。狭い水域を何度も何度もタックして行くより数回
のタッキングでスムースに上れる。気持ちが良いものです。こういうときにすぐにエンジンをかけたくは無い。

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