第二十六話 本当に楽しむという事

我々は変化を求めていると書いた事がありますが、よく考えてみますと、変化であるには違いないのですが、変化というより刺激ではないかと思います。刺激が無いと退屈だな〜と感じてしまいます。

近くに映画館があるものですから、たまにですが映画を見に行く事がありますが、例えば、最近のCGなんかですと、すごいな〜と思います。大地震が起きたり、洪水になったり、その場面がCGによってリアルに作ってあります。驚きで、非常に面白く感じます。ところが、次の映画にはもっとを期待します。アクション映画なんかもそうです。アクションがどんどんエスカレートしていきます。そうしないと、我々には刺激が不足するからです。そして、だんだんと面白味を感じなくなります。

刺激を求めますから、それにも限界があって、なかなか刺激的な事はそうはありません。退屈感が漂うようになります。セーリングも同じで、刺激を求めますと、風があまり吹かない時は退屈でしょうがない。刺激を求める事は、自分の面白さをどんどん追いやって、挙句の果ては飽きてきます。

でも、刺激こそが本当に面白さの源泉でしょうか?もう一度良く考えてみますと、刺激の他に、変化を見るという事があります。今の瞬間と、次の瞬間の違い。これが大きな違いになりますと、それは刺激的ですが、そうは無いわけで、我々が継続的に何かを楽しもうとするなら、その過激な刺激だけでは無く、変化をいかに感知する事ができるかに注目した方が良いのではなかと思います。

そして、そこにはやはり集中力が必要になってきます。集中が深くなれば、それだけ細かい変化に気がつくようになります。だれも気付かないようなわずかな変化さえも、気付く事ができるのなら、そこに集中しているのなら、それはきっと何か面白さのような感じが湧いてきます。

ヨットに慣れてしまうと、退屈感が出るかもしれません。でも、逆に集中力を高められると、感覚的なセーリングがもっと出てきて、今まで気付かなかったことにも気付ける。変化に気付ける。それが面白さになっていくと思います。

知らぬ間に、刺激を求めてきました。しかし、これからは、変化に着目したいと思います。小さな変化、大きな変化、あらゆる変化をどれだけ感じ取れるようになれるか?大きな変化は刺激となって、誰もが気付く事ができるのですが、小さな変化になりますと、そうはいきません。

日常に退屈感を覚える。刺激が無いからです。変化はあります。常に、どこにでも変化はある。そこに気付かないのは鈍感になっているからです。刺激を求めても、限界がある。そこで、面白さを感じる秘訣は、前話に書いた集中力をもって、どれだけの変化を味わえるか?そこにあるのではないでしょうか?

セーリングを楽しむには、鋭敏な感覚を得た方が良いと思います。一方、クルージングはと言いますと、長い時間ですから、集中なんてできません。心はセーリングでは無く、他にある。むしろ鈍感の方が良い。そうでないと長い時間持ちません。やっぱり、セーリングとクルージングでは、求められる質が違うんだろうと思います。ヨットもそうです。セーリングには敏感が良いし、クルージングにはある程度鈍感の方が良い。鈍感と言いますと何か劣るようなニュアンスがありますが、決してそういう意味では無く、対応の仕方が違うだけです。クルージングに行くなら、ある程度は鈍感になる必要がある。そういう使い分けをした方が良いと思います。

それで、今日の結論としては、本当に楽しむという事は、刺激だけを求めるのでは無く、できるだけ多くの変化に気付く事だと思います。少なくとも、セーリングを楽しむ時は、集中力を発揮して、あらゆる変化も見逃さないつもりであたる。速いだけが面白さでは無く、うまいだけが面白さでは無く、あらゆる場面において、変化を感じ取れるなら、いつも面白いになります。ただ、超微風で集中するのは難しい、変化も非常に小さいですから、難しいですね。まあ、そういう変化を感じてみようと意識する事で充分ではないでしょうか?

それで、ちょっとでも、今までとは違う変化を感じ取れたなら、きっと面白さになると思います。面白さというのは、人によって異なるわけですが、それがどんな種類の刺激であるにせよ、刺激を求めれば求める程に、我々は鈍感になっていきます。やがては過激を求め、終いには、危険を求めるか、退屈感に留まるかかもしれません。それが知らぬ間にそうなっていく。ですから、どれだけ鋭敏になれるか、どれだけ鋭敏になって、どれだけ変化を感じとれるようになれるか、そういうところにかかっているような気がします。

従って、集中力が必要になります。それを意識していないと、いつの間にか、退屈感が支配してしまうかもしれません。セーリングとは、変化を感じ楽しむ事ではないでしょうか?刺激は大きな変化です。という事は、より大きな刺激を求めていくか、或いは、より小さな刺激でも楽しめるようになれるか?より鈍感になるか、より鋭敏になれるか?どっちかしか無いのかもしれません。

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