第五十九話 意図

全ては意図する事から始まります。今度の日曜にヨットを出そう。仲間を誘おう。そういう意図を持つ事によって、物事が動き出す。必要な準備をして、備えるわけですが、必ずしも思う通りに物事が運ぶとは限らない。天候が荒れるかもしれない。仲間の都合が急に悪くなる事もあります。でも、そんなものです。

簡単な事なら、思うようにはなり易い。でも、難しい事なら、それ相応の準備をしなければならない。周到な準備をしたとしても、それでもどうなるかは解りません。そんなもんです。どうなるか解らないので、しない方が良いかとなりますと、今度は退屈になりますから、やはり、何かをしたくなる。でも、やっぱり、うまくいくかどうかは解らない。そんなもんです。

成功したり、失敗したり、そんなもんです。それを楽しむ為には、やはりゲームと思う事にします。ゲームとして意図し、できる事は準備しつつも、どうなるかは解らない。ゲームですから、うまく行かなければ、またべつの機会にやれば良い。そのぐらいの気軽さが無いと、ゲームは遊べない。

思う通りにする為には、簡単な事しか意図しない事になります。すると、それはそれでまた物足りなくなる。ですから、もうちょっとしようと思います。すると、何か都合が悪い事が起きる。人は意図しないと退屈になり、簡単な意図なら物足りなくなり、満足させようとするとトラブルが発生する。そんな事の繰り返し。

ゲームと思う事で、うまくいくかいかないかを楽しむ。日曜に天候が良いなら、ひとつうまく行きました。仲間が全員集まれば、ふたつうまく行きました。もし、天候が悪かったら、意図を変えて、違う事をします。仲間が集まらなかったら、ひとりで出ます。臨機応変ですね。また違う機会に意図すれば良い。そんな事の繰り返しで、自分のいろんな意図を楽しむ。

そのうち、自分の意図が上手になる。準備が上手になる。確立が高くなる。加えて、臨機応変の対応も上手になる。臨機応変の最たるものは、シングルハンドかと思います。シングルハンドで楽しむ事ができるならば、天候さえ許せば、どうにでもなる。

そこで、是非、シングルハンドに楽しみを見つけて頂きたいと思います。シングルでは話相手が居ませんから、セーリングに集中するに限る。シングルでしか味わえないセーリングをしましょう。走る方向に意図を与える。上りでも、下りでも、これは自由にできる。コースを決めたら、その時のセール操作を、舵操作を意図し、自分の意図が、どんな走りを与えてくれるか?それをゲームします。それも効率良く、うまく行くかどうかは解りません。そのうまくいくかどうかも楽しみのひとつ。うまく行った感じ、うまくいかなかった感じ、何らかの感じは得られます。

うまく行った時は、その時の感じを楽しみ、うまく行かなかった時は、次の機会に何がまずかったのかを考えて、次にトライ。そういうゲームです。うまく行かない時でも、全部がうまく行かないわけではありませんし、全部がうまく行く事も無い。常に、両方がありますから、それを楽しみます。ゲームです。そこを楽しんでいかないと、ゲームを続ける事はできない。ゲームをしないと退屈になり、それはゲーム以上に面白く無いという事になります。

つまり、我々はゲームをし続けなければなりません。それが生きる事かもしれません。ならば、いかに楽しく、いかに面白くするか、そこを意図した方が良い事になります。馬鹿馬鹿しいと見える事でも、無駄と見える事でも、何でも良いので、ゲームとして意図し、行動し、楽しむ。それを上手にできるかどうか。これが最も重要で、セーリングの腕前なんかはその後ですね。意図の仕方が重要かと思います。

その気になれば、楽しさはあっちこっちに見出せる。たとえ大きな楽しみでは無いにしろ、ちょっとした事でも、楽しみを見つけるようにする。セーリングができない時なら、音楽を聴く。おいしいコーヒーををいれてみる。他のヨットオーナーと話をする。掃除をする。メインテナンスをする。読書をする。昼寝をする。どんどん頭を切り替えて、臨機応変にゲームの意図を変えていく。そういう臨機応変の意図が、究極的にはヨットを最大限に楽しむコツではないかと思います。

ある一定の目標を意図し、それに固執しますと、うまくいかない事が多くなり、楽しむ機会は稀になる。やはり、臨機応変の意図と、ゲームとしての気軽な意識がある方が良いと思います。そういう意味では、ヨット以外の事も楽しみを見つけてはどうでしょう?

個人的には、音楽を、本も置いておく。コーヒーも好きだし、葉巻も好き。楽器をヨットに置いてる人も居ますね。ヨットは自分の書斎にもなる。快走だけを求めると、こうはいきません。遊び上手とは、臨機応変に意図し、ゲーム化できる人ではないかと思いますね。その方が楽しい。ならば、そうしましょう。遊び下手は、何かひとつに固執してしまう。

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