第八話 日本スタイル 

そもそも日本人にとって、ヨットが合うのかという疑問もあるかもしれませんが、それを言っちゃあお仕舞いです。パワーボートも含めて考えますと、釣りをする人のボートは稼働率が高い。でも、豪華なキャビンで、エアコンまで持つボートでも稼働率は低い。ヨットより手軽であり、どこにでも速く行けるボートでさえそうなんですから、根本的にキャビンを使い遊ぶという事自体が、日本スタイルではないのかもしれません。別荘だって、閑古鳥が鳴いている。

そこで、我々日本人として、自分達に合うスタイルを見出す必要がある。欧米のヨット、ボートがそのままではうまくいかない。それが何なのか?その答えのひとつがデイセーリングだと思っています。何か目的を持って、ボートの釣りのように、そういう明確な目的さえあれば、楽しむ事ができる。ヨットにしても、稼働率が高いのと、低いのとでは格差が大きい。稼働率が高いヨットを見ますと、どうもセーリング自体を楽しんでいるように思えます。シングルであるか否かは別にしても、土曜、日曜に出かけるヨットはデイセーリングを楽しんでいる。

ならば、もし、クルーが居無い人が、シングルでも容易にセーリングを楽しめるヨットがあるなら、もっとヨットを楽しめる人は増えるのではなかろうか?シングルが容易で、セーリングも面白いなら、そういうヨットが合うのでは?と考えています。それに、ヨットに乗った事の無い友人でも気軽に誘う事もできるし、子供でも、孫でも、誰でも誘う事ができる。

遠くに旅をする事ができるヨットはたくさんあります。しかし、理由はともかく、遠くへ旅をする人は少ない。むしろ、デイセーリングを楽しむ人の方が多い。クルーが居るなら、レーサークルーザーも良い。でも、居無いなら、デイセーラーヨットが良いんじゃないか?そう考えています。むしろ、デイセーラーコンセプトは日本から出てきてもおかしくないコンセプトではなかろうか?もし、日本の市場が成熟していたら、そうなっていたかもしれません。

もし、そうなら、セーリングという目的が面白いものでなければなりません。セーリングが面白いと思えば、それが目的に設定できます。そのセーリングの面白さがどこにあるのか?それを明確にしなければならないと思っています。それさえできれば、より多くの人達が、セーリングを目的にデイセーリングを楽しむようになり、土曜、日曜のマリーナも賑わうようになるのでは?

既にセーリングを楽しんでいる人達は、何が面白いのか?そこが問題です。そういう事をいろいろ書いてきたつもりではあるのですが、なかなか言葉で表現しきれません。セーリング自体が難しいとか言う事は問題では無いと思います。釣りだって極めれば難しい。初心者でも釣りはできて、プロでも釣りは楽しめる。奥が深い遊び。それはヨットでも同じ事。面白さが明確に解らなければ、しようという動機が湧いてこない。釣りは経験の無い方でも、面白さを想像できるが、セーリングはそれが難しいかもしれません。そこで頭を悩ます。面白さをどう表現したら良いのか?

セーリングの何が面白いのか?それを表現するのは難しい。まずは、今シーズン、セーリングを中心に、ちょっと気合入れてやってみようというのはどうでしょう?できるだけ頻繁に、ちょっとの時間でもセーリングをしてみる。セーリング自体を目的に出してみる。そして、そこに面白さがあるのかを探ってみてはいかがでしょう?

個人的に思う事は、セーリングに出ると簡単にそこに集中して入っていける。陸上の事はひとまず忘れて、セーリングに集中できる。そういう時間は貴重であり、リフレッシュになります。それに集中できると、セーリングを考え、操作し、反応を楽しみ、その反応がいろいろありますから、それを楽しむ。それだけと言えばそれだけなのですが、そこに面白さを感じる事ができます。上手いか下手かは関係無いし、誰でも自分のレベルのセーリングを楽しめて、尚且つ、これからもっとうまくなる過程も楽しめるし、うまくなったらなったで、そのレベルで楽しめる。セーリングは素人レベルからプロレベルまで、誰もが楽しめる。セーリングする面としては、広く無いかもしれませんが、それなら深く入っていけば、面白くなる。面を広げるのは時間も必要ですが、深くなら一日の時間としても、そう長く必要でも無い。結局、面として広げる遊びか、点として深く遊ぶか、どっちかではないかと思います。ですから、点として浅くだと面白さも浅く、飽きやすいかも。面として広げるのは時間も必要だし、なかなかそうも行かない。ですから、点として少しづつ深くしていくのが、良いのではないかと思います。目的さえ明確なら、日本人は進みやすい。日本スタイルの基本はデイセーリングにありと思うのですが。

ですから、セーリングをただ走るのでは無く、セーリング自体を目的として、深く入っていくというセーリングの質を求める乗り方というのが、日本人には合うと思うのですが。気持ちの良いセーリング、或いは、セーリングからいろんな気持ちを味わう。それなら、ヨットの大きさも大きくても、小さくても良いし、忙しい日本人にもできるし、ですから、このためにはシングルハンドができるのが最もその可能性を高めるかと思います。

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