第五十四話 ヨット遊びの原点

ピクニックこそが、誰にでもできて、簡単で、最も楽しめるヨット遊びの基本だと思います。レースとロングクルージング以外は、このピクニックを主に考えた方が良い。誰かを気軽に誘って、海に出る。それだけでも楽しいはずです。

基本的なスタイルとして、いつでも思い立ったら、誰かが乗せて〜と甘えてきたら、OKといつでも言える。そんなスタンスがあったら、ヨット遊びがもっと使えるものになるのではないでしょうか?
セーリングがどうこう、旅がどうこう、そんな事をとやかく言う前に、この気軽なピクニックを自由自在に楽しめるようにしておく事が大事で、誰もが、そうしておいた方が良いと思います。

かみさんでも、子供でも、孫でも、友人でも、どこかの店のおねえちゃんでも、部下でも上司でも、取引先の方でも、出会った誰でも、気軽に誘えるピクニックというセーリングこそが、ヨット遊びの原点ではないでしょうか?

ここには、難しいセーリング理論や操作も無い。クルージングのナビゲーションも無い。必要最低限の知識と技量で、誰もが簡単にヨット遊びができる。これが原点であります。これを無視して、その先のセーリング理論やクルージング等を考えるから、ヨット遊びが出来なくなってしまう。

全ての方々が、まずは、たっぷりとピクニックというヨット遊びを堪能した方が良い。ヨット遊びの原点である楽しさをたっぷり味わった方が良い。それらをたっぷり味わったら、それから、自分の思う方向に、もっとセーリングを深めていくか、旅に出るか、そういう方向に進んで行けば良いのではないでしょうか?すると、既にピクニックの楽しさを知っていますから、両方を遊ぶ事ができます。

マリーナに行けば、殆どがいわゆるクルージング艇です。旅用です。でも、本当はピクニックセーリングを気軽にできるヨットが一杯であるべきではないか?

アメリカ市場では、大きなヨットが目白押し。そういうでかいのが目立ちます。でも、市場のデータを見るならば、ピクニック的遊びとして、家族で遊ぶヨットが、でかいヨット以上にたくさんあります。
ハーバーヨット社のハーバー20が何故、そんなに売れるのか?彼らは気軽にヨット遊びをしています。そして、彼らもいつかは、もっと違うヨットへと移っていくでしょう。でも、ヨット遊びの楽しさを知っています。

ヨットは一部のマニアックな方々の遊びでは無く、誰もができる遊びであります。それはピクニックセーリングであります。我々日本人に必要な事は、この原点であるピクニックセーリングという遊びを、ヨット界の中心にすえるできではないか? 大袈裟かな?

みんなが、ヨット遊びの楽しさを知れば、あとは、みなさんが勝手に、その後に行きたい方向がわかります。ヨットがどんなものであり、自分が何を欲しているのかが解ります。業者がいちいち、ああでも無い、こうでも無いとか言う必要も無い。

ヨットをこれから始めます。ならば、最初はピクニックセーリングで、たっぷり遊んでください。気軽に、ヨット遊びの楽しさを味わってください。自分だけでは無く、みんなとその楽しさを分かち合ってください。これが出発点です。そうやって、たっぷり遊べば、その先どうするかは、自然と解ります。

ピクニックと言っても、ただ乗って移動では無く、セーリングを使います。そうじゃないとヨットの意味がありませんから。そのセーリングは、最も簡単な方法で、ジブとメインのシートのみでOKだと思います。ピクニックでは会話、集い、そういう楽しさがあります。でも、途切れ無く会話するわけではありません。その合間には、自然と誰もがセーリングを感じます。それで良いと思います。セーリングの話題も上がります。それで良いと思います。舵を交替します。それで良い。ゲストにちょっと手伝ってもらって、簡単な事をしてもらう。それで良いと思います。少なくとも、ゲストにとっては、コクピットにただ座って、会話のみでは飽きてきますから、セーリングを少し味わってもらる事は大切かと思います。

実はこれは良くある光景です。でも、ここで言いたいのは、これを主にして、もっとピクニックしようという事です。最も簡単にできるヨット遊びで、楽しさを味わう事。これが出来ないで、その先が楽しいと思うだろうか?疑問です。

以前にも書きましたが、ひとりでは乗りません、という人は多い。しかし、例えば、ピクニックセーリングで、友人達と家族と、たっぷり楽しんできたなら。数年後に、ひとりでは乗りませんとは言わないかもしれません。家族とのピクニックセーリングを通じて、セーリングが段々解ってくる。もし、もっとセーリングに興味が湧くとしたら、ひとりで乗りません、とかでは無く、セーリングの面白さが解ってきたら、ひとりでも乗りますに変わる可能性はあります。

つまり、ピクニックはみんなで楽しむものです。でも、セーリングに興味が湧いてきたら、ピクニックとは違う事をしたくなります。そういう時はひとりでも良いに変わる。そうなっても、やはりピクニックセーリングもみんなと一緒に楽しめます。ただ、心の中に、もうひとつのバリエーションが生まれたわけです。それはもう楽しさの枠には収まらない、面白さの世界であります。もちろん、ゲストだったひとりが、セーリングに興味を持って、一緒にセーリングしようという事もあるでしょう。そうなったら、もはやこれはピクニックでは無く、セーリングになりますね。そうなっても、やっぱり、時に応じてピクニックセーリングを楽しむ。

或いは、セーリングでは無く、どこかに旅をしたいと思うようになるかもしれません。それはそれで良いし、オーナーの好みです。でも、やっぱり、ピクニックセーリングも楽しめます。


ヨット遊びは非日常を感じさせますが、あまりにもかけ離れると、滅多にはできなくなります。非日常でありながらも、しょっちゅう気軽に楽しめる事が基本にあった方が良いと考えます。ですから、
ピクニックセーリングこそが、ヨット遊びの原点です。セーリングしても、クルージングしても、いつもピクニックに戻って楽しめる。ですから、ピクニックをいかに楽しめるかを考えた方が、これからの長い長いヨットライフを考える時、とっても有効になるのではないか、と思う次第です。

次へ       目次へ