第五十六話 市場

ヨットにおけるクルージングというジャンルが、圧倒的に多いかと思います。レースよりはクルージングですという方が圧倒的に多いのですが、このクルージングというジャンルに入った途端、人は
旅を思い、その旅に必要な装備を思います。

当然ながら、トイレが要る。ギャレーが要る。できれば冷蔵庫や温水があった方がベターでもあると思います。すると、必然的にヨットのサイズは大きくなってしまう。それで、それらの設備を有効に使いながら、旅を楽しんでいるかと言いますと、そういう方々、或いは、そういう機会は少ない。
でも、サイズが大きくなった事によって、気軽さが失われるかもしれません。

欧米市場を見ますと、大きなサイズばかりが強調されますが、20フィート前後の小さなヨットも実に多い。台数ベースでは圧倒的にこれら小さなヨットの方が多い。そして、彼等は、気軽に近所を、家族や友人とセーリングやレースに興じている。

日本でも、本当はそういう市場形態になるのが健全なのかもしれません。旅にでるだけがヨットではないし、自転車感覚で、気軽にセーリング遊びをするという気運が高まれば、ヨットはもっと日本人にとって身近なものになるのかもしれません。ただ、マリーナの保管経費の問題はありますが。

それに、これら小さなヨットを輸入するとなると、コストは同じようにかかり、割高感がどうしても出てしまいます。そこで、国内造船所に頑張ってもらいたいところではあります。もちろん、マリーナにも、小さなサイズは特別安い価格を設定してもらいたいものです。

欧米でもクルー不足は聞かれます。でも、多分、日本程では無いのではないか?小さなヨットで、若いうちからヨット遊びができるとなれば、彼らがクルーになっていく事もあるでしょうし、もちろん、大型艇への乗り換えもあるでしょう。

それに、若い夫婦が、小さな子供を連れてセーリングすると、子供は小さな時から馴染みます。
中学生や高校生になって、それからヨットに一緒に乗ろうなんていうのは、この年代になりますと、子供は親と同行したがらなくなりますね。

そういうわけで、日本市場は、これから20フィート前後のヨットを拡大できるか否か? これは、誰かがするというより、日本全体で、例えば、舟艇工業会とかで、取り組むべき事かもしれません。
小型船舶にも、小型ヨットに関する特別なルールを決めてもらう事も必要かもしれません。

まあ、これはあくまで理想論。10年先、20年先の市場がどうなっているのか?或いは、違う様相を呈していくかもしれません。

近所を自転車感覚でセーリングして遊ぶ。ひとりか、或いは、若い夫婦。21フィートあたりでも十分であります。昨年でしたかブルーウォーター21を差し上げますというオーナーがおられました。
船体は再塗装され、きれいでしたが、結局誰も貰い手が無く、結局処分。良いヨットでした。
でも、このヨットを所有しましたら、同マリーナで年間30万以上の保管費用がかかるとなりますと、話は違ってきます。それゃあ無理です。

マリーナ保管費用が原因かな〜? 近所の漁港は昔は、ほとんどただに近かった。しかし、今はそこそこ取ります。まあ、私も何もできないので、何とも言えませんが。

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