第七十一話 アットホーム?

クルージング系ヨットのコマーシャルにアットホームなキャビンと書いてありました。特に、キャビンの広いカタマランなんかですと、そういう面も強調されます。まるで家に居るように、広くて、リラックスできますよ。確かにそうでしょうね。

でも、いつも言いますように、船内でリラックスして過ごしている人達を見る事は、あまり日本ではありません。彼らは、マリーナに留めたまま、ヨットを出さないで、キャビンで寛げる。しかも、1日中、或いは、2日でも3日でも。住んでるみたいに。ならば、アットホームは活きてきますね。

そういう事をあまりしない日本人にとって、キャビンは何か?いっそのこと、アットホームじゃない方が良いんじゃないか?その方が、家とは違う雰囲気だし、非日常性を感じる事で、遊べるのではないか?そんな気がします。

ためしに、2,3日、キャビンで過ごしてみたらどうでしょう? キャビンで何をします? エアコンが効いて、テレビもビデオもあって、広くて、快適そのものです。どうやって過ごします?これなら、家族も一緒に来るだろうか?

1日ぐらいなら、何とか、今まで読めなかった本を読んだりもできます。音楽聞いたり、ビデオ見たり、友人と飲んだり。でも、2日、3日となると? それもしょっちゅうはできません。多分。少なくとも私には無理。 こういう使い方を主にはできません。

だから、アットホームは不要です。それより、シンプルで、メインテナンスがし易くて、キャビンよりコクピットが広くて、気軽に出せて、云々。キャビンはシンプルで良い。私物もできるだけ持ち込まないで、スッキリと。ロングの旅に出るならいざしらず、私物が多いと、メインテナンスもしにくくなる。

アットホームよりも、ヨットは道具です。気に入った道具で、いかに楽しむかです。その自分の楽しみを最も近づけてくれる道具はどれだろう? それさえ満たしてくれるなら、後はどうでも良いとは言わないものの、そんなには望む事も無い。ヨット選びは家を選ぶのとは違います。

何でもあった方が良いのか? そうとも言い切れない。あればメインテナンスしないといけません。
やっかいな事がひとつ増える。あった方が良いもの、無い方が良いもの。使い方によって違います。このヨットを道具として、どう使うか? それが判断の基準になるでしょう。

典型的な例がギャレーです。プロパンガスを使った2バーナーや3バーナーのガスコンロに必ずと言って良いほど、オーブンが付いてます。そして、カセットコンロを持ち込んで、この方が簡単で良いとおっしゃられる人も多い。温水シャワーもある。これらは、みんなロングの旅を想定しています。クルージングは、ロングなのでありますね。

つまり、ロングの旅か、別荘か、そういう使い方以外には、アットホーム的な要素は不要なのではないか?むしろ、家とは違う方が良いのではないか?つまり、ヨットを道具として、どういう性能を発揮できるか? その方が重要なのではなかろうか?

スピードは遅いかもしれないが、圧倒的に時化に強い。
乗り心地は悪いが、圧倒的速い。
見た目のデザインが圧倒的に美しい。
操作性が圧倒的に容易。

圧倒的何か? 他は別にしても、そういう魅力がほしい。もちろん、一点である必要はありませんが、圧倒的に美しくて、速いとか? あくまでこれらは主観です。でも、それで良いんだろうと思います。ヨットは極めて個人的なものですから。もちろん、圧倒的アットホームでも良い。それが活かせるなら。

ただ、多くの方が、いつかはロングの旅へと希望されます。でも、その時が来た時で良いんじゃないか?今は違うなら、今の目的に合うヨットが良いのではないか?それに、買い替えは珍しい事でもありませんし。今を犠牲にして、未来に備える必要はあるのか?今を楽しみ、未来も楽しんだ方が良いのではないか? それに未来も、今と同じように考えているかどうかは疑問ですし。

ロングのクルージングにしょっちゅう出かけるのは大変です。環境もなかなか許さない。ならば、大きなキャビンを持ったら、マリーナでいかに別荘的使い方を楽しむ方法を考えた方が良いと思いますね。果たして、日本のマリーナでそれができるのか? これは、日本人という性格よりも、環境的な影響があるのではないか?日本人だって、アメリカのマリーナに置いたら、やはりアメリカ人と同じように、キャビンで過ごすようになるのではないか? 解りませんが?
でも、少なくとも、日本に居る限り、日本の環境で遊ぶ事になります。その中で、最も良い方法を見つける事が肝心でありますね。

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