第七十九話 マストを抜く
マストを抜くというのは大変な事でしょうか? 確かに、ひとりでやるのは無理がありますが、マリーナでスタッフに手伝ってもらえばいいです。船底塗装をする時に、一緒にやってしまう。アルミマストでも、たまには点検の意味で、マストを抜くというのも必要ではないかと思います。何年も立てっぱなしというのはどうでしょうか? マリーナには艇上架の為のクレーンがありますし、大抵は、それにジブクレーンという小さなクレーンが付いてますので、それで、大型艇で無ければ、マストを吊りあげる事ができます。 通常、我々は、ハリヤードを使います。クレーンのワイヤーの先のヘッドが、マストよりも少し上ぐらいに来るような長さでハリヤードの下側を、アイとかクリートとかに縛って固定します。 それで、ステイ類のターンバックルを緩めて、フォアステーもバックステーも緩めて、はずし、クレーンで吊りあげて、おろす。それだけです。立てる時は、その逆で、吊り上げて、マストを定位置におき、その状態で、吊ったままの状態で、ターンバックルを締める。フォアステーとバックステーと、両サイドのアッパーさえしめておけば、クレーンは外せます。外す時は、ハリヤードを緩めていけば クレーンの重さで、下に降りてきますので、上に上る必要はありません。 ヨーロッパのマリーナにマスト抜き用のポストがあって、オーナーが自分でマストを抜いてメインテナンスができるような設備がありました。彼らは、気軽にそういう事をやります。まあ、慣れでしょうね。 大型艇はそう簡単にとはいかないかもしれませんが、でも基本は同じです。ただ、マストも高いので、クレーンを外から持ってこないといけませんが。でも、船底塗装をする時に、マリーナに一緒に頼めば良いわけです。但し、やり方はマリーナで違うかもしれませんが。船底塗装のように毎年という必要は無いかもしれませんが、数年に1回ぐらいはマスト倒して、上部を点検してみるというのは良い事でしょう。数年に1回、マストを含めたトータルなメインテナンスを自分でやるのも悪くないと思います。上がどうなっているのか、見る機会は滅多にありませんし。 それで、数年に1回は、船内も船外もクリーニングして、不要な私物は撤去して、スッキリしては? と思いますね。クリーニングするだけでも、かなりきれいになります。ついでに、ハリヤード、シート類も古くなったもの、硬くなった物等を交換したり。全部自分でできます。自分でやるから、どこがどうなっているかが解ります。それが大事な事かと思います。 先日ですが、電話があって、ちょっとしたトラブル。ではジェノアを降ろしてくださいと申し上げたのですが、ファーリング式で上げっぱなしのセールですから、降ろし方が解らないとの事。これでは、 いざという時に困ります。 ヨットライフは、セーリングやクルージングするだけでは無く、自分のヨットがどうなっているかを知る事も含まれると思います。知れば知るほどに安心できます。保険みたいなものです。それで、長い、長いヨットライフを、より快適にする事ができます。車と違って、ガソリンスタンドがあるわけでも無く、海に出れば自己責任ですから、自分にかかってきます。知れば安心です。 知らないと、業者に聞く時でも困ります。具体的なやりとりができないからです。自己責任と言えば、こんな事がありました。艇の修理を頼まれ、ついでに全体を点検しといて、との事で、各機器が動作するかどうかを点検しました。必要な箇所は修理です。それから2か月後、オーナーはロングクルージングに行かれた。その時、航海灯のひとつが点灯しなかったとのお叱りです。 言い訳に聞こえるかもしれませんが、電気はつくかつかないか。点灯していれば、それ以上の事はしない。テスターであたっても、正常なわけです。でも、いつどうなるかは解りません。オーナーも別に配線まで全部変えるつもりもないわけです。でも、どこで接触不良や電球が切れるか解らない。つまり、これからロングに出るなら、少なくとも、その前に航海灯は点灯するかどうかをチェックすべきでは無かったかと思います。念の為なら、予備電球を持って出るべきと考えます。どうなるか解らない、何かあったら、自分にかかってくる。海はそういうものかと思います。 つまり、知る事はとっても重要な事です。知れば、何をすべきかが解ってきます。 操船技術は重要な事ですが、自分の艇を管理するという事もヨットライフとしてはついてまわります。自分で管理できるサイズなら、自分でする。大きなヨットでできないなら、お金を払って業者に頼む。このどっちかです。それでも、動作確認は必要になります。つまり、何も知らないで出るという事は、万一の時のリスクが高いという事になります。例え、業者を信頼していても、やっぱり自分で確認する必要があります。いつ何があるかは解りませんし。自分の為です。ヨットライフは自己責任、海に出ますとそれが否応なしです。 そして、ヨットの場合、多くの部分が、見れば解る事ばかりです。難しいコンピューター制御のような物を理解するのは無理ですが、幸いヨットは単純です。ですから、シート、ハリヤード、配管、等々がどこをどう通って、どうなっているかを知る事は重要かと思います。電気にしても、理解は難しいでしょうが、バッテリーがあって、そこからスイッチパネルに来て、そして各部へつながっています。 動作しなくなったら、その物まで電気が来ているかどうか、来ていれば物が故障。来ていなければ、パネルまでは来ているか? 電線が途中で切れている事もあります。まあ、電気は少し難しくなります。ですから、業者にお願いするとして、でも、時々動作確認は必要だと思います。 普段は使わない物でも、動くものは動かしてやる。使わないのがいけません。固着したり、激しい動きで外れたり、いろいろあります。いざという時に困らない為に。 |